第8話 再誕?


*異世界生活2日目

 やや強引に寝かしつけられた翌朝、朝食のサラダとシュガートースト80DPを摂らされ、シャワーを浴びせられた。

(急に世話焼きになって、どうしたんだろ?健康に気を遣ってくれてるのは分かるんだけど…。)


 シャワールームに付属していたバスタオルで、髪を拭きながら出てくると、

「マスター、こちらにお掛けください。お休みの間の報告がございます。」


 今度は寝ていた時の報告らしい。素直に椅子に座ると、タブレットを差し出された。


「まずは偵察の報告ですが、クロウ10体の偵察によりダンジョン周辺の半径30kmのマップが出来ました。それとスピードファルコン2体は、エラキノ山脈に沿って盆地の外周全ての偵察を終えています。今はエラキノ山の近辺を偵察しているようです。」


 マップを見てみると、ダンジョンの周囲とそこから伸びる山脈沿いの円形に地図が出来ていた。


「もう西の端まで着いてるのか、速ぇな。それでこの盆地のサイズはどのくらい?」


「概算ですが、東端から西端まで約200km、北端から南端までが約100kmで約2万㎢になります。」


「面積聞いてもピンとこないけど、縦100の横200か…。横は東京から静岡くらい?結構あるなー。」


「マスター、そこで次のスピードファルコンを生成していただきたいのです。マスターは7時間程眠ってましたので、昨夜使い残した分と合わせるとMPが溢れて勿体ないです。」


 そう言われてステータスアプリを見てみる。


 _____

 西木圭人:ケイト・サイキ

 Age:22→0

 Lv:0→1


 MP:200.000/200.000

 筋力:14→7

 瞬発力:12→6

 持久力:13→6

 知力:14

 視力:5.0・5.0

 精力12


[ギフト]

 言語理解

 不老

 魔力眼

 悪性排除

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「ほんとだ、勿体ねぇ!スピードファルコン何匹くらいにする?」

 椅子を立ってコアに近づきながら、リリスと相談する。


「そうですね、どうやらスピードファルコンは巡航速度で時速200km、最高400km程で飛べるようなので、偵察兼連絡要員として確保しましょうか。10体追加でお願いします。」


「400km⁉︎めちゃくちゃ速ぇな…。」


「普通の水平飛行時でも出せるようです。私は150出せるかどうか…。マスターの選択はアタリでしたね。」


「マジか…リリスも充分速いと思うけど、流石は最速の鳥だな。10体14万…、まぁこの速さならどこでも活躍出来るだろうし、初期投資だよな。」


 コアに右手を触れて、

「コア、スピードファルコンを10体生成!」


 :140.000MPを吸収します。手を離さないで下さい。…生成が完了しました。


 コアの周りに小柄でも凄まじい速さを誇る猛禽類達が10体生み出された。


「リリス、どう振り分けよう?10体全部盆地の偵察に出す?」


「いえ、1体は西端にいる2匹の連絡役に飛ばしましょう。指示を終えてエラキノ山の近くをウロウロ飛んでいますが、一度戻らせて休憩させましょう。」


「そうか、じゃあスピードファルコン達!お前達はこの山の西に広がる盆地、森林を偵察してこい!そこのお前は西に見える高い山まで飛んで、近くにいる同類に一度ここに戻るように伝えろ。よし、行け!」


「リリス、クロウ達は休憩させなくていいのか?結構長い間出てるけど。」


「クロウ達は問題ありません。疲れたら勝手に休むように言ってあります。餌もそれなりにあるようで、問題無いようです。」


「そうか、なら問題ないか。」


「はい、次の報告は、昨夜あの方から告げられたのですが、眷属特殊能力付与に相乗効果のある属性を追加した、ようです。」


「…だからあんなに早口になってたのか?」


「はい…、例に挙げられた特殊能力がかなり強力で好ましいものだったので…。」


「ふーん?どんな力なん?」


「それは…、その、[ホーリー]、[ヘブン]、[マザー]属性です…。」


「ん?…その3つはどんな能力になる?軽くでいいから説明くれ。」


「はい、その前に6属性について説明します。ウルフやドラゴン種にもありましたが、基本的に魔力を持つ個体は、[火、水、風、土、光、闇]の魔力属性を持ちます。」

「使える使えないは別として、どんなに弱い個体でもこの魔力のどれかを持ちます。」

「その6属性を基本として、発展した属性があります。例えば火山に住む個体なら[火炎][溶岩]、毒沼なら[毒]などの属性を持つようになります。」


「これを前提に私が欲する[聖、天、母]ですが…、聖属性は闇、暗黒、深淵属性によく効く属性で、私が持つ闇属性の弱点を潰せる属性です。天属性は善の上位特性を得る属性で、これも悪魔に効く攻撃を弱めるための属性です。」

「最後に、母属性ですが…、これは母親になるメスの個体に付与すると、産まれる子どもが多くなったり、強くなる属性です。多産な種族に付けるとお得な属性です。」


「おけおけ、なるほど。リリスが弱点を潰せるのは良いことだと思うけど、[母]属性はちょっと…別ベクトルじゃね?」


「はい…。それで最初の属性の相乗効果が追加された話なのですが、[聖、天、母]の属性を持っていると、1度だけ神性存在を生み出すことが出来るようなのです。」


「はぁ、神性存在?神を生み出せるってこと?めちゃ強じゃん。」


「神性存在と言っても下級の天使だそうです。それでも母親の能力を模倣して生まれるので、かなり強い個体が生み出せるらしいのです。」


「天使か…、どれだけ強くなるかは分かんないけど、名前は強そうだな。」


「そこで…、私の1回はマスターに使って差し上げたいと思いまして、MPを私の強化に回していただけませんか?」


「え⁉︎俺を⁉︎…ごめん、また赤ちゃんからやり直すのはちょっと…。」


「あっ!いえ!生み出す時は一瞬らしいです!出産する訳ではなくて、肉体を新しく作り直すようです!」


「あ、なんだ。そういうこと?てっきりまた赤ちゃんとして生まれてくるのかと…。」

(びっくりした…、俺を出産したいって言い出したのかと思った。)


「紛らわしくて申し訳ありません。マスターを再誕させるには私が少しでも強くなってからの方が良いと考えました。それもマスターが人間を辞めるのを受け入れて下さる場合の話です。」


「うーん…。なんかデメリットあるか?天使と悪魔のハイブリッドになるってことでしょ?光と闇が合わさり最強に…。」


「姿が変わることでしょうか?翼は共通で生えると思いますが、悪魔寄りなら角、天使寄りなら天使の輪が付くかもしれません。」


「あー、別に姿は多少変わってもいいよ。ただ、天使の輪はちょっとガラじゃないな…」


「それは良かったです。天使の輪になるかはどうでしょう…?賭けになるかもしれません。[聖、天、母]の属性をいただいたら、他の属性も追加していただいてマスターを強く産み直せるようにと考えています。」


「そっか、親の能力を模倣出来るんだっけ?それならリリスが強くなると俺も最終的には強くなれるってことか。」


「はい、マスターには人間を辞めていただくことになりますので、今のうちに確認させていただきました。今残っている6万でヒュージスパイダーを作った後は私の強化をお願いします。」


「分かった。まぁ人間辞める覚悟ならしてたよ。不老なんて力も貰ってるしな。」


 女神と地球のカルト共を殺すためなら何だってやるって決めてるし、人間くらいいくらでも辞めてやる。角も翼もむしろカッコいいくらいだろ。


 それで復讐出来るなら何も問題は無い。

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