第21話 竜の化身④

実はな、渡している我々も知らんのだ。

そもそも今まで渡した事があるのかすら

覚えていないほどだ。


こちらとしても是非教えて欲しい。


そう言うと少し思案する炎竜。

そしてテージョの足元に勾玉を転がす。


それを拾い、首にかけるとテージョは

勾玉を握り祈る。


そして息を大きく吸い込み!吐く!

「でねええええええ!」と落ち込むテージョ。


聞いているのか?お前たち。

炎出なくていいから話を聞け。


炎竜はテージョ達に竜種の事を話す。

テージョ達は座り込み話を聞く。


と、見せかけて我が攻撃をするという事を

考えないのか?


そう炎竜が問いかけると

「無いと思ったから座った。」と

当たり前のようにテージョは答える。

そして話が始まる。


我ら竜種が目覚めると、この大陸には

何もなかった。何も居なかった。

いつ頃か、洞窟や湖が出来、

そしてそこから何かしらの生き物が

現れ始めた。


それが人間であったり、亜人であったり。

その生き物たちは争いを起こした。

我らは眺めていたよ。


どれほどの時が流れたか、「神」と呼ばれる

何かが生まれ、そして勇者と魔族が生まれた。


「めっちゃ、はしょってないか?」とチェスキー。

「長くなるからだろ?これくらいがいい」

とテージョ。頷く炎竜。


我らはその者達が争う事を忌み嫌った。

時には介入し、仲裁と言う名目で

その戦場をぶち壊した。


嫌ではないか?争いなど。生きる者は皆

そう思うだろう。しかし、人間は違った。

争う事が生きる証のように振舞う。


我らの仲裁が気に入らなかったんだろうな。

勇者は執拗に我らを討伐しようと狙ってきた。


人間は気に食わなかったんだろうな、我らの

存在が。争う事を止めさせようとする我らを。


我らが何もしないでも人間と勇者は

向かってくる。

特に勇者は「アホ」なんじゃないかと

思うくらいに我らを目の敵にしている。


もう相手するのが面倒くさくなったので

我らは話し合い、「竜の化身」と言うモノを

作ろうとなった。

「気」を込めた勾玉に我らの力を付与し

渡すことでその者を覚醒させる。

そして実行に移そうとした時に、魔族が現れた。


勇者に対抗する亜人側のモノだ。

我らに言わせればエアストが作った物が

魔族だがな。人間と言うが悪魔と言った方が

しっくりくる。


その者達はお互いが潰しあったよ。

もうその頃には我々はバカらしくなって

そいつらとかかわる事がない様に過ごしてきた。

特に人間にはな。


人間からすると我らとエンド達が仲が良く

見えるかもしれんが、そこまでは親しくない。

普通の付き合いだ。人間が異常すぎるのだ。


ここまで言うと人間が嫌いと思われるかも

しれないが、嫌いではない。関わりたくないだけだ。

だからお前のような人間が居ると、逆に

興味が湧いてしまう。


だからエアリアルドラゴンと

ヴァッサードラゴンはお前に勾玉を

渡したのだろう。


お前なら人間と言う枠を超えるのでは?と。

ヴァッサードラゴンは同一化をして

そのモノの本質を見る。


我は戦いの中でそのモノの本質を見る。

少し戦い、ダメと思ったら

殺すつもりでいた。しかし、お前は

頭の中の何かが取れているんだろうな、

我は衝撃を受けた。そして戦いを止めた。


こんな愉快なことはなかった。

だから勾玉を渡すことにした。


先の戦いでエアリアルドラゴンの

勾玉が反応し、我の攻撃を受け止めた。


「あ!あの時か!」とテージョ。

「手加減してくれたかと思ったよ」とも。


その勾玉は成りは小さくても我々なんだろう。

形は勾玉だが竜なのだろう。

お前に従う竜なのだろう。


お前の心に反応しエアリアルドラゴンが

助けてくれたのだろう。


純粋な気持ちで歩いていけ。

そうしたら助けてくれるだろう、勾玉が。


「そうか、だから竜が気に入らない事をしたら

 罰が下るのか」と納得するテージョ。


そうだ、そっちのお前にも私の

勾玉をやろう。何かの役に立つはずだ。

炎は吐けないがな。


「他とかかわりたくないから。だから

 人間や亜人は竜を孤高の存在と言う。

 しかし、逆だ。我々が勝手に線を引き

 阻害しているだけなんだな」と

チェスキーは勾玉を首に下げながら言った。


それはそうと、その棍は

魔棍  魔棍 アスピド・ズメイ

ではないのか?


「あ、そうそう!風竜に貰ったんだ。

 爪楊枝にしてたらしい」とテージョ。

「なんか、命が吸われてそうで

 怖いんだけども」とも言う。


ははは、そんなことはないさ。

それはエンドに頼み作ってもらった。

我ら4竜の角を削り、それが元と

なっている。言い換えれば

我らの力が潜んでいるモノだ。


勾玉を集めると同時に、その分

力が解放され、思うがままに、

自身の手足のように「動いてくれる」。


4つの勾玉を集めた時にそれは

魔棍から竜棍となるだろう。


我の勾玉を持つチェスキー。

その勾玉を持ち、その竪琴を奏でれば

さらに攻撃に特化した魔法を

掛けることが出来るだろうな。


お前たちの事は勾玉を通して

見ている。せいぜい我らを楽しませてくれ。

そして向かえ、アースドラゴンの所に。


アイツは変な問答をやりたがる。

正直にお前の気持ちややりたいことを

言えば問題ないだろう。

いや、逆に問題かもしれん・・・。

まぁ、よく考えて答えるんだな。


じゃ、行ってこい。


そしてテージョとチェスキーは

魔方陣に包まれる。


「また突然かよ!

 たまには遊びに来るから

 その時は炎をはかせr・・」


そして二人はいなくなった。


炎竜は思う。

こんなに多くを語ったのは

何十年ぶりだろうか。と。


あの桃色の髪の女以来だな。

魔族になったと聞いたが・・・。

まぁどうでもいい。


・・・テージョか。面白い。






















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