本編 #終
オムライスの作り方。
用意するものはガーリックバター。鶏肉。白米。玉ねぎ。ケチャップ。卵。そして牛乳。
スマホを片手に再度確認しながら点呼し、ぴっぴと水で手を洗ってから料理に取り掛かる。
まず初めは玉ねぎ。上と下を切り落として簡単に皮を剥いたあと、包丁で四等分に切ってからその一片のみを使用して角切りにしていく。残りはサランラップで密閉して包んで保存。
続いて取り出した鶏肉は、一口サイズに。わたしが食べたいので少しだけ多めにしておく。
フライパンの上に少し奮発したガーリックバターを一切れ置き、火にかける間卵を溶いておくことにした。
「あっ」
いやなんでもないなんでもない。
少しまだ緊張しているせいで殻をボウルに落としてしまったけどなんでもない。
すぐに取り除いて卵は四つ。菜箸で白身を切るようにかき混ぜていく。
コツは底に押し当てて力強く上下に切ることらしいです。ネット情報。
……なにこれしんどい腕いたい……。
「ふう」
温まったフライパンに先ほど切った鶏肉を投入し、少し遅れて玉ねぎも。鶏肉に色がつき、玉ねぎが半透明になるまで炒めたら塩胡椒を振る。ケチャップを、ぎゅーっと絞るように入れていく。
木べらで軽く混ぜて、白米を投入した。切るようにして炒めていく。
美味しそうな匂いしてきた……。
上下に返す毎に出来上がっていくチキンライスを混ぜていき、ケチャップが全体に馴染んだところで一旦ボウルへと取り出した。
さーてこっからが問題だ。
さっと洗ったフライパンをペータータオルで拭いた後、同じくバター一切れ中火で一分。先ほど溶いた卵液を半分垂らしたらすぐに菜箸で八の字を描くようにかき混ぜ、フライパンに行き渡らせ、半熟状になったら火を止める。……ここ!
余熱で卵が固くなりすぎてしまうこともあるそうなので急いでチキンライスの半分の量をラグビーボールのような形でよそい、手前にフライパンを傾けて(わたしは全身を傾けて)向こう側から卵を破かないようにチキンライスに被せる。
あー! しんどい! 破けてるし!
お皿用意し忘れた! ここからは時間勝負なのに!
後はフライパンを傾け、滑らすようにお皿の中へ。その時チキンライスがこぼれないように注意する。わたしはもう手遅れです。
よそったオムライスがまだ熱いうちにペーパータオルで形を整え、完成。
これをもう一回。
「しんどい! つらい! ゔぁー!」
叔父さんが用事のために遠い場所にいてよかった。
◆ ◆ ◆
「おお、素敵じゃないですか」
ごはんの時間。
せめて見た目のいい方を叔父さんの方に提供すると、席につくやいなやじっくりと眺めるもので妙にドキドキとした。
「ケチャップはかけてくれないんですか?」
「……」
「……可愛げのない掛け方をしますね」
斜線でいいでしょもう。
つかれた。
「でも、とても愛らしいオムライスです」
「……もう」
外は相変わらずの雨。でも今この時間を、わたしと叔父さんは笑顔で向かい合って食卓を囲めている。
幸せだ。わたしがずっと欲しかったものだ。
叔父さんは、わたしを守ってくれる人なのだ。
「いただきます」
「いただきます」
仄暗い雨の日の夜の中。
民家の明かりが、確かにここにひとつあった。
【8000文字小説】雨と笑顔とオムライス。 環月紅人 @SoLuna0617
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