第20話 竜の化身③

「暑いですな」とチェスキー。

「えぇ、とても暑いです」とテージョ。


あろうことか二人は上の装備を脱ぎ

腰に結び付ける。

「お前、相変わらず漢らしいな」と

チェスキーは胸元を見て言う。


「同じくらいじゃねえか!」と

テージョは言う。


二人は横に並び胸を張る。

「私の方が出ている」とテージョ。

「てめえのは筋肉じゃねえか!」と

チェスキーは言う。


ふと、思案するとテージョは勾玉を

握りそして祈りながら呟く。

「水竜よ、力を。冷たい水を。」

そう言うと・・・。


「な、なんか蒸し暑くなった気がする」

とテージョ。

「私はカラッとした暑さだがな」とチェスキー。

「さっきまではそうだった、私も」と

テージョは言うと目を閉じ呟く。

「水竜さん、水竜さん。もういいよ。

 蒸し暑いからやめて」と。


「だああああ!さらに蒸し暑くなった!

 これどうすんだよ!」とテージョ。

滝の様に汗が流れるテージョ。


10分後、元に戻った。


「死ぬかと思ったよ、マジで」とテージョは

回復薬をゴクゴクと一気飲みする。


「よくわからんから使わない事にする」と

テージョは心に決めた。


道中は魔獣が現れない。

そして扉を開けると、そこに

フェイゴドラゴンがいた。


「じゃあやるか」と二人の脳に直接響く。


「まって!ちょっとまって!いきなりか!

 話とか無し!?」とテージョは棍を

構える。


そう言いながら向かってくるその度胸や良し!


「ダメもとで聞くけど!勾玉頂戴!」と

テージョは右腕での叩き潰しを避ける。

「ありがてえ!チェスキー」と言う。


チェスキーが能力向上の魔法を掛けている。


勝ってから言え。と炎竜。


そして、その瞬間に左腕の薙ぎ払いが

チェスキーに向かう。


当たったと思ったその瞬間

テージョが棍でそれを受け止めていた。

「ぐぬぬうううううう!」

「多分、この武器じゃなかったら二人共

 終わっていたぞ!」とも言う。


「ってかそれでも人間じゃ無理だろう!

 奇跡だ!多分手加減をしてくれた!」

とチェスキー。


二人は気づかなかったが緑色の勾玉が

鈍く輝いていた事を。


二人はとにかく逃げ回る。

炎竜はブレスもはいてくる。


「あっちいいいいいい!ケツに

 かすった!」とテージョ。

「お尻って言えよ!女子なんだから!」

とチェスキー。


何かを考えながら逃げ回るテージョ。


「なあ。あのブレスってどうやって

 出すんだろうな。だって火が

 口から出るんだぜ?」とテージョ。


「原理がわかれば私も出せるかもしれない」

と真剣に言うテージョ。


「出るわけねえじゃねえか!」と

ブレスを避けながらチェスキー。


「間近で見てくる!」とそう言うと

テージョは炎竜に突っ込んでいった。

「あ!私も見たい!」とチェスキーも

突っ込む。


当初の予定をすっかり忘れている

二人だった!


ブレスが二人を襲うがチェスキーの

魔法のおかげで間一髪で避ける。


「よくわからん!」とテージョ。

「口の中からは出てなかったぞ!」

とチェスキー。

「口の先で炎となって出てた!」とも。


「ってことは、息が大気と混ざって

 炎となっているのか!?」とテージョ。

「ってことはだ!

 あいつの息を私が吸い込んで

 吐いたら出るんじゃねえか!?」

とも言っちゃうテージョ。


「なんか私も出せる気がしてきた!」

とチェスキー。


炎竜は少し焦りながら攻撃をしてくる。


こ、こいつらバカなのか?こんな事を

言いながら戦う奴らは初めてだ。


炎竜が右腕でテージョを薙ぎ払った瞬間

それを避けると腕に飛び乗り駆け上がる。

口を開けたままテージョの方を

ふりむく炎竜。


そしてテージョは一気に駆け上がると

開いた口に飛び込む!


炎竜の中で大きく息を吸い込み外に飛び出る。

そして!ぶはぁあああああ!と気を吐くと!


なんと炎が出てしまった!


「ドウヨ、デチャッタ」とテージョ。

その声は何故か甲高く変な声だった!


「すげえなおい!マジでなんかあれだ!

 竜の化身!?」と感動するテージョ。


炎竜は衝撃を受け!そして動きが止まる!


何故か次の攻撃からブレスが出る事はなくなった!

「私にもさせろ!」とチェスキー!

「モウイッカイ!」とまだ声が変なテージョ。


二人は腕での薙ぎ払いを避けると腕に乗り

顔元までかけ上がる!

「口開けろ!」と口元にぶら下がる二人!


口を固く閉じる炎竜!明らかに

嫌がっていた!


炎を吐くのは私のアイデンティティだ!

やらせてたまるか!


二人の脳にその言葉が響くが

「なんじゃそりゃ!愛とか乳とか

 知るかそんなもん!」とテージョ!


「愛でも乳でもいいから吐かせろ!」と

チェスキー。


口の右端にテージョ、左端にチェスキーが

ぶら下がり息を吸い込もうとする。


わかった!勾玉やろうか!?

だから止めてくれ!


「いらねえよそんなもん!

 そんな使い方よくわからんモノより

 炎を吐きてえ!」とテージョ。


勾玉あったらはけるぞ!?

だから降りろ!


二人は素直に飛び降りた!


何か二人は炎を吐く練習をしている。


(どうしよう。嘘ついた)と

炎竜は心の中で言ったつもりが

二人の脳に響いてしまった。


「ドラゴンが嘘ついていいのかよ!」

と何故か泣くテージョ。


そもそもお前たちは勾玉の使い方を

知っているのか?


「いや、知らん。さっきなんて

 危なく蒸し焼きになる所だった」と

テージョは天井を見上げながら言う。


「教えてくれるの!?」と聞き返す

テージョだった。















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