第18話 軽貨

この国で食事処を開く店、その数

60店舗となった。


大手は持ち帰り検討となったが

小規模の所はほぼ移住を当初から

検討しており、スムーズに決まっていく。


中には旧首都の環境を気に入り

そちらでの開業と、望む声も多かった。

道も整備されており、街灯が

等間隔に配備され、そして特質すべきは

魔獣結界が張られていた。


首都から旧首都までも

自由に行き来できるように国が

移動手段を定時刻で走らせる。


現状は復興の為建築などの重労働が

働き口となっているが、

フランゴ飼育場を中心としてその他にも

食にかかわる物、果物等も栽培される。


冒険者のギルドもあるが非常に間口が

狭くなっている。

徹底した身元管理がされているためである。

しかし、その内容に対して報酬は通常よりも

ワンランク上となっている。


青の国との協議で紫の国としての

国土は以前より3分の1程度となっているが

これはジェニとバーボンのほうからの

提案であった。


街の数は2つ。しかし南側に広大な、

開墾の必要のない平地が広がっている。

将来的にそこを工業施設や飼育施設、

農地等に使い、小規模の村を設立していく。


選手権から数日後

「鉛筆3000本だ!納期は2週間!」

「ソロバン30個!こっちも2週間!」

ポムロールは笑いが止まらない。


基本的には復興での建築廃材を使っており、

原価はほぼないに等しい。

廃材回収に結構な人件費がかかっているが

十分な元が取れている。

他国がまねしても、できないほどの安さだが

多分、利益は逆に他国よりも出ている。


「やってられねえ」と言うほど

他国には出来ない製品、とバーボン。



ポイヤックは以前からずっと

鉛筆とソロバン造りを自らも学び

それを職人たちへ指導をしていた為

まったく問題なくつくれてはいるが


「手狭だぞ!いい加減でっかい箱を

 作れっていっといて!」とポムロールに言う。


「体力に自信のない者達の働き場所として

 最高だな、ここは」とも言う。


兎に角、この国では体力や魔力で

差別はない。多少体が不自由でもソレにあった

仕事を国が斡旋をする。


そして場所は「悪の組織」


「おいおい、今度はコレか?」と親方。

「そうだ、今までにない通貨だ。

 銅貨の10分の1の価値だ」とバーボン。


大きさは銅貨の半分ほどで四角い。

「で、素材は?」と親方。


「それがなぁ・・・。」とバーボン。

軽銀アルミを使おうと思ってるけど

 ソレにするのがめんどくさいんだよ。

 それにこの世界ではちょっと安全性に

 問題がある。」とも。


「ある・・み?なんだそりゃ」と親方。

バーボンは異世界から持ってきた皿を

親方に見せる。

「軽いな!おどろいた」と親方。


バーボンは茶焦げた鉱石を親方の前に出し

ファルツに色々と魔法の指示をしながら

加工していく。

ファルツは疑似的な雷属性魔法を

使えるため、それを行うことが出来た。


「この間の魔核を使って電気を

 起こそうとしたけどダメだった。」と。


「でん・・き?ってなんだ?」と親方。

一通りバーボンが説明するが

「さっぱりわからん!」と親方。


仕方ねえな、とバーボンは親方を

連れてジェニのバイクの所へ行く。


精霊で動かすのではなく通常の始動をし

ヘッドライトを見せる。

「眩しいじゃねえか!」と親方。

「この光を生んでいるのが電気だ」と。


この力を使えば兎に角、豊かになるんだよ。

心も懐も。とバーボン。


あと1年で何とかする。とも言う。


そして「悪の組織」へ戻ると

「兎に角、軽い方がいいんだよ。アルミは

 一つの候補だが。実際は他のがいい。」と

バーボンは言うと、親方は思案する。


「もう、そのアルミで行こうじゃねえか。

 俺はその軽さを気に入った。

 どうにかこうにかやろうぜ」と親方。


バーボンは思う。ここは異世界だ。

魔法がある。向こうとは違う。

加工途中での人体への影響は

何とかなるかもしれんな。


「ちなみにこの鉱石は何処で

 取れるもんなんだ?」と聞くと

「この国だよ。ここの裏山。

 ってか山がもう、ソレ」と

バーボン。


「魔法でやりましょう」と扉を開けて

ジェニエーベルが言う。

「その鉱石からアルミナさえ取り出せば

 いいので、分離の魔法を使いましょう」


「でもそれは統合された精霊とかを

 切り離す魔法だろ?」と親方。


とりあえずやってみる事にした。

精霊使いを呼び鉱石に分離魔法を掛ける。

が・・・。うまく行かない。


「あ、もしかして」とジェニは言う。

「バーボンさん、分離使えますよね?」

とジェニが聞くと頷く。


そうしてバーボンがやってみる。

すると!「うぉ!できた!」と驚く。


「そうか!アルミと言う存在だ。

 バーボンさんはアルミをイメージ出来て

 それを基に分離したけど。」と

ジェニは言うと精霊使いを見る。


「私はその皿の素材を、と思いましたが

 何分、何なのかわからなかったので」と

衝撃の事実を話した。


「よし、1時間で説明する。わかりやすく!」

とバーボンは言うと、図を描きながら

説明を始めた。


「なるほど、それがこの金属のような物ですね」

と精霊使いは言う。

そして再度、分離を行う。


「うぉおおお!出来ちゃったよ!」と

歓喜する全員。

「魔法すげえな!」とジェニエーベル。


それを普通のやり方で加工する親方。

「なんだこれ!もう溶けだしたぞ!」と

驚く。


ファルツはバーボンが図面にした物を

金型として魔法で掘っていく。

それを使い四角い硬貨を作る。


「で、出来ちまった。こんなに

 あっさりと・・・。」とバーボン。


「で、これ何という名前の硬貨?」と

ファルツとジェニエーベル。


バーボンは沈黙する。

全員が沈黙する。

「100円じゃだめだよな?」と

ジェニに聞くバーボン。


「だめでしょうねぇ」とジェニ。


「軽いから軽貨けいかでいいじゃねえか」と

ファルツ。

その一言に全員が衝撃を受ける。



「やっぱお前は天才だ!」と!















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