第28話 へレス

「それは少し小さいのでは?準備しますよ?」と

族長は言うがジェニは「これでいいです」と

笑いながら言う。そして、線の所で構える。


矢を放つと的の中央に当たる。即座に次を

放つ。その矢は最初の矢の矢筈やはずに当たり

最初の矢が二つに裂ける。それが連続で

当たっては裂け、当たっては裂ける。


道場が静まり返る。

「少しスキルを使いましたけどね」とジェニは

言いながら振り返ると



全員が石のように固まっていた。


「すっげえええ!」と一人が

声をあげると、全員が我に返り

歓声を上げる!


族長は信じられないという目で

ジェニエーベルを見る。


特に小さな子はジェニの周りに集まり

ヤンヤヤンヤとしている。


「スキルについて教えてください!」

といきなり声をかける女の子。


「え?スキルについて教えてないの?」

と族長を見ながら言うジェニ。

「教える者がいないんです。いたとしても

 法外な金銭を要求するんです」と

族長は悔しがり肩を落とす。


「レア職のスキルを教える事は凄く

 お金になるんです。弓だけでは

 ありません。他に棍なども。」


「だからここの子供たちとか、他に

 お金を持っていないモノは才能はあっても

 埋もれてしまうんです」と族長。


それを聞きジェニエーベルは

「1週間ほどであれば私が教えましょうか?」

と族長に言う。族長は涙を流し喜ぶ。


「あれ?族長も弓使いですよね?」と

ジェニエーベルは聞くと。

「私は弓使いではありますが実際は

 物心ついた時から国務に追われ

 対抗戦の人数集めの時しか弓を持ちません」

と族長。そして・・・。


カルーア族の族長は世襲です。

いいのか悪いのかはわかりませんが

この街全体がそれを望んでいるのです。


この街は他の赤の国の街と違い

武闘派集団はほぼいません。


どちらかと言うと街の運営は青や黄に近いです。


「奪い取ろうとする他の族長とか

 いませんでした?」とジェニは聞く。


「居ましたよ、20年ほど前に。

 偶然この街に居た女性の方々に力添えを

 してもらい撃退しました。」


「それ、ウォッカさんですよね?」と

ジェニは即答してしまった。

「はい。縁と言うモノでしょうか。

 ウォッカ様はその後、ここに保育施設を

 作る事になって今に至ります」


「多分、ユウキさんは相当なお方だと

 お見受けするのでお話ししますが、

 この街はアスティ様のトロッケン族に

 力添えを貰っています。まぁ所謂

 舎弟みたいなもんですよ」と族長は笑う。


でもそのおかげで他の族は手出ししてきません。

ウォッカ様も居るしトロッケンの舎弟ですし。


「それほどにアスティ様は凄いんですね」

とジェニは言うと

「違います。ウォッカ様が凄いんです。」


ウォッカ様は赤の国の裏の社会、

犯罪組織など壊滅させましたからね。

もう裏の社会では新入りに

ウォッカ様の存在を

一番先に教えるみたいですよ?


組織に入る時点で

犯罪組織のボスの名前より先に教える。


「ぶっ」ジェニは吹き出してしまう。

「もうそれラスボスじゃないですか」と

言っちゃう。


余談ですが。

ウォッカ様を訪ねてきて、すぐに

会えたのは数えるほどしかいません。


あ、でも子供達と子供達にかかわる

事であれば別ですよ。

何をしていても寝ていても会ってくれます。


「ウォッカ様大好き!」と女の子は

言う。子供たちは全員が頷く。


「ありがとう。矢は後で買ってあげるから」

と笑いながら女の子に弓と矢を返すと。


「明日から少しの間だけど・・・

 俺でよかったら、俺が教えられる事は

 教えます。」と全員に向かってジェニは言う。


「よろしくお願いします!」と全員はジェニに

 拝礼する。

ジェニはテレながら

「楽しく行きましょう。ワイワイと楽しくね」

と言うと族長は

「そうはいきませんよ!」と言うが


「いいじゃないですか。弓って楽しいんですから。

 だったら学ぶときも楽しくしましょう」と

ジェニは言う。

「ユウキさんは本当にすごい人だ」と

感動を覚える族長。


練習の時間は決まってるんですか?と

ジェニは聞くと、

どうやら今日は偶然的に全員が集まっていたらしく

いつもはバラバラな時間だと族長は言う。


仕事をしていたり親の手伝いをする子が

多く、空いた時間で練習をしている、とも。


族長権限で集める事は可能との事だったので

明日の10時に全員が道場に集まる事となった。


「あ、じゃあこれをその間の仕事の

 保障として使ってください。」と

ジェニは銀貨のみが入った袋を渡す。


「え!?受け取れないですよ!」と

族長は言うが

「俺が強引に全員を集めるんだ。

 俺の都合でです。それにあんな目を

 して教えて欲しいと言われたら

 断れないですよ」と。


「学ぶことに対して何も心配しないで

 取り組んでほしいんです。仕事の事が

 気になったりしないように」と。


族長はありがたく受け取り道場に来る者の

家庭にキチンと配ることを約束した。


「今日は泊る所決まってるんですか?」と

族長は聞くと

「いや、ここに滞在するって

 さっき決めたので・・・。」とジェニ。


「じゃあ、手配させてください。

 高級な所はありませんが立派な所は

 沢山あります」と族長は言う。


そして二人はに歩いて行く。


一方、道場では


「へレス、何赤くなってるんだよ」と

ジェニに弓を貸した女の子を揶揄う男の子。

「かっこいいんだから仕方ないじゃない!」

とその男の子を蹴飛ばすへレス。


「ふん、でもお前は仕事で

 練習に来れないかもな!」と言われる。


へレスは少し涙ぐみ下を向く。







 
















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