第35話 10歳

酒を買い宿に戻る途中

へレスはジェニに聞く。

「ずっと一緒に、ここに住むことは

 できないの?」と。


「ははは」と笑いながらジェニは

「俺は只の旅人だからなぁ。」と言う。


「えー、やだ!」と膨れるへレス。

「いろいろと教えて欲しいのに」と。


「いやいや、へレスは凄いよ。

 母さんに色々と教わっていた?」と

ジェニはそれとなく聞く。


「うーん。料理の時とか皿を洗う時とか

 気持ちの持ちよう?みたいなことは

 よく言われた、かな。」とへレス。


「お皿とか少しの色残りとかあったら

 凄く怒られていたし。一生懸命

 汚れを探したわ」

「料理で根菜を切る時も同じ幅で

 切らないと凄く怒られた。皮むきも」


「でも弓の練習をする時に思い出すの。

 的に汚れとかないかな?とか。」

と笑うへレス。

「皮むきってどうやって弓の時に

 思い出すの?」とジェニは聞く。


「皮の向き方も色々あるの。お母さんは

 凄く包丁を使うのうまいから。

 いつも真似をしてて。今は

 お母さんと同じくらいできるのよ?」


「弓をする時に的が根菜の切ったやつに

 見えちゃって頭の中で

 剝いちゃうの。そしたら的の

 真ん中の所しかなくなるの!」


「ほかにもまず4等分したりとか」

そういいながら笑う。


その他にもフミージャに教わった事を

色々と喋るへレス。


ジェニは絶句する。

全てがスキルの練習だ・・・。

それをわかりやすく料理をする時に

教えている。しかし、それは多分

剣のスキルだ。しかし

それを弓をする時に思い出し

考えるへレスもすごい。


そして二人は宿屋に帰ると

机にはたくさんの料理が並んでいた。

「お待たせしました!」と酒を

机に置く。


そして宴会が始まる。

皆が楽しそうに飲み食いしている。

ジェニもフミージャも酒を飲む。

へレスは果実の飲み物。


そして時間がどんどん過ぎていく。

へレスは疲れていたのか座ったまま

寝ている。それを見て

「あら珍しい」と抱えて奥の部屋に

連れて行きベッドに寝かした。


戻ってきたフミージャにジェニは言う。

「すみません。俺のせいです。

 スキルを教えていたら彼女は

 極級のスキルを放ってしまいました」


全員がジェニを見て驚く。

フミージャは目を閉じて顔を上にあげる。


「俺上級使えないんだが?」と

3人組の一人は言うと

「負けてるじゃないの!」と言いながら

酒を飲んでいる冒険者。


「私達なんてやっと中級ですよ!スキル」

と二人組は泣きながら、でも笑いながら

酒を飲む。


「やっぱ才能なのかなぁ」と一人がつぶやく。


「どうなんですか?旅人さん?」と

意地悪く行ってくるフミージャ。


「スキルが閃くのは才能は関係がありません。

 覚える時期は早い遅いはありますが

 全員覚える事は出来ると思います。

 でも体力がないと使うことが出来ません」


「みなさんはまだ若いので今からでも基礎的な

 体力を付ければ上級も十分に

 使いこなすことが出来ると思います」


「あら、若いって所を強調しないで?

 もちろん、みなさんに私も入ってるわよね?」

とフミージャは言いながら酒を飲む。


「そ、そりゃあもう!」と慌てながら

酒を飲むジェニ。そして全員が笑う。


「反復です。兎に角、練習、そしてスキルを

 使う。考えて使う。」それだけです。


「どんなことをしていても練習になります。

 皿を洗っていても、野菜を切っている時でも」

そう言うとジェニはフミージャを見る。


フミージャは笑いながら目を閉じる。

冒険者全員が楽しく酒を飲んでいる。


ジェニはフミージャの横に座り

「恐るべき才能です。彼女は。俺も

 弓使いだからわかる。体力さえあれば

 数年後に彼女は俺に追いつき、

 追い抜くでしょう」と言う。


「彼女をどのように育てるんですか?」

とジェニはフミージャに聞く。


「あの子次第かな。あの子がやりたいことを

 させてやりたい。その為に少しずつでも

 お金を貯めているしね。」


「今はそう言った話は無しだ。

 みんな!ユウキさんが真面目な

 話をしているぞ!飲ませなきゃ!」

と突然フミージャは言いだすと

全員が「そりゃいかん!」と

酒を注ぎに来る。

「く、口説いていたのか!」と誰がが言う。

「さすがにそれはないですよ!」とジェニ。


「ああ!?そりゃどういった意味だ!

 こんな婆ぁと思ってるんだろう!」

と絡みまくるフミージャ!


「もう姉妹そろって酒癖悪ぃな!おい!」

とジェニは言いながら注がれた酒を飲む。


そして夜は更けていった。


翌朝、二人組の冒険者があと2泊すると

言ってくる。ここでじっくりと

下地を作りたいという。

そして銀貨2枚と銅貨5枚をを払う。

朝食をとると弁当を受け取り

そしてギルドに向かって言った。


3人組は今日は休むらしい。

3人組も2泊延長するらしい。

女将が休むのも仕事と言った事を

守っている。


「もうみんなとっとと帰らないのよね」

とフミージャは笑いながら言う。


「あれ?へレスは?」とジェニが聞くと

「朝、なんか変な体の動かし方をして

 どっかに走って行ったわよ」とフミージャ。


「そういえばへレスって歳はいくつ?」と

ジェニが聞くと

「10歳よ」と皿を片付けながら言う。


「ぶっ」と吹き出すジェニ。

「なにそれ」とわらうフミージャ。


「い、いえ、なんでもありません」と

ジェニエーベル。


俺は小学5年生に驚愕したのか。

中学生かと思ったよ!


















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