第25話 竜の化身⑥

1週間後 赤の国 カッツ族の街


「ほれ、食え」とバンチウは

机に料理と飲み物を出すと、


「何、落ち込んでるんだよ」と

テージョに向かって言う。

「触れないでいてくれ」と

出された料理を食べるチェスキー。


「何があったんだよ、教えろ」とバンチウ。


「たんこぶ、がなくなったのよ」とチェスキー。

「たんこぶじゃねえ!角だ!」と

机に伏せていたテージョは起き上がり言う。


事の顛末を話すと

「二人して洞窟のガスにでもやられて

 夢でも見てたんじゃないか?」とバンチウ。


「しかし、ほら。あるんだよ、勾玉」と

チェスキーは炎竜の勾玉を見せる。

「変なガスの影響でラリってる間に

 お宝を手にしただけだろう」とバンチウ。


「そうかなぁ・・・。まぁ確かに最後は

 バカラで目が覚めたからな」とチェスキー。

「洞窟のボスがいない時に魔方陣に乗っかると

 バカラに出るって言うしな。」と

茶をすするバンチウ。


「あ、そうだ。本題」そうチェスキーは言う

「3か月後にある対抗戦について聞きに来た。

 ルールが変わるって聞いたぞ?」


「ああ。アスティ様肝いりのルールだ」と

バンチウは言うと


代表戦だ。全てが。

すでに代表を公表している族もある。

聞くか?


さっきまで凹んでいたテージョが

目を輝かせながら「聞く!」と言った。


まず・・・。

アスティ様のトロッケン族はウォッカ様だ。


「鉄板じゃねえか!」とテージョは言うが

ある事に気づく。

「ってことは優勝すればウォッカさんと

 戦えるって事か」と鼻息を荒くする。


次にカティ族はリスボアらしい。

「まぁ実家あるからな。ふむ」とテージョ。


そして一番先に名前を出してきたキルビー族は

ジヴァニアだ。

「・・・そうか、出るのか。まぁウォッカ戦

 目当てだろうな。」とテージョの眼が座る。


他にマッカイ族はあいかわらずルエダだ。

「代表戦となるとキツイ相手だな。

 補助魔法無しだと最強だろう。」とチェスキー。


コアントロー族はまだ斧使いを募集しているらしい。

「あそこなんでそんなに斧が好きなんだよ」

とチェスキー。


マルフス族も魔法使い募集中だ。

「あそこも好きだねぇ、魔法使いが。」と

チェスキーは言うと

「ソミュール出ればいいのに。

 声かけてみようかな」とテージョ。

「止めろ。強敵を増やすな」とその他二人。

「そっちの方が楽しいじゃねえか!」と

何故か逆に怒りだすテージョ。


ベルノリカール族も募集中。

「どうせ剣士になるんだろうな」とテージョ。


カルーア族も募集中。

「あそこはレアな武器好きだからなぁ。

 前回は弓使いだったな。

 今回もレア武器を期待する。」

とテージョが言うと

「棍も使ってたしな、激レア職の。」と

チェスキーは言うとテージョを見て笑う。

「うるせえ」とテージョ。


後、ガンチア族、クエルボ族、シーバス族。

ベイリーヌ族、マリブ族。

この辺りはまだ何も行動していないな。

決まってるのか、どうなのかもわからん。


「うわぁ、その辺に落とし穴ありそう。」と

チェスキーは言うと

「エルセブンさん達とか?」とテージョ。


「あ、それはないと思うよ?自分で言ってたし。

 でもシャルルさんは傭兵だから出るかも

 しれないね。」とチェスキー。


「じゃ、カッツ族は誰を出すんだ?」と

戦いの話を聞いて元気になったテージョは

料理を食べながら聞く。


「いやいや!お前出てくれよ!」と

バンチウは懇願する。

「仕方ねえなぁあ!もう!」とテージョ。

「出たくてうずうずしてたくせに」と

チェスキーは言う。


雑談の後、族長の家を出る二人。

「夢だったのかなぁ」とオデコを

なでながらテージョ。

「どうだろうなぁ」と勾玉を見ながら

チェスキー。


「この棍棒も只のお宝だったのかなぁ」

と棍棒をクルクルさせる。


「あ、じゃあウォッカさんの所行って

 見てもらおうか」とチェスキーは言うと

テージョも

「そうだな、確かにこの棍棒は

 神秘的な何かをバリバリ感じる。

 竜棍で無くてもそれ相当の何かかもな」


「そういえば」とチェスキー。

ウォッカさんのいる所ってカルーア族の

街よね。あそこから出ればよかったのに。


「そんなことしたらアスティ様んとこ

 負けちまうじゃねえか」とテージョ。

「相当金が流れてそうだな、保育施設に」

とチェスキー。


「忖度だねぇ」と二人は歩きながら笑う。

「じゃあその辺も聞きますか」とも言う。


この時はまだ二人は知らない。

テージョが竜の化身として覚醒するのは

3か月後の戦いの中であることを。


その頃 やはり赤の国 カルーア族の街


「ウォッカ様、

 お客様がいらっしゃっております」

カルーア族の族長が拝礼をしながら伝える。


「ここに居る時は誰とも会わない」と

子供と楽しく遊んでいるウォッカ。


「それが、ユウキ・カミハラと珍しい

 お名前なんですが。」


ウォッカは子供たちに

「ちょっとお仕事入ったので

 このおじちゃんと遊んでてな?」と言う。


職員の休憩所のような所に入るウォッカ。

「すみません、突然。」と立ち上がり

頭を下げるジェニエーベル。


「おいおい、頭を下げるなよ。

 ここでは子供の面倒を見ている

 只のおばちゃんだ」と

ウォッカは笑いながら言う。


ジェニエーベルは頭をあげると

衝撃を受ける。

「むちゃくちゃエプロン似合いますね!」

と思わず言ってしまう!


「ははは、そうか?うれしいよ」と

ウォッカは言うと椅子に座る。


「魔族について聞きたいのだろう?

 お前も座れ」といいエプロンを取ろうとするが


「そのままで!」とジェニが

エプロンを取るのを制止する!




















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