第22話 計画修正


 *異世界5日目:昼


 リリスが計画の修正をすると言い出して、話をする前に昼食にした。明太子パスタを早食いしてコアの前に戻った。


「それでどうするんだ?一から建国するって相当な手間だと思うけど?」


「はい。既にある国を乗っ取るより手間は掛かるでしょう。ですが手間を掛ける分こちらの思い通りに動かせますし、将来的な手間は少なくなると思います。」


「将来的?乗っ取った後にそんなに問題出るか?他所との戦争くらいじゃね?」


「いいえ、マスター。国を乗っ取るということはある程度その国の形態を引き継ぐ必要があります。政治形態や軍事形態、警察機構に身分制度までそれなりに制度を継承しないと暴動やストライキが起こるかもしれません。」


「あー、それまでは参政権があったのにそれを剥奪したら怒るってことか…。権力者の身分もそう簡単には奪えないと?」

(まぁ確かに暴動くらいにはなるかも。)


「そうです。もちろん暴動だろうと反乱だろうと鎮圧することは簡単ですが、手間であることは事実です。それにこの世界の都市では恐らく上下水道が整備されていないかもしれません。整備するにもどれだけの手間が掛かるか…。」


「…そういえばローマには下水があったけど、崩壊してからは道端に投げ捨てたりしてたんだっけ…。」

(あー、世界史でやったわ。)


「はい、もしかしたら整備されている可能性もありますが、人口増加で都市を拡張する際にはやはり手間が掛かると思います。」


「だったら一からこっちで作ろうってこと?確かに拡張も考慮して都市建設すれば将来は楽できるな。防衛用に入り組ませる必要も無いし。」


「その通りです。建設から整備、運営まで全てこちらでやっておけば後から来る移住者、商人なんかの意見は突っぱねられます。」


「確かにそうだな。わざわざ使いづらい都市国家乗っ取るより俺達用に作った方が楽だな。税金とかも他より安くすれば人も来るだろうし。」

(古代とか中世って税金どんくらいだっけ?)


「税金の他に教育、医療、娯楽なども整備しておけば移住希望者で溢れるかもしれませんね。」


「それと水田の整備だな。川から用水路引いて…、初めは指導が要るだろうけど2、3年したら農民に任せておけるだろうし。」


「はい、マスターも都市を新設する案で納得いただけますか?」


「うん、全然良いよ。むしろ都市建設なんてゲームみたいでいいね。」

(都市シミュレーションゲーの実況とか見てたし、まず必要なのは道路だろ?)


 そんなことを考えていたらリリスが最終的な計画案を提案してきた。


 *


「マスター、新都市建設の前に達成することとして、まず偵察を完了することです。これは大陸の地図情報を購入して、迅速に完了する手段もありますね。」

「2つ目は収入の確保です。SP兼瘴気用としてゴブリンを盆地内に放流し繁殖させましょう。稀に産まれるゴミを瘴気用に、ダンジョンの所属を外れ次第領域を拡張してSP取りに使いましょう。」


「あぁ、ゴブリンを繁殖させるのはいいけど、ハチ共に食われるでしょ?護衛兼包囲用に何か作ろう。」


「そうですね…。今手が空いてるヒュージスパイダーともう3体で包囲しましょうか。」


「包囲にはウルフを使うって話してあったけど、護衛には流石に役不足か?」


「流石に厳しいかと。針が刺さらない防御と上空に攻撃する手段が無いとあまり役には立たないと思います。」


「防御か…。毛皮か鱗?鱗なら蛇系だよな、ドラゴンは過剰だし。」


「蛇なら3首ヒュドラ辺りでしょうか?鱗は針を通さないですし、他の大蛇より手数もあります。炎も吐けるので上空攻撃も可能です。」


(そうか、他の蛇は首1つだから攻撃は1回1回なんだ。だったら3首の方が攻撃速度が速い分雑魚相手なら強そうだな。)

「おし、じゃあ3首ヒュドラ3体作るか。とりあえずはゴブ集落用に拡張しよう。ハチの巣までの道の先端でいいよな?14km出来てるやつ。」


「はい、そこを100m四方の10万MPで拡張しましょう。土地が足りなくなったらまた拡張し直しましょう。」


「それで餌は養殖したラットを与えるって言ってたけど、そいつらはどこで養殖すんの?」

(ビッグラットね…、ビッグって付くくらいだからデカいんだろうなぁ。)


「ビッグラットはダンジョン内で殖やすつもりです。ダンジョン内でなら食料は最低限で済みますし、1kg5DPの飼料を使おうと思っています。」


「そうか。ならラット用の部屋も作らないとな。」


「はい、マスターにしていただきたいことは、拡張とビッグラットを30体作ることです。ダンジョンの構成は私がやりますので、マスターは拡張をお願いします。」


「おけ、今4万ちょいのはずだからその分やっておくわ。」


 都市建設の前に安定した収入を得るための牧場経営が始まる。


 4万MP分領域拡張を終えた俺は、コア横のソファーで中世の都市国家についてネットで調べ始めた。


 ***


 異世界5日目:夕方


 ダンジョンの部屋の構築が終わったリリスにビッグラット30体の作成を頼まれ、600MPを消費したが、残っていた6万MP分の拡張も終わった。


「リリス、ビッグラットの世話役に何か作るか?まだちょい残ってるけど。」


「でしたらインプを。拷問官と兼任するのでまずは1体お願いします。」


「おけ、インプね…。」

 すぐ横のコアに手を伸ばす。


「コア、インプ1体を生成してくれ。生成場所はここでいい。」


 :9500MPを吸収します。手を離さないで下さい。…生成が完了しました。


 コアの横、ソファの端に赤い光が集まってインプを生成する。


 薄紫色の肌に蝙蝠の翼、尻尾を生やした150cmくらいの使い魔が現れた。


 目を開くとすぐに跪いたようで、ソファーから見えづらくなった。ギリギリ見える頭には前に聞いたように角は生えていなかった。


 観察しているとリリスが立ち上がり、インプに養殖でビッグラットの世話を命令される。俺に一礼してコアルームを出て行った。


「ではマスター、私はゴブリン共を送ってきますが、道具としてナイフを数本与えてもよろしいですか?」


「あー、それくらいならいいよ。ナイフと住処作るのに必要そうなものは与えていいよ。」


「はい、ではノコギリやスコップも与えようと思います。安物の鞄も必要ですね。では私は送ってきますので、マスターは出来れば寝る前にMPを消費してからお休みくださいませ。」


「おけおけ、頼んだぞー。」


 コアから鞄と道具類を購入したリリスがコアルームから出ていくのを見送った。


 *


 *異世界5日目:夜

 リリスを見送って夕食、シャワーを済ませた俺は、MPの使い道に悩んでいた。


(うーん、もう9万近く貯まってるから使わないで寝ると確実に溢れるし…。)


(ヒュドラ作るにも明日の方がいいし…。)


「あ、DPでいいか。部屋に道具に使ってるし、腐るもんでもないし。」


 コアに手を伸ばして触れた。

「コア、85000MPをDPに変換してくれ。」


 :85000MPを吸収します。手を離さないで下さい。…完了しました。


「うし、寝るか。」


 MPを無駄なく使い切ってから俺はベッドに入った。

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