第17話 魔法と魔術
研究の必要性がイマイチ分からなかった俺は、魔法、魔術関連のことを教えてもらうことにした。
*
「まずは基本から。魔法と魔術の違いは過程が有るか、無いかです。と言うのも魔法はMPを消費して結果を発現させます。過程を省略して咄嗟の判断で即座に発動することが出来るので、戦闘には魔法を使うことが多いです。」
「一方で魔術は、過程が必要で手間が掛かります。魔法では必要無い魔術陣を構成する分時間が掛かって、戦闘では大規模な戦争でもない限り使うことは難しいです。準備が必要な分MPの消費が少ないですが、触媒を必要としたりと、費用が発生します。」
「うんうん、それでどっちの方が難しい?」
「圧倒的に魔術です。魔法はMPがあれば誰でも使えますが、魔術は個人で習得するのが困難です。習得も開発もそういった研究機関や国で集中的に育成しないと結果は出ないようです。」
「ん?魔法は誰でも使えるんか?」
「はい、魔法はMPがあれば誰でも使えます。魔法は体内のMPを消費して発動させますが、そこに難しい過程は存在していません。意志に宿るMPと体内のMPを消費して、結果だけを発現します。まぁ言うなれば力技なので、魔術と比べると燃費が悪いです。」
「あー、MPでゴリ押しってことか?」
「はい、魔法はMPゴリ押し、魔術は教育、金、時間と考えればよろしいかと。」
「なるはど…。それで魔法は誰でも使えて、魔術は独学じゃ難しい…と。」
(魔法が使えるのはいいね。MPはあるんだしどっかで練習しよう。)
「はい、それでマスター。私にインプットされた情報の中に、魔法陣や魔術陣が含まれていたのですが、どちらも発達していません。それが理由で研究員を作ることを提案しています。」
「ん?発達してないって…、まさか罠だったってこと⁉︎」
「罠かどうかは…、ただ発達の程度から見て人間が全く脅威ではないのが分かりました。人間の文明の指標としては役に立ちました。」
「そうか…、そんなに発達してないのか?」
「はい。魔法陣、魔法陣は魔法のMP消費を抑えるためのモノですが、これが発火と水生成の2種類。魔術陣は多少は研究が進んでいるのか、炎の壁を作り出したり、矢を吹き飛ばす突風を起こしたりと戦争に使いそうな魔術が開発されています。」
「ふーん、なら魔術の方は多少使えそうか。あと他に錬成陣と召喚陣だっけ?」
「はい、錬成陣は[抽出]と[合成]の陣がありました。まだ無駄があるとは思いますが、一応実用出来るようです。もう1つの召喚陣ですが、こちらはかなり出来が悪いです。私が元々知っている召喚陣の方が使えます。」
「じゃあ魔法陣と召喚陣を研究させる?何を研究するか知らんけど。」
「研究するのは主に魔法文字ですね。地球でもルーン文字がありましたが、こちらの世界にも[力ある文字]があるようです。それを発見して、陣に組み込んだり、触媒に刻み込んだりすると、効率良く魔法と魔術が発動出来ます。」
「研究させるのは魔法、魔術、錬成にしましょう。召喚はどこの世界の文字でも成立さえしていれば通用するので、私の悪魔文字で事足ります。」
「おけ、分かった。魔法と魔術はこの世界の文字で研究を進めよう。SPが貯まったらまずはエルフだな。」
「はい、時間が掛かるので少しでも早く始めましょう。」
「あぁ、それと話変わるけどさ。MPが9万まであと少しだけど、偵察はどうする?」
魔法関連の技術の説明を一通り受けた俺は、ひとまず横に置いて今後の偵察の話を持ち出した。
*
「ロック鳥の件ですね。私もマスターの意見に賛成します。ロック鳥にイーグルを狩らせてクロウを送り込めれば南北の偵察範囲を広げられます。それにロック鳥は輸送手段としても使えるので、腐らないですし。」
「輸送手段?ロック鳥ってサイズは?デカいってのは知ってるけど…。」
