第18話 養殖計画
魔力を動かす感覚が分からず、初めての魔法にブレーキが掛かったところで、偵察部隊の増設とリリスの強化を優先することになった。
「じゃあロック鳥とクロウのMP貯まるまでリリスの属性何付けるか相談するか。」
「はい、まず聖、天、母ですが母は15万と安めながら聖と天は合わせて1000万です。現時点でこれを捻出するのは難しいです。SP換算でも100万なので、ハチのSP全てを費やしても足りません。」
「だよなぁ…。でもリリスに出来るだけ属性つけておけばお得なんだよな。」
「はい。そこで実験したいのがゴブリンの養殖です。自然回復のMPだけでは供給が足りません。どこからかエネルギーを賄う必要があります。」
「先程のハチとの戦闘で4体が死にましたが、SPは獲得出来ませんでした。ダンジョンで生み出された魔物はSPにならないと言うのは簡単ですが、ではどこからならSPが発生するのか?それを試してみたいと思います。」
「なるほど…。言いたいことは分かるけど、どうやってやる?ゴブリンを繁殖させるってことだろ?そもそもゴブリンはどう増える?」
「はい。この世界のゴブリンは低確率ですがメスゴブリンが産まれます。メスゴブリンは妊娠から10日で出産し、産まれた子は約30日で150cmの成人と変わらない大きさまで成長します。その後は長生きな個体で10年程度生きるようです。」
「早産、早熟、早世の3拍子揃った劣等種ですね。養殖には向いた特性ですが。」
「…ちょっと可哀想だけど、じゃああのソーサラーとかジェネラルは?あれもゴブリンと同じ扱いなのは変じゃね?」
「そうですね、確かに普通のゴブリンよりはマシでしょう。と言うのもゴブリンは個体による差が大きい種のようなのです。ゴブリンの両親からでもハイゴブリンという別種が産まれてきます。トンビが鷹を産むを種族単位で行っている奇妙な種です。」
「へぇー、まぁ確かにあれは別種と言われても納得出来る、」
「はい、ゴブリンの中から上位のハイゴブリンが低確率で誕生すると、今度はそのハイゴブリンが子を作ります。その産まれる子もハイゴブリンになり、少しずつハイゴブリンが増えてソーサラーやジェネラル、キングが誕生するようです。」
「なるほどね。じゃあどうやって実験する?SPが取れるかは殺してみないと確認出来ないけど。」
「今いる56体のゴブの内16体がメスでした。オス40とメス16をダンジョンの外で繁殖させます。ダンジョン産でも生殖能力はあるはずなのでそこは問題無いのですが、何世代目からダンジョンの所属から外れるのかを実験したいと思っています。」
「あー、野生判定されないとだからか。野生になったら殺せばSPに出来るな。」
「はい、バンバン世代交代させてダンジョンを知っている個体がいなくなれば、すぐに出来そうな気もするのですが…。」
自信が無さそうに言葉が詰まってしまった。
「どうした?何か気になること?」
「いつまでもダンジョンの所属になった場合無駄な出費になってしまうので…。」
「え?だからそれくらいはいいって。ゴブリンなんて1体500MPだろ?メスゴブリンが出るまではガチャだけど出たらすぐに増やせるじゃん。」
(やっぱりコストを気にするなぁ…。ゴブの時点でコストは最安なんだから気にしないでいいのに。)
「それはそうですが…。他の魔物に狩られたら水の泡ですし…。」
「なら周りに護衛兼包囲網としてウルフとか置いとくか?ウルフが野生化してもそれも問題無いし。」
「…それは考えていませんでした。なるほど、魔物なら脱走した個体もすぐ狩れますね。」
「それでそいつらの食べ物はどうする?この盆地は食べ物少ないんだろ?」
「それについては、ゴブリンより更に安いビッグラットを養殖して与えようと考えています。少ない餌でそれなりの大きさに育つようなので。」
「それに関連した相談なのですが、70万MPの
「あー、あれか。半径30mしか使えないみたいだけど、どう使うんだ?」
「あれはゴブリンの中でも劣った…、ザコを、野生化させる中で産まれたザコを拉致して使います。まず30mの円形の監禁部屋を用意して、その中心に瘴気装置を置いてザコをその部屋に監禁します。」
「まず最初に軽く拷問します。当然拷問官を恨みますが、これをへし折って従順にさせます。」
「従順になったところで部屋内でのみ自由を与えます。すると恐らくですが同族内で八つ当たりが始まります。それを理由に自由を取り上げて、ここに更に拷問を加えると部屋内の秩序はほぼ完成します。」
「うんうん、それで?」
(急に監禁の方法を説明し始めたぞ…。)
「拷問官に逆らうこともストレスを発散することも出来なくしたところで、椅子に縛り付け一切の自由を奪います。」
「ここまですると拷問官に向けていた恨みや憎しみが、諦めや後悔、自分の不運を呪うようになります。ここからが効率的に瘴気を集められる段階になると思われます。」
「そこまで時間はどれくらい掛かりそう?」
(バリバリに拷問する気やんけ…。)
「拷問官にインプを使えば…、インプ1体で10体担当なら3日程度かと。」
「3日か…。何か目的がある拷問じゃないし、心を折るには充分早いか。それでどれくらいの瘴気が採れそう?」
(最初はインプ3体で30体目標だな。半径30mの部屋ならかなり余裕あるし。)
「収集装置の性能も分かりませんし、元は死んだ時に発生するエネルギーです。初めは少ないかもしれません。ですが、続ける内に濃く、澱んでいくはずなのでいずれ回収出来ると思います。」
「それにしばらくして無気力になったところで、野生化させているゴブリンの生活を見せて嫉妬の感情も動かそうと思っています。」
「あー、だったら野生ゴブリンのせいで痛みがあるようにしてみるのはどう?野生にはボタンを押したらビッグラットが出て、監禁ゴブは痛みを与えられるみたいな?」
「それはいいですね、更に不味い食糧を食べさせて対比にするのも良さそうです!」
監禁してるゴブを追い詰める案が出てくる俺も俺だけど、嬉しそうに語ってるリリスもやっぱり悪魔なんだと思い知った。
*
「じゃあゴブリンの野生化と瘴気集め計画はこんなところか?いつから実行する?」
「まずロック鳥とクロウを送り出しましょう。ハチの本隊が来る前に出しておきたいです。」
「そうだな、ロック鳥を見られて撤退されてもめんどいし。」
コアまで移動して、右手を触れる。
「コア、ロック鳥1とクロウを30、大部屋に生成してくれ。」
:同系統種間の限定的命令権をロック鳥に付与しますか?
「あぁ、ロック鳥に付与。」
:ロック鳥に命令権を付与します。
:126.000MPを吸収します。手を離さないで下さい。……完了しました。
(コアから魔力を吸われてるのは分かるんだけど、これを動かすのがなぁ…。)
赤い光が大部屋に流れていくのを眺めながら、魔力の操作をしようとするが全く出来ない。
何とか出来ないものかと突っ立っていると、
「マスター、私はロック鳥がダンジョンから離れるまで隠して送ってきますので、しばらくゆっくりお休み下さい。」
リリスがロック鳥がハチ共に見つからないように送ってくるらしい。
「分かった。じゃあ護衛はロキに頼むからいってらっしゃい。」
「はい、少し距離を取ったら戻ってきます。」
魔力の操作スイッチが入った俺は、うんうん唸りながら、コアルームを出て行くリリスを見送った。
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