第19話 属性付与
*異世界4日目:夜
ゴブリンを野生化させると言っても、ハチが迫っている今の状況で送り出しても狩られるだけだ。
夕食にビーフシチュー180DPを食べながらそんなことを考えていた。
(さっさと攻めてきて欲しいけど、蜂は夜になると飛べないんだっけ?昔蜂の巣駆除の番組で見た気がする。)
どうしても待ちの時間になってしまうので、色々と考え込んでいる。因みに魔力の操作は夜まで試してみたが諦めた。
(内臓を意識しろって言われたって無理です。こっちの世界の人間は産まれた時からあるから出来るだけだろ。後天的に増えた俺が出来なくても不思議じゃない。)
羨ましく思いながらもやることが無いので、タブレットを弄ることにする。
椅子に座ったままタブレットを点けようとしたところに、リリスが声を掛けてきた。
「マスター、川を下っていたスピードファルコンですが、海に辿り着きました。その川の周辺に人間の集落はありませんでした。」
自分でも確認しようと持っていたタブレットでマップを開いた。
この盆地の奥、エラキノ山から西に伸びていた髭の1本が、北から南に流れる川に沿って海まで伸びている。他のスピードファルコン達も西に飛び続けているがまだ目立った物を見つけていないようだ。
それに加えてダンジョンから南方向にもマップが伸びている。ロック鳥部隊だろう、まだ範囲が狭いけど少し待てば広がるはず。
「海か…、ってことはここは大陸の南部地域だな。東西どっちよりかは分からんけど。」
「はい、南のロック鳥部隊がすぐに海に当たるかもしれませんが、その時は北に飛ばしましょう。東のクロウ部隊がもし海を見つければ大陸での位置が分かりますね。」
「南か…。地球だとスパイスを思い浮かべるけどこっちはどうだ…?そもそも赤道がどこか分からんな。」
「そうですね、香辛料にする植物もこちらに生息しているか分かりません。もしあるなら魔力の影響で強くなっているとは思いますが…。」
「まずは探すしかないか…。はぁ、偵察待ちに襲撃待ち、待ってる間に修行が出来る訳でもないし…、めちゃくちゃ暇だー。」
「ハチの本隊は明日中には攻めてくると思われます。迎撃が終わったら瘴気集めの準備を始めましょう。今日はもうお休みになって明日に備えてください。」
「あぁ、そうするか。じゃあもう寝るわ、おやすみー。」
「お休みなさいませ、マスター。」
明日にはハチが攻めてくることを願って、ベッドに入った。
***
*異世界5日目:朝
朝起きて洗面台で顔を洗ってくるとリリスが挨拶してきた。
「マスター、おはようございます。そろそろMPが溢れる頃合いです。ロック鳥部隊をもう1つ増設しましょう。まだハチは動いていないのでチャンスです。」
どうやら昨日使い残した分と寝ている間の回復分で、もうMPが溢れる寸前らしい。
「おはよう、分かった。さっさと生成しちゃおう。飯はその後にするよ。」
コアの前まで移動して、右手を触れた。
「コア、ロック鳥1とクロウを30体、ロック鳥をリーダーにして大部屋に生成してくれ。」
:ロック鳥に命令権を付与します。126.000MPを吸収します。手を離さないで下さい。…生成が完了しました。
赤い光が大部屋方向に流れていくのも見ていると、
「マスター、私はロック鳥部隊をまた隠して送ってきますので、朝食を召し上がっていて下さい。出来るだけ早く戻ってきます。」
「おけ、いってらっしゃいー。」
コアルームから出て行くリリスを見送りながら、朝食にトーストとサラダを用意した。
*
食べ終わってDPショップを見ていると、リリスが帰ってきた。
「お、おかえりー。」
「ただいま戻りました。マスターは今何をされているんですか?」
「あー、この机と椅子の座り心地がちょっとな…。DPショップでもう少し良いのを買おうかと。」
「あ、そうですね。今はDPには余裕がありますし、よろしいかと思います。」
「おぅ、机と椅子はもう決めてて、今はソファーベッドを見てる。コアの横に置いて寝転がりながら見れるようにしたい。リリスも座れる方が楽だろ?」
(コアでしか操作出来ない時にずっと立ってるのダルいんだよな…。)
「ありがとうございます、助かります。」
「あとは…、特に無いな。コアルームの中は汚れないし、服も3着で着回せてるし。」
「服に関してはいずれ威厳ある服装にしましょうね、国家の上に立つ者はそれなりの格好をしなければなりません。」
「…分かった。それはその時にな?今はまだそれを用意する必要は無い、な?」
(威厳ある服ってなんだよ…?古代とか中世ってフリル付けたりするんだっけ?)
