第17話 乾杯

結果が出るまでの間、参加者全員が

自分たち以外の店の味を堪能する。

お互いがお互いを認め合い、そして

質問と提案。


「なるほど、米を炊くのか」と

茶華飯店の店主。

「そのタレをかけてぇなぁ」と

アノ居酒屋の親父。


そしてバーボンはソフトクリーム屋の

屋台に出向く。

「え、こっちから伺ったのに」と

店主は言うが、完全に魔力が足りてない。


「それ、ソフトクリーム。どこで

 知ったの?」とバーボン。

「知ったの?って何。これは私の

 オリジナルですよ」とゼェゼェと店主。


「まじか!」と驚愕のバーボン。

「じゃあ魔法を使っての調理は?

 魔法使いってそういう使い方は

 嫌うでしょ?」とも続ける。


「んん。私は魔法って何だろうって

 いつも考えていました」と言うと


この世にある魔法って何だろう。

結論は生活に一部であると。それが

魔獣討伐に効率がいいから、攻撃魔法として

皆が使っている。でもね、

氷魔法って食材を通常よりも長く

美味しい状態に出来るんです。

炎の魔法は、もちろん火を熾す時に。


そう考えると、実は魔法は何かを攻撃

するのではなく、生活に使うのが一番

効率がいいと思ったんです。


「でも、それでは食べられないんですよね」

と苦笑いをしながら回復薬を呑む。


「この国では食えるぞ?」と直球で言う

バーボン。その言葉に、彼は

「知ってます。だから来たんです。」と。


「君名前は?」とバーボンは聞く。

「ビエルソです」と。


「君はわざと、ソフトクリームを作ったね。

 本当はどんな料理を?」と聞くと

「只の家庭料理ですよ。」と笑う。

「それがいい!」とバーボンは大喜び。


バーボンはビエルソの手を引き、ある建物に

連れて行く。

「なんですか!この造りは!」と驚く。


「この街の基本は異世界だ。そこの

 造りを基にしている。徹底的に機能と

 見た目を重視している」と説明する。


「わかります。」とビエルソは言うと

隅々まで見て回る。

「ここ使ってみるかい?」とバーボンは言う。

「家賃高そうですね」とビエルソ。


「月に金貨一枚だよ?」とバーボン。

「え?」と驚くビエルソ。

「じゃあ、売り上げの4割くらいを

 納入するとか?」とも聞く。


「1割」とバーボン。

「え?」とビエルソ。


「それでやっていけるんですか!?

 この国は!」と返答する。

「わからん」と笑うバーボン。


「後でバコーンとあげるとか無しですよ!?」と

ビエルソ。

「大丈夫、契約を結ぶから。書面で残す」

と言うと、ビエルソは驚くが、

「実はもう、移住の為に全てをここに

 持ってきてるんです」と笑うビエルソ。


「君は何処から来たの?」と聞くと

「赤の国です。」と返答する。

少しの沈黙の後に

「とりあえず、ここの2階は住居に

 なってるからここに住めばいい」と

バーボンは言うと

「家賃は?」とビエルソ。

「だから、月に金貨1枚って言ったろ」

とバーボン。

「え?店舗と住居含めてですか?」と

言うと「即決です!」と二人は手を握る。


他にも気になった店の店主に声をかけて回る。

全員が全員破格の条件に仮契約をする。


そうこうしているうちに結果が「出てしまう」!


舞台の上に立つジェニとバーボン。

「結果発表です!」とバーボン。


「え?もう出たの?出来レースなの?」

と会場がざわめくが。

「人の数と、この計算に特化した

 道具で行いました。」そうジェニは言うと

簡単なソロバンの使い方を言う。


会場の全員が驚愕する。

「あ、あれ欲しいな」と各所から聞こえる。


では発表です!


第5位「ぺペン亭 具だくさんシチュー」

同数で「マヨネーズ親父のフランゴ揚げ」

第4位「麺屋 明日亭 リスボア麺」

第3位「ビストロ セニョール キッシュ」


そして第2位は!

「茶華飯店 茶華巻き」


会場全体が声をあげる!

「茶華飯店が負けた!」と!

茶華飯店の親父は衝撃を受け、そして涙する。

「人はいつまでたっても頂上には

 行けぬものだな」と!


第1回 紫の国主催 

「俺の店が一番うまいんだよ 選手権」

初代王者は!


「気分屋 ぶっこみ亭 まぜくり焼き」!


会場全体が歓声に包まれる!

「あれはうまかった!」と!


まさかのダークホース!というか

ノーマーク!

「実は私も投票しました!」とバーボン。

そして料理を説明する。


水に溶いた小麦粉に卵を入れ混ぜる。

そしてそこに、気分でなんでもぶっこみ

混ぜる!そして焼く!


「それって、お好み焼き?」とジェニ。

頷くバーボン!


「そっちだったかぁ!」と頭を抱えるジェニ。

「そうだ、たこ焼きもいいが、やっぱ

 お好み焼きだ」とバーボン。


なんと4位のマヨネーズ親父が笑っている。

なんとそこは!姉妹店であった!

親父はつぶやく。

「濃い目の味だ!これは労働者に

 とって基本中の基本。そして量!

 そして鼻を突く甘ったるい匂い!」

「自分好みで選べる具材こそ正義。」と親父。


賞金の授与です!とバーボンは言うと

店主が舞台に上がる。


「てえ!スコじゃねえか!」とバーボン。

「決め手は踊る鰹節にゃ」と目を細める。

「やべえ、お好み焼き食いたくなった」

とジェニは言う。


歓喜のうちに選手権は幕を閉じようとするが

参加者が余った具材で来場者に

料理を振舞う。全部の店が協力をして、

優勝の「まぜくり焼き」を作る。


「ゼリーを入れるんじゃねえ!」とか。

「流石に米は合わないな」とか。

「それクレープじゃねえか!」とジェニ。


茶華飯店の秘伝のたれを掛け、そして

マヨネーズ!


麺を入れるリスボア。

「あれ!?これ旨い!麺を焼いて

 入れたら激うま!」と自画自賛。


「酒持ってこーい!」とバーボン!

ゴミ拾いなどで雇った人間にも振舞われる。

「あんた達が居たから助かったよ!」

とそれぞれの店が感謝をし

裏方で働いていた者達も「楽しかった」と

喜ぶ。


「いい祭りでしたね」とジェニ。

「そうだな」とバーボン。

二人は「まぜくり焼き」を頬ばりながら

グラスを合わせる。異世界の言葉で。



「乾杯!」








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