第34話 朱色の閃光


「皆はどんどんスキルを

 使って行ってくださいね」と

全員に言う。


ジェニはへレスに回復薬を飲ませる。

「あ、なんか元気になった」と笑うへレス。


「いいかい?今からこの間使った上級を

 使ってほしい。俺が見ているから

 思いっきり放て。倒れても大丈夫だ」と。


へレスは的に向かい目を閉じる。

「あの時は確か、アレとアレを考え、

 そうそう、母さんの言った事を考えて。

あれ?あの事考えたっけ。まいいや。」

そうブツブツと呟き、口を閉じる。


結構長めの溜が入る。

へレスは目を開け矢を放つ!


その矢は朱色の閃光となり的に向かう。

その後につむじ風が的に向かい舞う。


的に風の刃が不規則に当たっていく。

「いかん!」と言うと

ジェニはへレスを見るとぶっ倒れようと

している。それを抱きかかえ

回復薬を飲ます。


道場に居た全ての者がへレスに集まる。

もう1本回復薬を強引に飲ますジェニ。


「う・・・うーん。」とへレス。

眼を開けると

「どうでした?この間の事をゆっくりと

 考えて、落ち着いてゆっくりと撃ったの」

そういうと笑う。

「す、すごいよ。」とジェニ。

「今はゆっくりと休んでいてください」とも言う。


「皆さんは練習を続けていてください。」と

ジェニは言うが心配する。

「スキルが危険なモノと思われるかもしれない」と。

しかし、その不安は無駄に終わった。


「俺達も練習してへレスに続くぞ!」

「そうだ!へレスが出来たんだ!俺達だって」

「俺もへレスのようにずっと練習してやる!」

その他にもやる気満々の声が聞こえてくる。


「でも体力に気を付けてください。

 ぶっ倒れちゃいますから」とジェニ。


「はい!」と全員が返事をする。


族長はジェニの所へ行くと

「ユウキさん、今のは?」と聞く。

ジェニは族長に「今のは」と切り出し



威力的には極級スキルです。

似ているのはありますが閃光の色が

違いました。

矢が壁を貫通している事から

貫通、そして多分防御無視。

そしてど真ん中に当たっていますので

命中率向上は無論。

そして一番の違いは・・・。

最後につむじ風が現れましたよね?

普通は軌道上から

横に衝撃波が拡散するんです。



「今見せます」そう言うと

「すまん、みんな一緒に休憩を取ってくれ」

そう言うと後ろに避難させる。


ジェニはアーチェリーを取りだす。

そして的に向かい構える。

大きな溜の後に矢を放つ。


矢は青い閃光となり的を貫く。

その後に衝撃波が真横に強く広がる。


道場全体に驚きの声が広がる。

「もしかしたらへレスのスキルは

 つむじ風と言う攻撃が付与されています。」

そういうと的を指さす。


威力は大したことはありませんが

切り刻んだような跡が付いています。


私のは、ほら。と壁を指さす。

道場横の壁が凹んでいた。

私のは攻撃ではないです。


「ユウキさんのスキルより

 威力が高いと?」と族長。


「いえ、今の段階では言えませんが

 閃光の太さを考えると、私の方が

 威力自体は高いと思います。しかし」

そう言うとジェニは続ける。


回復薬2本で目が覚めました。

2本目の半分くらいで。


へレスは初級を30発、中級を10発

撃てる体力です。余っている体力を

考えると彼女の体力は上級1発で

ぶっ飛ぶくらいです。この間と一緒です。


しかし、今回は明らかに極級です。

それを回復薬1本と半分で意識が戻った。

明らかに消費が少ないです。


(もしかしたら俺の知らない、母さんも

 知らないスキルツリーがあるのかもしれない)


「師範!あれ見てください!俺が放った矢!」

青年が驚きながら声をかける。

その的を見ると

矢全体が羽根の所まで的に入っていた。

「お、これは貫通かもしれません。

 おめでとう!中級です」と拍手をする。


青年は涙する。

「やっててよかった!俺は毎日練習していて

 よかった」と何度も言う。


全員がそれを見て黙々と練習をしだす。


へレスは起き上がり練習をしようとするが

ジェニエーベルは止める。

「へレスは別の練習をしよう」と。


「兎に角体力を付けなさい。

 へレスはまだまだ伸びる。しかし

 それは体力があってだ。」


「一発撃っただけでぶっ倒れるのは

 ダメだ。」ともいう。


極級かもしれないという事は

言わないでおこうと思った

ジェニエーベル。

族長にも固く口留めをした。

道場の者達には上級と伝えた。


へレスには持久力と足腰の強さを

あげる運動を教える。



練習が終わり宿屋に帰る。


二人組の冒険者が楽しそうにしている。

「今日だけでクラスが4から3に上がる

 とは思いませんでした」と。


「だからと言って無理したらダメよ?」

とフミージャ。


冒険者は言う。

今まで無理して討伐や人数の多いのに

入っていきましたが、失敗とか多くて

収入のない日もありました。


でも身の丈に合うモノを数繰り返した

だけなんです!今日は!

今日の収入も銀貨3枚になりました!

二人なので十分です!


そうこうしていると3人組も帰ってくる。

「女将さん!この間クラス4になった

 ばかりなのに今日、もう3になった!」

「どうしよう!」と喜びながら3人。


「今日はめでたいですね!」とジェニ。


「女将さん、この銀貨1枚を使って

 ここに居る全員に料理と飲み物を

 準備してくれ」と二人組。


「これは無駄使いではないです。

 お金を嬉しい事に使いたいんです。」

と真剣な目で言ってくる。


「お?あんた達もクラスが上がったのか!」

と3人組。

「まだBなんですが。お恥ずかしい」と

二人は照れ笑いをする。


「全員が通る道だよ。俺達もそうだった。」

「そうそう、あの時はまじでお金なくて」

「あの時に飛び込んだのが

 この宿じゃなかったら死んでるよ」と

3人組は言う。


「じゃあ腕を振るうか!」とフミージャ。

「じゃあ俺も作ります」とジェニは言う。


「あ、ユウキは先に酒を買って来ておくれ」

とフミージャは言うと

「私も行く!」とへレス。


「二人で行っておいで」とフミージャ。





















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