第24話 ジプシー・クイーンの息子

数日後、軽貨が大量に作られる。

国中に通達される。


当初は困惑があったが

ある野菜の店が軽貨に対応した

分量販売をしたことで大きく変わった。


必要な分だけ買えると話題に。

いままで月に数回大量に買い、余らせ

腐らせることもあったがそれもない。


それが今度は店に変化が起きた。

毎日平均的に収入があり、日々の計算が

やりやすくなったと。


生産者は大量に売れないと、反対していたが

何と、一つ当たりの単価が高くなり

以前の7割の生産で今までと変わらない

収入となっていた。


その分全ての者が労働時間が短縮され

余った時間で趣味や娯楽の店に

金を落としていった。


収入計算もこの国の者はソロバンを

学んでおり、細かく計算で来ていた。


「0006」これが「らび焼き」の値段だった。

金貨0銀貨0銅貨0軽貨6という事である。


そう言った表示が広がるのもさほど日数も

かからず国で使われるようになった。

「なんだろうな、この順応性」と

ジェニエーベルとバーボン。


「住みやすい国」と噂が大陸に広がる。

しかし亜人も多い。

その為人間とトラブルになるが

そのほとんどが人間の悪事に由来していた。


「人間だろうと亜人だろうと関係ない」


それがこの国の基本姿勢だ。

逆に人間に対しての規則が多かったりする。

それでも人間の流入は日を増すごとに増えていく。


入国の為の審査、「名前をかける事。」


約9割の者が学習し、書けるようになる。

残りの1割は基本、犯罪者だったりするので

特に問題はない。


問題と言えば、流入のほとんどが

戦闘に特化していない者達だった事。

いわゆる一般住民である。


「他国と戦争になったら危ないのか?」と

噂をする人もいるが

名だたる武人と交流がある事、そして

バーボンと言う存在。


そしてこの大陸最大の国である「青の国」が

この国を滅ぼしたことに対して

謝罪とも言える「鎮魂の儀」を現皇女が

行った事で、後ろ盾のなたっと、

住民たちは思っている。


赤の国とも交流がある事や

先ほどの選手権に黄の国が来賓としてきた事。

そして「勇者ジヴァニア」「ベルジュラック」

の実家があったのが黄の国という事もあり


黄の国で敵対するものなど民衆レベルでは

皆無であった。


そしてさらに紫の国は安定度を増す。

向うの世界の知識を有効活用し、

第一次産業や第二次産業、そして第三次産業。

魔法を基にした「公害のない工場」など


そして年齢に関係なく自分に合った仕事を

選ぶことが出来る。

逆に国自体が、その人、色々な状態の人に

合わせた仕事を「考え作っている」ふしもある。


平穏な日々が続いて行く。

「これってエアストとエンドの状態が

 同じになった事にも関係あるんですかね」

とジェニエーベルは聞く。


「変な話、それもあるだろうな。」と

果物を食べながらバーボンは言う。


「実はですね、やりたいことがあるんです」

そうジェニは言うと

「行っていいよ、逆に行った方がいい。

 自分の眼でこの大陸を見て回ればいい」

とバーボンは言う。


「やっぱわかるんですね、すごいです。

 おっしゃる通り、この大陸を隅々まで

 見て回りたいんです」とジェニ。


「血は争えんな。」バーボンはそう言うと


お前の母親のサンテミリオン。

俺の冒険者パーティに入った時の事を思い出すよ。

「私は親のいう事も聞かず放浪しながら

 この大陸を見て回っている。」と


まぁその親が紫の国の王だったと知ったのは

相当に後なんだがな。加入時点から

ウォッカと凄く仲が良くってな。

ある時、向こうの世界で使われていた言葉を

教えたらすごく気に入ってさ、

その言葉を使いウォッカがサンテミリオンの事を

「ジプシー・クイーン」ねと言った。


語呂がよかったので凄く気に入ってたよ。

お前の母親は。


「ど、どこかで聞いた・・・アレですね」と

ジェニエーベル。

バーボンは真剣に答える。

「おれは明菜ちゃん派だ。揺るがない」と。


「うわ、母親の事、サンテミリオンの事を

 ききたくなっちゃった」とジェニ。


はは、今度ゆっくり話してやるよ。

と笑うバーボン。


「もうこの国は仕組みが確立されている。

 完全に向こうの役所にのっとって作ってある。

 お前はハンコだけを置いていけ」

と笑うバーボン。


「住む人も、国を運営する側も皆

 いい人ばかりです。安心して

 ジプシークイーンの息子で居られます」と

ジェニエーベルも笑う。


本当に多くの人と関わってきました。

この短期間に。


「一人で行くのか?」とバーボン。

「そう思っています」とジェニ。


「あ、そういえばジヴァニアも旅に

 出たらしいぞ?ひとりで。」と

なぜか悲しみに暮れるバーボン。


「それ、めっちゃ母親の血を

 受け継いでますね。」と笑うジェニ。


「まぁ俺に似て引きこもりってのも

 極端だからな、あっちに似て良かったかもな」

と笑うバーボン。


国には外遊とでも言っとくよ。

それと適当に影でも立てておく。

あと、何かあって

自分だけで何とかしようとするな。


お前はこの国の国主だ。

この国のすべてを使え。


「ああ、そうだ」と布のような物を

準備し、手渡す。


「紫の国の御旗だ。それも国主用だ。

 水戸黄門の印籠のようなモノだ。」


「なんかスカーフくらいの大きさですね」

と広げてみる。


「絶対に偽造できない、大陸に一つだけだ。

 ルナティアも、アスティも持っている。

 そしてコニャックも作ったはずだ。

 ハジメのは文様が消えたはずだ。」


「お金は偽造できるのに、これが偽造

 出来ないってよくわかりませんね」と笑う

ジェニエーベル。

「そういったモノもひっくるめて

 探してこい、見てこい。」とバーボン。


「出発は?どうせ準備出来ているんだろ?」

とバーボンは聞くと。

「今夜にでも行きます」とジェニ。


「あぁ、そうだ、これをウォッカに

 渡してくれ。手紙だ。残念ながら

 俺とウォッカしか開封できん」と言うと


「見ませんよ!しかしよくウォッカさんの

 所にまず行くってわかりましたね」

とジェニは聞くと


「魔族について

 聞きたいって言ってたじゃねえか。」

と笑いながら言うバーボン。


その手紙を受け取り、部屋を出て行く。

後ろ姿を見てバーボンはつぶやく。


サンテミリオンの息子・・・か。

サンテミリオン、お前の夢が

叶うといいな。




























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