第26話 化身
「人間とは違う存在。それが私が
魔族になり感じた事だ」とウォッカ。
まず、歳を「ほぼ」取らない。
そうだな、5年が1年くらいか。
見た目も体力的にも、だ。
その体力だが体の造りが変えられているのか
人間では骨折しそうなことでも
まったくそう言った事はない。そして
異常なまでの回復力。
そう言うとウォッカは小刀で自身の
二の腕を強く深く斬りつける。
辺りに血が飛び散る。
ジェニエーベルは驚き、回復薬を
取り出そうとするがウォッカは制止する。
そうこうしている間に既に血は
でなくなっている。
「もうすぐすると傷も塞がる」
それを聞きジェニは聞く。
「死ねないという事ですか?」と。
わからん。突然に訪れるかもしれないし
一生、訪れないかもしれない。
エンドと言う神に直接作られた存在。
眷属は主を守るために生存する。
ならばエンドが死ぬまで生きていると
考えるのが普通だ。
エンドが死ねと言ったら死ぬかもな。
そういうと笑うウォッカ。
「今まで無理難題を言ってきた事って
ありますか?エンド。」とジェニ。
ないな。たまに呼び出しはあったが
普通に世間話だな。なんか、
「暇だから遊びに来いよ」みたいな感じだ。
忙しいから今は無理と言っても強要は
してこないな。その時は少し、エンドは
泣きそうな声だったが。
あ、そうだ。エンドが危険な時はすぐに
解るらしいぞ?本人が言っていた。
あと、逆もわかるらしい。
私が危険な時はわかるらしいぞ?
「じゃあ、サンテミリオンが、私の母が
亡くなった時は・・・。」と
ジェニエーベルは思案する。
あの時、実はエンドがサンテミリオンを
強引に呼び込もうと、自身の城に強引に
呼び込もうとしたが
サンテミリオンの「意思」と言う魔力に
阻まれたそうだ。
幾度もエンドは呼びかけたそうだ。
しかしサンテミリオンは頑なに聞かなかった。
「息子がいるから」と。
そうこうしているうちにミネルヴァが
現れて塔からは脱出できた。
そして最後、ルナティアの攻撃が放たれた時
エンドは意思を打ち破り転移魔法を
サンテミリオンに投げたが・・・。
アイツはそれを、その魔法を神式魔法で
上書きし、反転させた。そして自身の
魔法の効果を乗せ城の者達を転移させた。
エンドの魔法力は、エアストの魔法力と同等だ。
それを自身の体で反転させるのだ。
だから、アイツは・・・灰となった。
エンドは悔やんだよ。神なのに悔やんだ。
「俺は助けられなかった」と。
俺が殺してしまった、と。
「魔族を殺せるのは神のみ。という事ですね。」
とジェニエーベルは言うと、
どうだろうな、もし私がエアストに
殺されかけたらエンドは介入するだろうな。
そしてジヴァニアが殺されかけるとエアストが。
「じゃあウォッカさんとジヴァニアが
真剣に戦ったら・・・」とジェニ。
眷属同士の殺し合いは代理の争いと言う
事にになってしまうな。
まぁ模擬戦くらいであれば問題なかろう。
「勇者と魔族かぁ」とジェニ。
その呼び方は人間が勝手につけた名前だ。
多分、正しくは
「エアストの化身」
「エンドの化身」となるのだろうな。
「化身」といえば「竜の化身」というのも
いるぞ?
とウォッカは笑う。
「え!?なんですかそれ」とジェニ。
昔々の勇者は何故か
ドラゴンを目の敵にしていてな、
それを嫌がったドラゴンが化身を作り
そいつに相手させようと作ろうとしたモノだ。
何もしないでもすぐに襲って来てたと
ドラゴンは言ってたぞ。
ドラゴンを見たら勇者の血が
騒ぐんじゃないか?
「うわ、ジヴァニアやりそう。」と
顔に手をやるジェニエーベル。
ドラゴンはこの大陸と同じくらいに
作られた存在だ。倒しても復活する。
同一個体として。
そりゃ、面倒だろうな、相手するの。この間、
風竜の所に素材貰おうとして行った時にな、
ジヴァニアが勇者になったと言ったら
「うわ、面倒くさいな!
誰か勇者の相手する奴を教えてくれ」と
言われたよ。
「そんな奴いるんですかね。ジヴァニアが
戦いを仕掛けてくる、それを毎回
相手するって、何の罰ゲームですか!
よっぽど頭のねじが飛んだ奴でないと
ならないんじゃないですか?
竜の化身とか。」とジェニ。
おい、とりあえずジヴァニアは私の娘だぞ?
と上目づかいで超強力な視線を放つウォッカ。
「す、すみません。つい」とジェニは言うと。
「ソミュールとかは?」とも言う。
ふむ、残念だがアイツはエルピスと懇意に
している。エルピスは本質的に、ドラゴンと
友好的だ。エルピスの気に入った者を
化身にはしないだろうな。
「あ!一人いた!喜んでなりそうな奴!」
とジェニ。ウォッカも気づく。
ジェニエーベル、絶対に竜の化身の事は
言うなよ?絶対だ。
もしアイツが竜の化身になって見ろ。
アイツとジヴァニアはバカだから
永遠戦うぞ。
この時すでにテージョが竜の化身に
なっている事は二人は知らなかった!
魔族と勇者は存在を感じれるが
ドラゴンは対象外だったのだ!
「あれだ、エアストが居た時の
ルナティア様とウォッカさんの
ような感じだ。それを笑いながら
やるという・・・」とジェニは言う。
「そんな感じだろうなぁ・・・。」と
お茶を飲むウォッカ。
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