第三十一話 最初の試練

 ルール説明に続いて、ランキング上位十人の生徒についての簡単な紹介がカスミによって行われていく。


 まとめるとこんな感じだ。


 ランキング十位:『羊狩り』カミト

 ランキング九位:『闘士』リウ

 ランキング八・七位:『七転八倒』アマハ姉弟

 ランキング六位:『狂犬』コロロ

 ランキング五位:『運び屋』ケンジ

 ランキング四位:『豪雷』マイ


 という具合。


 正直、四位まではあんまり記憶に残らなかったので二つ名ランクネームだけ記憶に留めておこうと思う。


 問題は三位以上か。


「姉さんほどじゃないけどれど、三人とも大したマナの保有量ね」

「二つ名もエライ物騒やなあ。『灰燼』に『守護者』、それに『夜騎士』……。強そうやん?」


 まあ相も変わらず、どれもこれも小っ恥ずかしいネーミングセンスなのだが、誰が決めているのかしらコレ。


 とはいえ、彼らと戦うことになれば苦戦はすると思う。マナの保有量が優れているだけじゃなく、気配から察するに特殊な能力も持っているはずだ。


『ランキング上位者の紹介はこれにて終わりとする。それでは、これから君たちにはチームを組んでもらい、チームで課外演習に当たってもらう! 皆の奮闘を期待しているぞ!』

「「「おおおおおおおおお!」」」


 生徒たちが大いに盛り上がりを見せる中、アタシは、シャルとマドカと三人でチームを組むことにした。


 ユキを探したが、どうも彼女は彼女で同級生とチームを組むことにしたらしい。残念。彼女の戦力が欲しかったところだが、まあ問題ないか。


「このチームなら楽勝だろうしね」

「ゆうても、警戒せんとあかん相手は多いと思うで? 集団戦いうんは個人戦よりも幅があって厄介やしなあ」

「わかってるわよ。けど、近接万能型のアタシ、守備型のシャル、それに前衛遊撃型のアンタ。完璧なトリオね」

「む〜、私も頑張るね〜」


 実際のところ、シャルの修行の成果も見たいし、今回は良い機会となるはず。


 周囲に続いてアタシたちもそれぞれのWDウェポンドール(〈カロン〉はFDフォーミュラドミネイターだが) に乗り込み、スタート地点で準備する。背筋にフィットするコクピットシートに背を預け、握り慣れた無骨な操縦桿を通してエンジンにマナを送り込む。


 事前に告知されたルートだと、学校を出てまずは山間部へ、そのまま峠を越えて山を抜けていく流れとなっている。道中に点在する整備ドックで機体を修理することも可能らしく、長丁場を想定した演習だ。


『それでは皆、良い経験を! 課外演習ランクロワイヤル………開始ッ!!』


 合図を皮切りに全チームがそれぞれのWDで出発する。


「まあ最初は、他の出方を見ましょうか」

『そうやなあ。手の内を無駄に晒すんもアホらしいしな』

『慎重に行くのは賛成〜』


 山間部まではほぼ一本道なので、必然的に団子状態となる可能性が高い。だからこそ様子見をしつつ追い抜けるタイミングを伺った方が利口だ。


 そう考えてのんびりと校門を後にして間もなく、アタシは自分の考えの浅さを呪うこととなった。


「ちょっと、どうなってるのよ!」


 一、二いや三チームはいるだろうか。山間部入り口付近で、アタシたちは複数のWDウェポンドールに襲われたのだ。


 どうやら待ち伏せていたらしい一機ずつの能力は大したことないが、数が多すぎる。徒党を組まれるとさすがに鬱陶しい。


『ウチらも人気者になってもうたもんやなあ』

「言ってる場合か!」

『ハルカ~危ない~!』


 ライフルによる中距離射撃の間に割り込んだシャルの〈ヨロイ〉が、その分厚いシールドで弾いてくれた。その隙に迫ってきた近接型を〈カロン〉の拳で打ち抜き、倒す。さらに幻影の術で分身したマドカの〈クリスハスター〉が、敵をまとめて双剣で薙ぎ払って見せた。


 何度かの実践を経て、確実にシャルの動きは良くなっているし、三人での連携力も高まってきている。この分ならホントに心配はいらないかもしれない。


「やっぱり大したことないわね。この調子でさっさとここを突破するわよ!」

『勝ち誇るにはまだ早いぞ、転入生!』

「!」


 咄嗟にフットペダルを蹴りつけ、後ろに下がる。アタシに狙いを定めていた数機のWDウェポンドールが、急に空から降ってきた何かに吹き飛ばされた。瓦解していた敵チームにトドメを刺すが如き急襲。


 パイロットの安否が気になるレベルでズタズタに破壊された機体の山に降り立ったのは通常サイズよりも巨大な威容を晒す翠色の大型WD。


 両腕両脚は重機のように重厚で凶悪な形な上に、何重にも重ねられているような造りの胴体装甲も堅牢さを感じさせる。おまけに頭部にはツノ型センサーが冠のように生えていた。


 あのサイズを操るには相当量のマナが必要だろう。一体誰の機体だ?


『リベンジの時を心待ちにしていたぞ、アベノ! 今ここで雪辱を晴らさせてもらおう!』


 オープンチャットから轟いたのは傲慢そうな聞き覚えのある声。


「その声…『暴君』とかいう二つ名の?」

『名前すら覚えられていなかったとは、どこまでも苔にしてくれる…。だが、改めて名乗ろう。俺はゴウ=ノレクス。そしてこの機体は〈オウノカサネ〉。いざ勝負だ!』


 転入初日のことを根に持って再戦しに来たわけか。


 うーん、面倒だけど、ここで倒しておかないと後で突っかかられても余計にしんどそうである。


『ゴウはん言うたかな。悪いけどこれはチーム戦、ウチらも混ぜてもらうで!』

『二人は私が守るよ〜』

『構わん。いかなる相手が来ようと捩じ伏せ、破壊する。それが俺の流儀だからなあ!』


 機体全身から強烈なマナのプレッシャーを放出して臨戦態勢を取るゴウの〈オウノカサネ〉。


 対するこちらの三機も武装を展開し応戦の構え。


 それじゃあ、強敵相手に今のチーム力を試しましょうか!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る