第4話 掘る

ユキツーの後をついて行く一行。


「あそこで反応があります。あの建物の

 真下あたりです。」とユキツー。


そこを見て全員沈黙。


そこには教会の様な建物。が、

崩れ去っている。


「おい、エアスト」と言うと

殴りかかるウォッカ。それに

カウンターを当てるルナティア。


ウォッカはふら付きながら

「てめぇ!なめてんじゃねえぞ!」

そう言うと、


百歩譲って教会の真下に作るのは

許す!しかし!崩れてるじゃねえか!

それもだ!石造りじゃねえか!


ジェニエーベルもジヴァニアも!

そしてルエダも!天を見上げる。


「崩れているのは私のせいではないわ。

 時の流れのせいよ。」とエアスト。


ジェニエーベルはあたりを見回す。

「もし仮に、石を避けて斜めから

 掘るとして。」と歩き出す。

「石畳があるのでここからですね」と

手を大きく振りながら言う。


そこは教会跡地から約20メートル。

それを見てジヴァニアは言う。

「真っすぐ下に掘ったら50メートル。

 でもジェニの所から斜めに掘るならば」

と言うと斜め上を見ながら計算する。


「大体54メートルね。

 大して変わらないわ。」と言っちゃう。

しかし次の一言で全員が歓喜する。


「グノームを召喚して掘らせる!」と。

全員が拍手喝采。


ジヴァニアはグノームを召喚する。

それも一気に15匹。


「さすが私のみ込んだ勇者ね」とエアスト。

「流石私の娘だ」とウォッカ。

「そう言えばアンタも、

 元は精霊使いじゃない」とルナティア。


「久しぶりに召喚してみるか。」

そうウォッカは言うとジヴァニアから

タクトを借りる。


ウォッカが魔方陣を描く。

完全なる円、完全なる文字。

そして強く赤い発光をする。


全員が思った。心の中で叫ぶ!

「ただの脳筋ではなかった!」と。

ウォッカは言う。

「顕現せよ!べビモス!」


お呼びでしょうか。ウォッカ様。

そう言うとべビモスは首を垂れる。


「でけえ!」とジェニエーベル。

「ってかどう見ても精霊じゃない!」

とルエダとジヴァニア。


「あんた何呼んじゃってるのよ!

 妖精じゃないの!」とルナティア。


「おお、べビモス、久しいな」と

ユキツーは言う。

「ん?フシャスラじゃないか。

 なんだ、その体。

 ちょっとかっこいいな。」

とべビモス。


「よし、べビモス。掘れ。」と

ウォッカは言う。


「はい?」と何も理解できていない

べビモス。しかし目の前で

穴を掘っているグノームを見て


「流石に。私がするんですか?

 この私が?妖精の中でも3本の

 指に数えられるほどの上位の・・・」

そこまで言うと、ぶっ飛んで行く。


「私は掘れと言ったよな!だったら

 どうするのが正解だ!」とウォッカ。


「ねぇ、」とジヴァニアはユキツーに

耳打ちをする。

「あんたとべビモスって立場的には

 どんな感じなのよ」と。


妖精の女王エルピス様の真下です。

私もべビモスも。

「エルピス様が社長なら私達は

 専務ってとこでしょうか」と言う。


ウォッカの目が赤く光る。そして

神器を手にべビモスに近づくと・・・。

「がんばります」とべビモス。


「どけお前ら。俺が掘る。」と

グノーム達を払いのけ、掘り始める。

「うぉおおお」と声がする。


土がガンガン穴から出てくる。

それをグノーム達が片付ける!


「それでいい」と

神器を収めるウォッカであった!


しかし一時して土が出てこなくなり

穴からべビモスが顔を出す。

「大変です。岩盤です。それも

 結構な厚さです。」と言う。


「何やっちゃってくれてるんですか!

 なんで岩盤あるんですか!」と

ジェニエーベルはルナティアに言う。


「そりゃ、簡単にたどり着くとか

 あるわけないじゃない。ギミックよ。

 ギミック。知ってる?」と

笑いながらエアストは言う。


「ギミックってさ!」とジェニは言うと


例えば、何かの数字合わせとか、

同じ色の板とかボタンを押したりとか、

そんなもんでしょうに!


そもそもですよ!なんでエアストの

所に行くのに穴掘るんですか!

ってか岩盤って!


「母様、エンドの所ってどんな

 感じだったの?」とジヴァニアは

ウォッカに聞く。


「途中までは魔法防御を張った船で

 行ったが、残り10キロほどは

 全員で泳いだな。」

と何かを懐かしむように言うウォッカ。


「あんたらおかしい!」とジェニとルエダ。

「というか泳ぐ方もおかしい!」と。


「もう400人ほどが泳いでいたぞ」

と笑うウォッカ。


ユキツーは

岩盤に向かって攻撃をする。

青白い太い閃光が穴に向かって

放たれる。が、反射して来て

ユキツーに当たりそうになる。


「だから!

 ギミックって言ったじゃない」

とエアストはほくそ笑む。


「この大陸の神は頭おかしい」

とジェニ、ジヴァニア、

そしてルエダはつぶやく。


「だから何度も言ったじゃねえか。」

とウォッカは言うと穴に飛び込む。


ウォッカは岩盤の上に立つと

神器を構え、そして斬る。

「私が斬るんだ。斬れないものはない」

と言うと岩盤に亀裂が入る。

亀裂と言うよりも完全に斬れている。


「あんたの力じゃなく、神器の力よ」

と不貞腐れてエアストは言う。


その亀裂に神器を差し込み、

大きく円を描くようにねじりながら

斬りこむ。


「べビモス!持ち上げろ!」と

ウォッカは丸く切られた岩盤を

抜くように指示をする。


「ぬぉおおおお」と

雄たけびをあげながらべビモスは

その岩盤を抜くと放り出す。


ズドン!と大きな衝撃を放ち

ジェニ達の前に落ちてきたその

岩盤は、厚さが3メートルほどあった。


「もうないよな?」とウォッカは

エアストに聞く。

「10メートルごとにあるわよ?」

とエアストは答える。


「よし、今日はここまでだ。後は

 自由行動だ。」とウォッカは言う。


穴を掘り始めて30分で今日の分は

終了した!




























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