第15話 100円

前夜祭

読んで字のごとくである。


会場を取り囲むように街灯がある。

それが光り輝き、焚火が無くても明るい。


「明日は食いまくれるかぁぁぁ!」と

バーボンは壇上で叫ぶ。

会場に来ている者達は「うぉおおお!」と

叫び足踏みをしている。


「その前に今日は!この夜は明日に向けての

 ちょっとしたお遊びを用意した!

 我こそはと思う者は自由に参加してくれ!」


そう言うと様々な遊びを紹介する。

本当にミニゲーム的なモノだが全員が楽しむ。

屋台も用意され、選手権参加者が本戦とは違う

ちょっとしたものを全員に振舞う。


出店数はなんと350店舗に及んだ。

各々が一口で試食的なモノを出す。

やはり有名店の人気は凄い。


客数が少ない所にはバーボンとジェニが

向かい、試食をしていく。

二人が旨いと思った所の店主に

「よかったら」と紙を渡す。

その他にも激務から解放された

ファルツやウゾもそれを行う。


なんとファルツが歩く所には歓声が上がる。

「きゃあああ!ファルツ様よ!」と黄色い声。

「ウゾ様と一緒よ!」とも言われる。

二人は、なんじゃ?と思うが意味が解らないので

そのまま屋台をはしごする。


何故歓声が上がるのか!!それは言えない!

この間、バーボンが言った

「BL野郎!」が引っかかるのは間違いがない!


そう!二人はそっち系で何故か有名だった!

本人たちが知らない所で!

まったくもってそう言う事はない二人だが!

「何故か」有名なのだ!


「薄い本あるよ」と裏路地っぽい所で

商売をしている者がいる。


「どうだ、売り上げは」とバーボン。

「上々ですぜ、ダンナ」と店主。

二人は大笑いする。


この裏地こそが数年後、「なにかの」聖地と

なる事は、この時に誰も知らない。


「結構みなさん楽しんでもらってますね」

そうジェニは言うと

「この大陸には祭りみたいなのは

 少ないからなぁ。あるのは赤の国

 くらいかな?」と何かパイのような物を

食べながら言う。うめえな、これ。


「そういえば、アスティさんは向こうの

 世界の人でしたね」とジェニも食べる。


二人はアスティの屋台に行くと

「あ、ジェニさん!食べてってくれ」と

リスボアは言う。


リスボアが出したのは、明日出す予定の

モノではなく。

「これ二人が来たら食べさせろと、

 アスティ様が言ってたんで。」そう言うと

小ぶりの器を出す。


「おおおおう!この色はトンコツなのか!」

と二人は器を取る。

ジェニはスープをまず飲む。

「おおお、トンコツだ。マジもんだ。」

「まじか!あいつやりやがった!」と

バーボンもすする。


そして麺は細麺。スープが程よく麺に

馴染み、啜ると鼻水が垂れるほど旨い。

「こ、これを出すのか!」とバーボン、


「これは特注です。明日出すのはこの大陸の

 味と食感に合わせたヤツです。俺は

 これよりも明日の方が旨いと思いますが。」

とリスボア。


「というか、リスボア君は何でもできるんだな」

と感心しながらジェニは言うと

「色々とやってみたいんですよ。なんでも

 出来るんじゃなく、なんでもやりたいんです」

そうリスボアは他の客に食べ物を出す。

その出している食べ物はなんと!


「をい!それも食わせろ!」とバーボン。

「そう言うと思って特注がありますよ」と

二人に「餃子」を出す。2個づつ出して

「本来は6個なんですよ」と笑うリスボア。


そこにはなんとタレもラー油もあった!


「リスボア君、うちに来ないか?

 レシピと共に」と手を差し出すバーボン。


「おいおい、人のとこの人材を

 引き抜いてるんじゃねえよ」と後ろから

アスティは笑いながら言う。

「食いたけりゃ、俺ん国に食べに来い。

 その特注は、1杯銅貨2枚だ」と。


「高くねえか!」とバーボンは言うと

「普通の奴は銅貨1枚だ」と

アスティは言うが・・・。


実際な、銅貨1枚以下で出したいんだよ。

向うの世界で言うと大体1000円だろ?

ここでは物に対して幾ら?じゃなく

例えば銅貨、それに合わせてやり取りする。

だからアホみたいに量を増やすか

2杯出すかになっちまうんだ。


「作る?」と平然と言うバーボン。

「出来るの?」とアスティ。

「この国でまず試してみるか」と

バーボンは言うと


実際、この国でやろうと思っていた。

銅貨の下の単位の通貨。

1円を作っちゃうとアレだから

まず100円を作ろうと思う。


「相当数の量を作る事になるぞ?

 500円じゃダメなのか?」と

アスティは言う。


そう思ったけど、やっぱり100円だ。

根性でやるさ。とバーボン。


3人で少し歩いて行くと。

「をい。嫌な予感しかしない店がある。」


そこにはグラーブが売り子をしている。

作っているのは・・・

「なんでルナティア様が作ってるんだ」

とジェニエーベルは言う。

「医療班がパニックになるじゃねえか!」

とバーボンは言うと


「失礼ね。私はね、ジェニの一言で

 開眼したのよ」と自慢げにルナティア。


というか、変装してもわかりますよ。

ジェニは言うと、目の前のスワンサンドを

手に取り、ムシャムシャ食べる。


「あ、この間のより旨いですね。

 酸味?を足しました?いや、これは

 なんだろう。ピリッとして。旨い。」

とジェニは言うとバーボンの口に突っ込む。


口をもぐもぐさせてバーボンは

「人は、変われるんだな」と

涙を流し、言う。


「どうやって漏れを止めたんですか?

 魔力の」とジェニ。


「料理を作る前にぶっ放すのよ、

 上級魔法を5発ほど。それでも

 少し漏れるのよね。」


「多分、そのピリッとしたのは

 ほんの少し漏れてる魔力ね。それが

 いい具合にそうなるのよ」と。



毒も使いようによってはスパイスだった!























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