「はい、その時に着ていただけるのであれば問題有りません。マスターはあまり服装に頓着されませんから、私が決めます。」
「…はい。」
(服装の話は失敗だった…。コアルームでダラダラしてるのは見逃されてるっぽいな。外ではしっかりしろってことか。)
「マスター、今7万程MPがあるはずですが、それはどうされますか?監禁部屋を用意しますか?」
「あー、それはリリスの属性を増やそうと思ってる。リリスは今何の属性を持ってる?」
「それは私にも分かりません…。始原、悪魔、闇を持っているのは確定ですが、他は不明です。希少種と混沌種も悪魔と闇で進化可能になっていました。」
「眷属新生で確認するのもダメか…。」
(ステータスとか持ち物の確認は出来るのに、眷属は確認出来ないってバランス悪くないか?)
「魔法でも火、水、風、土、闇、氷、雷は初歩的なモノは扱えているので、光以外は持っているかもしれません。」
「お、じゃあ光付けとく?3万だしこれなら安いよ。」
「はい、ありがとうございます。では光の属性の付与をお願いします。」
「おけおけ、眷属強化だな。」
手に持っていたタブレットで眷属強化を押す。
_____
眷属強化
眷属強化
眷属権限強化
眷属属性付与
眷属新生
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(ん?属性付与に変わってる?)
「リリス?これ表示変わってるよな?」
「どうやら私達が属性、属性言っていたので改変したようですね。意外と柔軟みたいです。」
「まぁ分かりやすくなったってことで。」
操作を続けて、[光]を選択した。
_____
眷属属性付与
選択中:光
付与する眷属を選択して下さい。
ハイデーモン・希少種♀[リリス]
ガルム・神話近縁種♂[ロキ]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「あ、ロキも欲しがるかな?」
(リリスだけってのも不平等だろ、まぁ役割が違うのもあるけど…。)
「後で希望を聞けばよろしいのでは?ハティかスコルどちらかに成れるように属性を追加する必要がありますし。」
「そう?まぁとりあえず保留でいいか。」
ロキは相変わらずウルフズと一緒にコアルームに繋がる扉の前に転がっている。
とりあえずリリスに光を付けることにして、リリスを選択した。
:眷属属性付与を開始します。手を触れて下さい。
コアに触れる必要はあるらしい。コアの前に移動して右手を触れた。
:30000MPを吸収します。手を離さないで下さい。…付与が完了しました。
:【愉悦の邪神】様よりギフトが届きました。[実績:初めての属性付与]が届いています。ギフトを開封しますか?
「あ?実績?…急になんだゲームみたいに…、トロフィーでもくれるんか?…開封してくれ。」
:開封します。[眷属一覧アプリ]をインストールしました。
:[ダンジョントロフィー・銅]が保管庫に送られました。
「マジでトロフィーかよ…。あの邪神もしかしてゲームも好きなんか?」
「マスター、それより眷属一覧アプリの方が気になります。」
「あぁ、見てみるか。」
タブレットに新しく眷属一覧アプリが追加されている。
_____
眷属一覧
ハイデーモン・希少種♀[リリス]
ガルム・神話近縁種♂[ロキ]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(え?本当にただ一覧になるだけ?)
ただ一覧で表示するのかと思ったが、リリスの欄を押してみたら表示が変わった。
_____
眷属一覧
ハイデーモン・希少種♀[リリス]
悪魔属
保有属性
ランク?:始原・叡智(1)
ランク5:無し
ランク4:無し
ランク3:無し
ランク2:悪魔
ランク1:悪・闇・光
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「あ、詳細表示出来る。なんだよ、先に使わせてくれればいいのに…。」
「実績として送られて来るのなら他にも種類がありそうですね…。」
「それにどうやら私は闇属性以外の魔力属性は持っていなかったようです。どうして他の属性を扱えたのか…、考えられるのは始原か叡智のせいでしょうか?」
「まぁそのどっちかだろうな。ランクも?とかなってるし。それで何か変わったところは?闇と光が共存してるけど。」
「特に変わりありません。光は軽度の回復が使えるようになりますから、後で試しておきます。」
「回復手段を持ってるだけでかなり有利になるな。全属性の魔法を使って…、」
リリスが更に強化されたところに、コアからの警告が鳴り響いた。
:システムアラート。侵入者です。迎撃態勢に移行して下さい。
「本隊が来ましたね。それでは私は防衛に出ますので、マスターは決めていたソファーを購入して観戦なさっていて下さい。」
「おけおけ、じゃあよろしく!」
慌ただしく出て行くリリスを見送って、机と椅子、ソファーを購入する。ソファーをコアの真横に置いて、コアウィンドウを観戦用に呼び出した。
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