第二話
シベリアの森は漆黒の世界の中でもさらに闇が深い場所にある。己が雪を踏む足音と獣の音しかしない。僕は獣に殺されるのかなと思った。しかしそれよりも強烈な意欲がサロにはあった。
(おなかすいた……)
そう、サロは仮面を被ってから何も食べていない。サロはとぼとぼと森を歩いていた。その歩くスピードも遅くなっていく。
やがて池が見えてきた。サロは自分の顔を水面を通してみる。
なんともう仮面と皮膚が一体化していた。それだけではなかった。徐々にではあるが首の部分の皮膚が緑色になっていく。動物たちはサロを見てるが襲そうとしない。なんでだろう?
サロが口を動かすとなんと仮面も動くようになっていた。
瞳は朱色だった。もう人間の瞳ではない。耳はとがっていた。
そんな中……水色の光がやって来た。
――あなたが新しく誕生した魔王様ですか?
なんと精霊が語り掛けて来た!!
「一応……そうなるのかな……そうだけど」
――なんなりとご命令を!
「とにかくおなかすいた……」
――お安い御用です。
すると池に居た魚を一つに集めてなんと自分の前に持ってきた。そこに石を敷き詰める。さらに魚を串刺しにした。全部呪力で成し遂げた。石を敷き詰めた中央には樹を集めていた。
――軽くこの石を敷き詰めた中央に焔の呪を唱えると夕食出来ますよ。
「どうやって?」
――念じるだけでいいのです。
念じてみた。すると簡単に自分の指先から焔が出た。魚が徐々に焼かれる。いい匂いだ。
――この魚を食えば今日は当面のところは大丈夫だと思われます。
「ありがとう」
魚が焼きあがるとサロは貪るように食った。
――魔王様、ところでもう住処は決まっておりますか?
「まだだけど」
――先代と先々代の魔王城、廃墟になってますが行ってみますか。
――この地は夏が短く、冬は極寒の地。まずは寒さをしのがないといけません。
(そうだった)
――今日はもう遅いです。夜露が凌げる洞窟をご案内します。
水色の光が案内する。
たしかに洞窟があった。なんと自分は闇夜でも良く見えるようになっていた。
――明日、二つの魔王城をご紹介します。大丈夫です。魔王様はもう空を飛べるようになってます。
(すげえな。本当かな?)
――今日のところはこんな劣悪な場所ですが。
劣悪だなんてとんでもない。吹雪を防げるだけでも上出来だ。
「あ、ありがとう」
やっと自分はありがとうが言えた。
――いいえ、当然のことをしたまでです
(ん? この漆黒の闇から力が得られる)
「ねえ、この仮面から力を得られるように感じるのだけど気のせい?」
――気のせいではありません。出来の悪い子供にかぶせられる仮面ですから……命を落とさないように漆黒の闇や夜からでも力を得られるように出来てます。命を落とさないように。でもそれは必要最低限のエネルギーしか得られませんからちゃんと食事してくださいね
(そうだよね。じゃないと空腹感なんて覚えないよね)
――ちゃんと寝てくださいね。
(もちろんだよ)
サロは肉体的に限界を感じていた。熊の毛皮がなかったら寝床にもなりえなかっただろう。いかに樹の床の上で毛皮の上で寝るのが幸せなのかをサロは身に染みていた。そう洞窟は石で凸凹だった。
サロの視界が闇に染まっていく。
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