第12話 屋号

「只今でした。」とジェニエーベル。

そういうと、机の上のモノに目をやる。

「これ、アノ魔核じゃないですか。

 ってか、発光してるし」と驚く。


「これを街灯にしようと思ってな。」と

バーボン。

「あ、いいえですね。その考え。でも

 どんだけの数を使うんですか!1個

 金貨2枚ですよ!もっと少量で効率よく

 してくださいよ!」と声を裏返しながら言う

ジェニエーベルだった。


「LEDっぽく出来ないですかね」と

思案するジェニエーベル。

「こういった感じでこういった長めのモノに

 この間隔で置いたりとか?」と

図を描きながら言う。


「銀を使って鏡のようにすれば反射で

 どうにかなると思います。魔核1個を

 ガラスに包んでもいいし」と続ける。


「ふむふむ」と納得するバーボン。


「因みにそっちの器は?」と聞くと

「食うか?」と言いながらニヤニヤする

バーボン。そして奥の部屋に行き

一時して戻ってくる。


「へい、おまち」とジェニの前に

器を出す。

「ラーメンじゃないですか!」と

驚き喜ぶジェニエーベル。

そして食べる!そして言う!


「塩ラーメンですね。」と。


「そうなんだよ、本当はトンコツに

 したかったんだがなぁ」と言う。


「サングリアじゃダメでした?」と

 麺をすすりながらジェニエーベル。

「ダメだった。まぁ調理法かもしれんが」

とバーボンは言うと

「もっと別の理由もあってな」と。


お前が持ってきたフランゴだがな。

すでに1000匹を超えている。


「え?20匹でしたよね」驚きながらも

麺をすするジェニエーベル。

「あ、おかわり」

「ねえよ!」とバーボン。


「もう卵をポコポコ産むしな。

 鶏舎の中で安全なんでどんどん

 返るんだ。んで、それを使って

 塩ラーメン」とも続けた。


「来月には多分5000匹超えるぞ」

とバーボンは言うと


でも、それを売ってしまえば利益も出るし

雇用も作れる。その辺の調整を今

考えている。卵取りとか鶏舎清掃で

多少体の不自由な人も働ける。

いいことだらけだよ。


「そう言えば稲作出来ないですか?」と

ジェニは黄の国で食べたコメの事を言った。

「したいとは思っているがなぁ」と

バーボンは言うと「場所がなぁ」と。


「狭いしな、まだこの国は」と言うと

まだ貿易で仕入れた方が安価だな。


「そういえば」とジェニは言うと


バーボンさんは、アレをリゾットに

したでしょ!なんで炊かないんですか!

米は炊いてなんぼですよ!とも言った。


「炊いてたよ?俺の分は」と返答する。


一部だけなんだよ。この大陸の、というか

黄の国の人間で炊いた方がいいと言うのは。

だからリゾットにした。


実際、この国にはパスタもないんだ。

小麦粉はあるんだよ。しかしない。

もう食文化が違う。文化と言うより

進化が違う。発想が違う。思考も違う。


人間として全てが似ているのに。


「俺達が、俺が異世界人で向こうの

 食生活を持ち込んでもな、最初は

 興味深く食うが、すぐに飽きられる」

そう言うとラーメンの器を指す。


「なぁ親方。またこれ食いたい?」と

バーボンは言うと

「うーん。どうしてもってことはないな。

 出されたら食う、ってとこだな。あ、

 でも旨かったぞ」と親方は言う。


「俺はまた食いたいなぁ」とジェニ。


「だから今回の選手権を開いた」

そうバーボンは言う。

「そこから色々取り入れてみたくてな」

けっして金じゃないからな。と付け加える。


「実際は食事処が足らなくてな」

そう言うとバーボンは続ける。


いま、この国は発展途上だ。復興中だ。

どうしても肉体労働が多くなっている。

そういう者達の胃袋を満たすことが出来ないんだ。


家庭がある奴はいいが独り者は大変だ。

軽く食べられるところもガッツリ食う所も

全く足りてない。


なので参加者に

出展を要請したいってのもある。


「実は俺も出たいって言ったら?」と

ジェニエーベルは言うと

「いいね、国主自らってのがいいな」

とバーボンは言うと

「盛り上がってきたな」と笑う。


「因みにどんなものを出すんだ」と

バーボンは聞く。


「ふっ。どんな味付けにも対応できる

 モノですよ」と目を光らせる。

「どちらかって言うと軽食なので

 ガッツリは出来ませんが、

 応用が利きます。まぁ見ててください」

と自信満々に言う。


「あ、もしかしたらその塩ラーメンと

セットで出してもいいですね」とも言う。


「因みに」とジェニは言うと

「聞こえていました。慰安旅行の事」

とニヤニヤする。


そして4人はガッチリ握手する。



その頃 赤の国では


「リスボア、これ食ってみな」と

アスティは一つの器を出す。


「なんです?これ」と聞くと

「ラーメンと言う」とアスティ。


アスティもラーメンだった!


「まぁ食ってみな。味付けに20年

 懸けた。異世界の、向こうの味付け

 とは全く違う。そして麺もな。完全に

 この世界に合わせている。」と

自慢げに言う。


「なにこれ!まじうめえ!」と

汁まですするリスボア。

「因みにこっちは向こうの味付けと

 麺だ」と私達が見慣れた、もう一つ出す。


それを食べるとリスボアは変な顔をする。


「俺達はそっちが旨いと思っている。

 まぁ、食文化の違いだな」と言う。


アスティが最初に出したモノは

麺は通常の3分の1だ。それに超太麺。

その麺すら何かが違う。

汁にはトロミがついており具材が細かい。

しかし汁の量は多い。


多分、バーボンとジェニが見たら

只の創作料理と思ってしまうほどに

ラーメンとは違う。


「で、それをお前が店をして出せ」と

アスティはリスボアに言う。


「屋号は 麺屋 明日亭」だ、と!











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