第19話 竜の化身②

「そっちいったぞ!テージョ」

その声に反応し、体を反転し棍で

足元を払いながら魔獣の頭部を

殴りつける。


「これで全部だな。40匹。こいつら

 上級魔獣だぞ。お前凄いな、一瞬で。」

とチェスキーは言う。


「この魔棍すげえな!寸分たがわず

 思った所を打ち抜ける。まるで私の

 狙いをくみ取ってくれているような」

そうテージョは言うと


「ま、まさか私の命が吸われているとか?」

と冷や汗を出す。

「タダでそんな力が出るとは思えんしな」

とチェスキー。


「今度ウォッカさんにでも聞いてみるか。」

とテージョは言うと

「ルナティアの方がいいんじゃない?

 なんか武器マニアって聞いたし」と

チェスキー。


「じゃあそう言う事で」と二人は言うと

奥の部屋へ入る。

そこには巨大な地中湖があった。

「人間が何用だ」と脳に直接語り掛けてくる。


そもそも、どうやってここに入ったのだ。

ここの入り口は海底だぞ?


「あぁ、風竜、エアリアルドラゴンの

 とこに行って気が付いたら洞窟だった。

 風竜の作ってくれた魔方陣でここに飛ばされた。」

とテージョは説明する。


ヴァッサードラゴンはテージョの胸にある

勾玉を見ると


「なるほど。そう言う事か。あいつ

 よっぽど暇だったんだな」と笑う。


それが咆哮となり二人は衝撃を受ける。

「あ、すまん」となぜかあやまる水竜。


「い、いえ、どういたしまして」と二人。


で、私に勾玉をよこせという事か。

なぜだ?


「勇者となったジヴァニアに勝ちたい!

 ただそれだけだ!しかし、そこには

 憎しみとかはない。単純に武人として

 勝ちたいんだ!」とテージョ。


「そしたら!竜の化身という、

 なんかカッコイイ存在があるって聞いた!

 それなら勝てるかもって!」と力説。


相手が勇者なら魔族になればいいではないか。


「いいや!竜の化身がいい!

 かっこいいじゃねえか!」とさらに言う。

「ゆくゆくはだ!まずは勇者を倒して

 次は!ウォッカさんに勝つ!」と言っちゃう。


「因みに勇者とか、魔族が竜の化身に

 なれちゃうの?」とチェスキー。


成れるが、そんな奴らには勾玉は

渡さない。絶対にだ。


なんでエアストとかエンドの子分ごときに

私達の勾玉を渡さなければならないのだ。

バカか?バカなのか?


我らドラゴンは、どんな者にも組せずに

この大陸が出来た時から存在しているのだ。

そんな「孤高の存在」が慣れ合うなど。


「自分で言っちゃったよ。孤高の存在って」

 と二人は心の中で思う。


「じゃあなおさら私が竜が最高の存在って

 事を示せばいいじゃねえか!」とテージョ。


眼を見せろ、私の眼を見ろ。

そう水竜は言うとテージョと見つめ合う。

一時して、


お前は純粋なのだな。まぁ言い換えれば

バカってことだが。

お前の心と同一化してみた。


少し頭の何かが飛んでる気もするが

それもまたよしだ。

風竜の暇つぶしに私も乗ってやろう。

受け取れ。


そう言うとテージョの足元に

水色の勾玉が転がる。


「え?アッサリじゃねえか」とテージョは

拾いながら言う。


そりゃ次がアッサリじゃないから

優しくしてやらんとな。と笑う。


「次とは?」とテージョは聞く。


そもそも、風竜が私の所に飛ばしたのは

何かがあった時に風の力が有効だからだ。

そして私はフェイゴドラゴンに対して

少しは有効だ。


「ってことは炎竜か、次は」とテージョ。


いいか?私達は暇つぶしで、勾玉を

渡したと思われてもいいが、アイツは

そんな生易しくないぞ。

「孤高中の孤高」だ。


「それってボッチじゃねえか」と

テージョは言うと


「言っちゃいかん!それだけは!」と

水竜は言うが笑いをこらえている。


竜の化身になる為の関門だ。

下手をすれば戦いになる。多分

下手をしないでも戦いになる。


「勝機なんてあるわけねえじゃねえか!」

とテージョ。


お前と同化した時、お前の感情を

知った。お前は今まで「勝機がない」と

思った事はないではないか。

そう言われても悔しがり、それでも

向かう気持ちがあるではないか。


チェスキーは笑う。

「笑うとこじゃねえ!」とテージョ。


「じゃ、弱点とか?」と聞く。


ない。 と答える水竜。

「だぁあああああ」と頭を抱えるテージョ。


「でも水に弱そうね」とチェスキー。

「因みに戦ったことある?」と

水竜に聞くテージョ。


勝ったことも負けたこともない。

そもそも本気では戦わないしな。

状況にもよるしな。

同族で争うのはお前たち人間位だ。


勾玉を使え。私の方の勾玉を。

お前は私に向かい、勾玉を使わなかった。

だから気に入ったのかもしれんな、お前が。


「え?なに、使うの?勾玉って」と

テージョ。


沈黙が流れる。


説明していないのか!エアリアルは!


そう言うと水竜は説明をする。

勾玉には竜の力が宿っている。

それを使って力を借りる。


「どうやって!」とテージョ。


そりゃあ、祈るんじゃない?握って。

それをその「爪楊枝」に乗せる?

それか自身に乗せる?


「聞いてどうするんだよ!私に!

 ってか爪楊枝って言うな!

 あってるけど!」とテージョ。


まぁそう言う事だ。


「どういうことだよ!」とテージョ。


じゃ行ってこい!


そう言うと魔方陣で飛ばされる二人。

「またいきなりかよ!」と声だけが残った。


久し振りに笑ったな。あんなバカが

まだいたんだなぁ。と水竜は言うと

地底湖に身を沈めていく。














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