本編 #2
叔父さんの言った通り、今日は一日中雨の激しい日となった。
今朝からしとしとと冷たい雨があったけれど、正午にピークにどんよりとした雨模様が校庭を湿らせ、教室に湿気じみた仄暗さを漂わせる。
ザァーザァーと窓越しにくぐもった雨の音。
カチ、カチ。と耳から離れない時計の針。
ガリガリガリとみんなが鉛筆を走らせて。
「そこまで」
中間テストが終わった。
湿気にうねった髪をついいじりながら、鳴ったチャイムに答案用紙を前の子へ。
ふぅー……。
雨の日はどこか憂鬱な気分を隠せなくなる。とても集中しにくいし、今朝の叔父さんの無茶振りなんてあれば余計。
どっと疲れた気持ちで机に伏すと、ひんやりとした冷たさを感じた。
「どーお、いい感じ?」
「わるいかんじー」
なんてしていると、こちらに転校して以来一番仲良くしてくれている友人がわたしの目の前に来てぴらぴらと振っていた手のひらを受け取った。
そのままの流れで、ちょっとアルプス一万尺をするみたいにぶんぶんと動かされる。
「今日冷えてるねー、指先冷たっ」
「あっためてよう」
それなりに冷え性のわたしとは違い、友人はどっちかっていうとバカみたいな風の子なので手が温かい。ぬくぬくしている。
というよりもこの温もりは眠たいんじゃないかと疑うくらい。体温高すぎて、繋いだ両手をにぎにぎとして熱を頂く。
「ああああ奪われていくー」
「ていうかこんなことしてる場合じゃないんだって」
振り解いて。
放課後までにオムライスの作り方と材料も学ばなければ。
いくら作り方知らないと言っても叔父さんに下手なものを出したくないし、プライドが許さない。すっごくめんどくさいけど、意地になってまで美味しいオムライスを作りたいとちょっと思ってしまっているところもある。
「何調べてんの?」
オムライス。スペース。作り方。検索。
覗いてこようとする友人にしっしと追い払いながら初めて閲覧するレシピサイトでオムライスのレシピを探す。
――あー美味しそうなのいっぱいあるなあ!
なんだこれ。なんだこれ。簡単そうに見えてすごい難しそうじゃない? わたしに作れる気がしない。
ふわとろ? なにこの作り方。
ええ、めんどいめんどいやだやだやだ。
昔ながらのってやつもあるんだ、どっちがいいんだろ。
えー、叔父さんどういうのが好きなんだ?
いや、基本の普通のっぽいのでいいよね?
ていうかオムライスってこんなに色々あるの?
「隙あり!」
「あっ、ちょ!」
「ふんふん。ふんふん。なぁに、リサちー。彼氏でもできたの?」
「違うわボケ!」
かぁぁぁえぇぇぇせぇぇぇ!
グググと腕を握って拮抗しあう。
「そんなんじゃないから!」
まるで叔父さんの事を彼氏と言われてしまったみたいで、顔を真っ赤にして否定する。
そんなんじゃない!
もう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます