第2話

———主人公が転移した同時刻の天界———。


「おい!———ッ様がいらっしゃらないぞ!」


「な、なに!?またいらっしゃらないのか!?毎度毎度、お付きの者も付けずにどこへ…!」


「あぁ、まったくだ。あの御方はご自身の立場を分かっておられるのか…」


「いい、私が探してくる。どうせ目星はつく」


「おお…!あの御方の弟子であり、御子息でもあられるあなた様なら…!!」


「フンッ」


父上に媚を売りたいだけの矮小な神どもめ。


絢爛な衣裳を翻し、父のもとへ向かう。



…………………………



「父上、またここにおられましたか…」


「げ、げぇ!もうみつかってしまった…。ディオよ…、勘弁してくれぬか!?わしゃこれからホリデーロードショーの魔女の宅配便を見なければならないんじゃ!」


「録画すれば宜しいでしょうに…。ほら、行きますよ。皆、既に着席しております」


「い、イヤじゃあ!リアタイでみたいんじゃあ!」


「ああもう!」


「グェッ」


我慢ならず首根っこを掴んで会議場へ向かう。


まったく…皆の前ではいつも威厳に満ちている父上だというのに、これでは駄々を捏ねる幼子ではないか。


いつも威厳とともに父上から凄まじく溢れる神気オーラも今となっては…


神気オーラ


………おかしい。


全く感じぬ。


神気オーラとは、気配や生命力のようなもの。本人の体調ですら変化する繊細なものであるが、全く感じなくなるということはない。


だからおかしいのだ。



「…父上、神気オーラが全く感じませぬが、もう会議場へ着きます。切り替えていただけないと…」


「…………あぁ、そうじゃの」




[数分後]




「…父上、ですから神気オーラが…」


刹那、父上の手の甲が見えた。


そこにはいつもあるはずの"宝雷"と"王の次元"が両の手の甲にはなく———。


「父上ッ!!これはどういうことです!?いつもこの手の甲にある"宝雷"と"王の次元"がなぜ!?」


「あぁ…………あげた」


「あげた!?」


馬鹿な!?



アレは譲渡できるようなモノではないはず!



たとえ譲渡できたとしても不適格者であれば即座に体が破裂するほど父上の祝福は強力なものだ!


そしてそれを私も知らぬ第三者に…。父上の真意が全く分からない。


色々考えることは山積みであるが…


とにかくまずい。非常にまずい。


まず父上の力が衰えたと知ると奴ら、邪神派の一派がすぐに動き出す。


奴らは必ず弱みにつけ込んでここぞとばかりに勢力を拡大しようと暗躍するであろうからな。


神なら必ず持って生まれる神気オーラも今や全く感じぬ。


とにかく、今の父上はただのテレビ好きの老人に過ぎない。


どうすべきか…。


「ディオよ!わしがいくらテレビが好きだからと言ってそんなに褒めるでないわい!」


「全く褒めておりませぬが………っ父上!?私の心が読めるのですか!?」


「ああ、読めるぞ。だから言ったであろう。まぁ落ち着くのだ」


心を読んでいる!


力の大半は失えどなんとか主神クラスの力はあるのか!


さすがは父上。仰る通り、ここは私が落ち着くべきであろう。


「…ディオよ、会議場へ着く前にお前には話しておきたい。…正直、私は次の"神々の運命"ラグナロクには生き残れんと思うておる」


「何を馬鹿なっ!父上の力なくしてっ」


たる父上をなくして神々の運命ラグナロクを乗り越えられる筈がない!


「まぁ、落ち着くんじゃ。…天界が戦火に包まれる前にわしは1人の青年に託すことにした…。明確な理由と聞かれれば答えづらいんじゃが、なんだかわしの若い頃のように親近感な湧いての…馬鹿馬鹿しい話ではあるが信じてみてくれぬか?この通りじゃ」


「何をっ!?父上っ!頭を下げてはなりませぬ!仮にも創造神なのですよ!」


「この通りじゃ」


「………………ハァァァァアアア。とりあえず頭を上げてください、父上。納得はできませぬが、父上のご判断ですので口は挟みません。それより何か対策を考えましょう」


「おぉ、そうか!ところでそろそろホリデーロードショー始まるから…」


「駄目です、行きますよ」


「ぬぅーん!ケチケチ!」


はぁ…。


本当に事の重大さを分かっておられるのか…。



他の神々にも気づかれるのは時間の問題であろう。その時何と言われるか…。


酷い頭痛に見舞われながら会議場へ向かった。





————————————

作者的に山場だった回でした。次話以降は少しテンポ良くなります!

引き続き宜しくお願い致します!


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