「翼を広げると15m程度で、体重は約200kg、積載は300kgまでなら無理なく載せられます。魔力の強化を身体の巨大化に回しているので、魔法は飛翔用の風魔法のみです。飛行速度は巡航で100、最高は300km程出せるようです。」
「マジか…、そんなデカかったのか!そんなにデカいなら余裕で3人は載せられそうだな!」
(15m!デカすぎてどれくらいかが分からん…。)
「はい、なので偵察が終わっても人員の輸送に使えます。風魔法は飛行の補助をメインに高空を飛べますし、体格に見合った体力で昼夜跳び続けられます。」
「へぇー、かなり使えそうだな。様子見て増やすのも考えておこうか。」
「はい、同系統種30体の同時生成でリーダーを設定出来るようなので、ロック鳥1にクロウ30でセット運用しましょう。」
「そうだな。なら貯まるまでまだ掛かるし、俺の魔法の訓練に付き合ってくれ。MPの回復を早める呼吸法とかも教えてほしい。」
「はい、お任せください。マスターの魔力量なら感覚を掴めばすぐですよ。」
ロック鳥の生成が決まったところで、魔法の訓練を開始することにした。
*
「ではマスター、MPについて詳しく学んでいきましょう。まずMPですが、世間一般的には[魔力]と呼ばれています。この世界では大なり小なり全ての生物が基本6属性のいずれかの魔力を持っています。」
「魔力は生物の魂から発生し、魔力器官を通して運用します。魔力器官は種によって異なり、角だったり身体の表皮にあったりと様々です。」
「そしてこの魔力器官が魔力を動かす時に必要になります。人間のマスターの場合は左肺の下辺りですね。そこに意識を集中して魔力を操作することが出来るようになれば魔法は発動します。」
「おけ、肺の下ね。」
左肺の下辺りに意識を集中させる…。集中、集中、集中…。
(意識を集中ってどうやるん?しかも内臓だろ?意識したところで分かるモノか?)
「…リリス先生、分かりません。今まで内臓に集中したことなんて無かったもので…。」
「…そうですか。うーん、確かに。人間が内臓を意識して認識しているかと聞かれたらしてないですよね。」
「内臓は勝手に動いてるものだし、それを自分の意思で動かすのも止めるのも無理…。」
どうしたものかと2人で唸っていると、レントゲンに臓器の成りかけが写り込んだことを思い出した。
「あ、今なら内臓スキャンすれば臓器写るんじゃね?それ見れば分かりやすいかも…。」
「スキャンする機器がありませんけど…。」
「そうなんだよなぁ…。あとは透視とか?」
「マスター自身で見なければ意味がないかと。」
その通りで、俺が見ないと意味が無いんだ。まぁ見たところで動かせない可能性の方が高いんだけど。
そんな俺たちを見ていたんだろうタイミングで、
:【愉悦の邪神】様よりメッセージが届きました。
またか。まぁこのタイミングだと何かアドバイスをくれるんだろう。一応そういうことは教えてくれるから…。
「…再生してくれ。」
:メッセージを再生します。『魔力器官を認識することが難しいなら、再誕するのが早い。再誕は身体の感覚から魂まで全てを最適化出来る。』
メッセージを削除しますか?
「いや、いい。待機モード。」
「マスター、どうしましょう?再誕するのであれば私も出来るだけ強化していただきたいのですが。」
「そうなんだよなぁ…。」
(今のMP消費が、周辺の偵察、領域の拡張、眷属強化ってところか?偵察は早めに出せばその分成果が上がるから優先するべきだな。)
(拡張は…まぁ止まってもいいか。強化はリリスの属性付与…、これは増やせば俺にも恩恵があるし偵察の次に優先だな。)
「偵察部隊を飛ばして、リリスの強化だな。拡張は止まってもしゃーない。」
ハチの巣攻略の前に足踏みすることになるけど、どうせ今は潜伏して力を貯める段階だ。危険がある訳でも無駄にしている訳でもないし、ゆっくりやっていくことにしよう。
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