第31話 運動

朝、道場にジェニエーベルが行くと

全員が整列をしている。

「お願いします!」と大きな声がする。


全員に弓を撃たせる。

「みんなうまいじゃないですか」と驚く

ジェニエーベル。


ジェニエーベルは族長に目配せをし

族長は太鼓を適当にうるさく叩きはじめる。


「はい、撃ってください」とジェニ。


全員の制度が悪くなりほぼ的に

当たらなくなってしまう。

「うるさくて集中できない!」と。


その中でへレスは的に当てていく。

ジェニはへレスを見ると矢を放つ

瞬間にスキルが発動している事に気づく。


「へレスはそれをどこで覚えたの?」と

ジェニは言うと全員がざわめく。


「母さんに教えてもらったの。

 料理の時に。それを弓の練習する時に

 同じようにしていたらこんな感じに。

 これってスキル?」と聞き返す。


「そうですよ、それスキルです。

 命中精度が上がる奴ですよ。」と拍手する。


「全員も出来るようになるので

 私の言うとおりにやってみましょう。

 弓の基本スキルです。」と言う。


ジェニエーベルはスキルを発動させる

条件を言い、それを反復させる。


一時して、スキルが発動する者が現れる。


「いままで真剣に取り組んだ成果ですね。

 こんなに早くスキルが現れるのは」と

ジェニエーベルは皆に言う。


「どんどん使って行ってください。

 疲れたら休むように。休むのも

 練習です。」とジェニは言う。


ジェニはへレスの所に行き

「ほかに何か教わった事は?」と聞く。


教わっていないと言いながら

やらされていた事をいうへレス。


「めっちゃスパルタで教えてるんだな。

 フミージャさん」と顔に手をやる。


中身を聞いたジェニはへレスへ

色々と教える。


集中を中心とし派生するスキルと

力を中心とし派生するスキル。


「あ、最初は集中を中心とした

 モノだけでいいよ」とジェニは言うが。


へレスはジェニが教えたことを

纏めてやってしまう。

最初の1発目でスキルが発動し

放たれた矢が的を貫通してしまう。


全員が衝撃を受ける。もちろん

族長もジェニエーベルも!


へレスを見るとぶっ倒れようとしていた。

あわててジェニは支え、抱え上げると

「すまん!最初からできるとは

 思っていなかった!」とジェニ。


「す、すごかった?」とへレスは

笑いながら気を失った。


族長にジェニは説明する。

「今のは上級スキルです。彼女の

 体力では危険でした。すみません」

とジェニは謝るが


族長と全員も驚きヘレンを見る。

「上級スキルをヘレンが!?」と

騒めく。


「みんなもできる様になりますよ」

というと説明する。


でもそれには

基礎的なモノが必要です。

体力もそうです。

スキルを出して倒れたんじゃ

意味ないですからね。


この中には冒険者になりたいと思う

人がいると思います。

冒険者に必要なのはスキルもですが

体力です。必ず帰ってこれるように。


足の筋力をつけるのはとても大事です。

矢を放つ時の安定も増します。


「師範はどんなことをしていたんですか?」

と誰かが聞く。

「し、師範?俺の事?」と聞くと

全員が頷く。


結構走り込んでいたなぁ。

まぁ学校で体育もあったしな。


「たいいく?とは?」と族長


時間を決めて体を使って運動をする事です。

運動と言うのは体を健康な状態に維持したり

筋力をつけたりすることです。

持久力もそうです。


「じゃあそれをやってみましょう」と

ジェニは言うと全員に弓を置き

外に出る様に言う。


ジェニは全員を並ばせて柔軟体操を始める。

子供からは笑いが起きるが青年たちは

ジェニの真似をする。それを見て

子供たちは笑うのを止め真似をする。


それが終わるとジェニは

「ここから族長の家までどれくらい

 あります?距離。後、場所は

 全員知ってますかね」と聞く。


「歩いて30分くらいかな。

 全員知ってます。私の家。」と言う族長。


「じゃあ先に、

 馬でも使って先に行っててください。

 道場の人を走らせて行かせますので

 来た人にこの棒を渡してくだい。」

とジェニは言うとバーベキュー用の串を渡す。

族長は馬に乗り走っていった。


「じゃあみんな族長の家に

 走っていってください。

 無理はしないように。きつかったら

 歩いていいです。」と言う。


全員が衝撃を覚えるが、ジェニは

手を「パン」と叩き

「はい、行って来てください」と合図した。


全員は族長の家に向かい走り始める。

「無理はしないでねぇ」とジェニ。


その間にへレスの体調が心配で

道場に入るとへレスは目を開けていた。


「なんか体の力がぶぁぁと抜けちゃった」

とへレス。それを聞きジェニは


「ごめんね、まとめて言っちゃったから

 全部やっちゃったんだね」と。

「あれってスキル?」とへレスは聞くと


「上級スキルです。まさか出来るとは

 思わなくて。それを覚えるための

 流れを言ったつもりだったのですが」

とジェニはへレスのおでこに手を当てる。


へレスは顔を真っ赤にする。

「ん?まだ少し熱があるかな」と

ジェニは心配する。


「だだだだだいじょうぶです」と

手を払い起きあがろうとするがふら付く。


「まだ寝てないと」とジェニ。


「あれって上級スキルなんですか!

 わたしできちゃったの!?」とへレスは

いうと的を見る。

「すごい!」と自分に言う。


「でもまだはやいかな、体力から

 先につけよう。」とジェニは言う。


この時は誰も知らない。

へレスが10年後に大陸で知らない者は

いないほどの弓使いとなる事を。


コロシアムでは、

へレスしか使う事が

出来ないスキル「明鏡止水」を

使いジェニエーベルを破り

第10代 弓部門優勝者 となる事を。


そうこうしているうちに

ちらほらと帰って来る者が現れる。


そして全員が帰ってくると

「明日から最初に柔軟体操と走り込みを

 してもらいます。渡した串はすてないで

 持っててくださいね。」とジェニ。


「うぉ、もうこんな時間。じゃあ

 明日もよろしくお願いします」とジェニ。


全員が言う「ありがとうございました」と。

そして道場を出る時に一礼をして出るジェニ。


一緒に出た族長に話す。

「みんなすごいですよ。今まで真剣に

 練習してたのでこれなら1週間で中級

 を使える人も出ると思います」と。


「そう言っていただけると嬉しいです」と

族長は何故か涙ぐむ。





























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