第18話 クズは嫉妬する
自室へと向かうところで、寮を管理しているお姉さんから『チューヤくん、ちょうどよかった!実家からお手紙が届いているよー』と手紙を直接渡された。
どうやらマリア姉からの返答のようだ。
……また手紙に小細工でもしているのか、ザラザラと違和感のある手紙だ。
そして魔石も入っているらしい。
自室の居間で手紙を開くと、いつぞやの時のようにマリア姉の映像が——立体的に現れた。
「……まるで目の前にいるみたいじゃねーか」
空中で浮かび続けている手紙から青白い光が散逸して、マリア姉の姿を映し出している。
どうやらこの数週間程度で……さらに投影魔術を改良させたらしい。
この人は……天才だ。
俺なんかと違ってなんでもそつなくこなす。
それだけでなく結果を出し続けるんだから……周囲の人の矮小さを浮き彫りにする。
ほんと残酷だ。
と言ってもまあ、神様ってやつは意外にも平等らしい。
相変わらずマリア姉の欠点は改善される余地がないのだから。
それにしたっていつもにも増して話が長い。
いやそれだけでなく話が右に左にと脇道に逸れ、本題に入るのになんと十分もかかった。
だからコーヒーを入れている時に、ついつい聞き流してしまうところだった。
内容は次のようなものだった。
∞
――それでね、お父様がおっしゃるには『王宮内でも吸血鬼による仕業であるという情報は未だに掴んでいない。だからこそ、ベラニラキラ家が先んじて真相を突き止めければならない――』とか何とか。
うん、だからね。
やっぱりお姉ちゃんは心配なのっ!
チューヤくんが無理してしまわないか……
夜も昼も眠れなくなって、最近ではシーアちゃんと一緒に寝ることもあるんだからねっ!
いいですか、チューヤくん。
以前のようにいくら吸血鬼が関わっているからかもしれないからと言っても……無理をして心眼を使ってはいけませんからねっ!
めっ!ですからね!
もしも心眼を使ったら……きっとヘラちゃんだって悲しむよ?
封印されているから普段は会えないけれど……また無理をしてチューヤくんの生命力が減ったらきっとヘラちゃんが1番悲しむんだよ。
だから勝手に使ってはいけませんっ!
これはお姉ちゃんからの命令ですっ!!
それから――――
∞
俺はマリア姉の声を遮って手紙を閉じりると、立体的な映像は掻き消えた。
相変わらず話が長い……勘弁してくれ。
それは置いておくとしても心眼を使わないという点を守ことは難しいだろう。
なんと言っても相手は不老不死の吸血鬼なのだから、何かしらの対抗手段を行使するしかないことは明らかだ。
俺の持ちうる対抗策。
空間魔術。
しかしそれだけで太刀打ちできるほど簡単な相手ではないだろう。
いつぞやの朝に襲われた時だって、油断していたとはいえ……なんとか心眼を使わないで対処したが次はそうはいかなだろう。
まあだからと言って心眼を使うことで、必ず吸血鬼に勝つことができるとは思わないが……それでもクロエを逃すための時間確保をすることくらいならば……できるはずだろう。
それにしたって……他に用意できることといえばいつも通りに魔術の鍛錬を行うことか。
魔術の基礎力を鍛えることくらいしかできないのだから、俺はそれに専念するしかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます