第一話

 村人に囲まれながら呪術師とサロが会話する。両者の吐く息はさらに白くなる。


「お前のようなものが出たのは伝承によると……」


 「うん」


 呪術師のロロが言うには一人目の魔王は力におぼれてれて最後は勇者に滅ぼされたという。


 「おまえの人生、どう歩むかは自由じゃ。だがあり余る力に溺れるとこの仮面は別のものを生み出す」


 サロは呪術師の笑みにおびえた。


 「勇者じゃよ」


 「仮面から発せられた白い光が少年を選び、その者は強大な力を有する」


 (それって、要は魔王の力って事?)


 「最後に魔王は魔王城を作って対抗したがあっけなく勇者に敗れ去った」


 「魔王って弱いの?」


 「力の使い方次第じゃな」


 「もう一人は初代魔王が討伐されたことを知った後の者じゃ」


 「うん」


 「魔王城を作って引きこもった」


 「それいいじゃん!」


 「その後、どうなったと思う?」


 サロはかぶりを振った。


 「討伐された」


 「なんで!?」


 「魔王は精霊を具現化して魔物を作り出すことが出来る」


 (へえ!)


 「二代目の魔王はたしかに何もしなかった。部下にもそう命令した。だが、部下が言うこと聞く者とは限らない」


 (部下、ねえ)


 「お前の被ってる仮面は徐々に一体化する。そしてどんどん力がみなぎってくるはずじゃ。痛みに耐えて気が付いた時にはもう魔族じゃよ……。さあ、お前は村から追放じゃ!」


 サロはこうして村から追放された。


 サロの両親は泣いている。


 ――お前の育て方が悪いからだ!


 ――あなたが愛情を注がないからよ!


 サロを見送った後に村人が呪術師を見る。不気味にも笑っていたのであった。村人は震えた。それは寒さのせいだけではない。


 我が子は「魔王」になる。厄災の仔なのだ。魔王になったあとこの村はどうなるのか。ロロに聞いても何も教えてくれない。最悪……恨みで村が焼き討ちにされるのではないかと両親は心配するがロロは何も答えない。


 我が子は……どうなってしまうのか。

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