第13話 医療
数日後 大量の観光客が
押し寄せる。その者達の為に
まだ空いている居住区を宿代わりに
利用する。しかし、その部屋に
案内されたモノは驚く。
質素だが清潔で完全な安全体制。
ハンコタイプの鍵。
いわゆるアパートタイプなのだが
防音も完璧だ。
一つの建物に一人ずつ
選手権参加者を雇っているために
食事の面でも心配はなかった。
参加者も結構な高い賃金だったので
快く受けてくれた。
「祭りだ!手伝うのは当たり前だ!」
と茶華飯店の店主も笑う。
別な区では野営をする者達もいる。
その者達には少量だが
フランゴと卵を提供している。
住人が総出で対応している。
爺も婆も。
会場の準備もほぼ終わっている。
「前夜祭ってやるんですか?」と
ジェニはバーボンに聞く。
「やる。もちろん夜にだ。そこで
街灯のお披露目だ」と笑う。
因みに親方とファルツは徹夜が続き
疲労困憊でぶっ倒れていた。
実はその裏で多少の乱暴ごとは
起こっていた。しかし、即座に
警備隊がやってくる。
リアスを代表とする警備隊。
そこには元リーダーたちもいた。
争いが起きてたったの3分で到着できる
構造はいまだに秘密であった。
勿論、宿に忍び込み窃盗を働こうと
した者もいたがすぐに警備員が
駆けつける。
そういった者の言い訳は通用しない。
「部屋を間違えた」などと嘘をついても。
しかし、本当に部屋を間違えた者には
親切に案内を行う。
窃盗犯と本当に間違えた者の違い。
それを意かに判断しているかも
まだ全ての者には秘密であった。
律儀に各部屋には移住者用の
パンフレットまで用意されていた。
現在再建中の旧首都とこの首都。
働き場所や学校の事も書いてある。
年齢に応じた仕事も多く書かれている。
そして目を引く文面もある。
急募! 回復魔法士
冒険に出ないでも高収入!
雇い主は国!
安定を望むあなたにピッタリ!
と。
「ジェニ。俺はハジメが欲しかった。
本音を言うとそのまま黄の国がつぶれて
連れて来たかったよ」とバーボン。
「そんな考えをする俺は屑だろうか」とも言う。
「自分の国の為にメリットを拾う、と思えば
問題ないかな。まぁ潰れるとかは
心のうちなんでしょうが。」とジェニ。
「医療ですね?」とも言うと
「そうだ、この大陸には珍しい奴だ。
魔法を使わないで何かを治療できるのは
凄い事だ」とバーボンは言う。
「ハジメは最終的に医療と言うモノを
見据えていたが周りはいい顔をしなかった。
そりゃそうさ、この国には魔法があり
回復薬もある。しかし、病は別だ。」と。
「あれですか?俺あんまり詳しくないけど、
内科的外科的みたいな?」とジェニ。
「まぁそんなところだな」とバーボン。
「本当に残念だ。」とも続けると
ジェニエーベルは言う。
「取っちゃいます?サボルチ。
勿論友好的に。姉妹都市作戦」と笑う。
「交流ね、いいねそれ。」とバーボン。
「医療を貰う代わりに防衛武力を出す。
その他にもハジメさんが
医療に全力投球できるように
資金も人も提供。」とジェニ。
「まぁもう少し国の力を先につけよう」と
ジェニの頭をワシャワシャして笑う。
「因みに、ダンを雇ったんです?」と
ジェニは聞くとバーボンは頷く。
「既に調教済みだ。あいつとバローロは
俺達の料理製造マシーンとなっている。
まぁ冗談だが、終わったらあいつらに
料理の全てを渡すこととなってるよ。」
と。そして続けて言う。
「ジェニの食い物。アレは確かにいい。
この世界には無かったが大好評だった。」
とも言うとがっちり握手する。
「温泉でお願いします。慰安旅行。」と
ジェニは言う。
翌日、前夜祭当日の昼
今度は「お偉い人達」がやってくる。
ルナティアは
ジヴァニアとグラーブ、そして
秘書のような女性を連れて。
アスティはリスボアを連れて。
そしてなんとコニャック。勿論
マルチネを連れて。
「お偉い人達」は迎賓館に
案内される。案内係は無論、
ジェニエーベルとバーボン。
ちょっとした首脳会談が行われる。
コニャックは絵にかいたような貴族の
いで立ちで挨拶を行う。
凄く丁寧でそれでいて威厳がある。
「あんな事件」を起こした者とは
思えないほど。
会談中には自国の為にハッキリと
モノを言う姿勢。
メリットとデメリットを天秤にかけ
ルナティアやアスティのいう事にも
頷くこともある。
ジェニエーベルも負けていなかった。
今後の展望や現状をハッキリと言う。
そして休憩に入るとコニャックが
ジェニエーベルに言う。
「もっと俺の所に攻撃的かと思ったぞ」
ジェニはそれを聞いて
「お互い様です。」と言うと
「いつの間にか政治家ね」と
マルチネはジェニに言う。
「なんかあんたの色が出てたぞ?
コニャックの対応は」と
マルチネに騎士風の挨拶をするアスティ。
コニャックはそれを聞いて「ふん」と
そっぽを向きながら言った。
「国と街の違いを知っただけだ。」と。
「ルナティアはなんか丸くなった感じだな。
何かの棘が抜けたか?」
とアスティは意地悪く言う。
「その冗談は笑えませんよ」と
ルナティアに付いていた秘書。
「ぶっ!」とバーボンとアスティ。
そしてジェニエーベルは吹き出す。
「エアストじゃねえか!」と!
ジヴァニアは大笑い。ルナティアも
大笑いだ。
「サプライズよ!」とイェーイと
ハイタッチをする二人。
「ホムンクルスだから何もできないわ。
魔法もね。ウォッカが居たら
バラバラにされていたわ」と。
明日の選手権で食いまくったら
帰るわよ。とエアスト。
「食うのかよ!というか食えるのか!
ホムンクルスなのに!」と全員。
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