第5話 悪魔の生態


 ダンジョンのサブマスターとして、リリスを登録した俺は、リリスから悪魔系統の解説を受けることにした。

(偵察出してる間に、悪魔がどんな力があるか聞いておいた方が良い。悪魔系統なら悪魔本人から聞いた方が早いし。)


「じゃあ解説頼む。」


「はい、悪魔とは魔界に住む住人達の総称です。悪魔にも序列があり、悪魔の王族、貴族以外のその他諸々という身分では人間と大差ありません。違いを挙げるなら寿命が無いことと加齢で強くなることです。」

「悪魔は使い魔のインプから少しずつ大きくなってレッサーデーモンになります。この時角無しから角有りに成り、悪魔の魔法を使えるようになります。」

「角は位階が上がるにつれて立派になり、爵位級以上になると人の身体に角、翼、尻尾の姿になるのを好みます。」

「悪魔は魂が本体で、身体は魔力で作った仮初のものです。魂が傷付かなければ復活します。」

「マスターの生成可能な魔物で自分で存在を進化するのは悪魔系統だけかもしれません。」


「ふーん、でリリスはどれくらいで進化出来そう?爵位級まであと1段だよな?」


「その…分かりません。普通に悪魔としてなら千年単位で時間が掛かりますが…、眷属強化を受けられれば、大幅に時短出来るはずです。」


「悪魔は魂が強くなれば、進化すんの?」


「はい、悪魔は魂をコアに身体を魔力で生み出す魔力生命体です。一定の大きさに魂の魔力が増えれば、自分で昇格の魔法陣を組み上げて進化しようとします。悪魔は魂の強さ=魔力量です。」


「なるほど、ダンジョンの機能がその昇格の魔法陣とどんだけ違うか分からんな。」


「はい…。恐らくダンジョンの機能の方が効率の良い力だと思われるので、そこでどれだけ差が出るのか分かりません。」


「じゃあ試してみればいいんじゃね?眷属新生してみてさ。無理だったら無理って出るっしょ。」


 ダンジョンのシステムに若干くどいくらいに確認されるのは分かっているので、軽い気持ちで眷属新生を押した。


 _____

 眷属新生


 新生させる眷属を選択して下さい。


 ハイデーモン・希少種♀[リリス]




  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 リリスを選択する。


 _____

 新生させる種を選択して下さい。


 男爵級デーモン・希少種

 男爵級デーモン・混沌種

 男爵級デーモン・始祖種



  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「おっ?3種類出たけど…、どれが強くなれそう?」

 隣でタブレットを覗き込んでいたリリスに確認に顔を向ける。


「始祖種を!始祖種を押して下さい!」


 黒山羊頭にすごい剣幕で捲し立てられ、怯んだ俺は、

「はい、押します押します。」


 男爵級デーモンの始祖種を押した。


 _____

 男爵級デーモン・始祖種


 保有魔力:不足

 必須属性

 :始原…可

 :悪魔…可

 :闇…可


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「保有魔力が足りないってさ。」


「残念です…。ですが、始祖種になれるということはかなり嬉しいです。マスターのお力になれると思います。」


「始祖種だとなんか変わるんか?興奮してたけど…。」


「始祖種は始まりの個体です。自分の系統に連なる者達から、少しずつ力を徴収する権能を持ちます。召喚したり儀式で生み出したりして配下を増やせば際限なく強くなれます!悪魔の王にも匹敵する程に!」


「へぇーすごいね。誰でもそこまで強くなれんの?」


「いえ、恐らくですがこの[始原]という属性が必要なのでしょう。私が知る限りこんな属性は初めて聞きました。」


「…また邪神様のいたずらか?」


「そういう訳ではないかと。これも推測ですが、あの方が作られるモノは全てそういう力を持っていそうな予感がします。」


「…まぁいいか。別に害になるもんでもないし。」


「はい、私も少し先が見えました。…そろそろダンジョンの拡張を進めませんか?防衛向きの構造を組みましょう。」


 邪神について考え込んでいる俺を、ダンジョンの構築に促してくれた。


「…そうだな。コアまで一直線じゃ危ないよな。」


 そうしてダンジョンの構築を考える気になったところに、


 :使役個体による周辺地域、半径5kmの確認が完了しました。[周辺マップ]機能が解禁されました。


 コアからのマップ情報解禁を告げられた。


 リリスと顔を見合わせた俺は、早速タブレットでマップアプリを開いた。


 半径5kmはかなりの広さで、周囲の環境がなんとなく分かる。少しずつ黒い部分が塗り潰されているから、リアルタイム更新らしい。


 この山は南北に連なる山脈の一部で、西は山に囲まれた盆地になっているようだ。盆地と言っても端が見えるような小さな盆地ではないらしい。といっても実際に見えた訳ではなくて、それは地平線の向こうにも見える山脈があるからだ。この山は円形の山脈の東端部分にあるようだ。西の盆地は正しく陸の孤島になっている。


「クロウ達がどのくらいの高度を飛んでるか知らないけど、結構高い山脈ってことだよな?」


「はい、恐らくその山はエラキノ山でしょう。このエラキノ山脈の最も高い山です。標高は9609mあります。」


「すげぇな!エベレスト越えかよ。…ん?でもそれはインプット情報?この世界の現地人じゃ標高なんて測れないでしょ。」


「名前はインプット情報ですが、標高は…、サービスでしょうか?」


「確かにそんな高いなら俺が気になってたかもしれん。聞かれる前に教えといた感じかもな。」


(それにしても高いな…。エベレストより高いなんてどんだけ過酷な環境なんだろ?)


「この山からも見えるようですし、護衛の魔物を作ったら見に行きましょう?」


「あー、悪い。話が逸れてたな。」


 気を取り直してタブレットを見たが、表示されるマップには特に魔物の情報は載っていなかった。


「これは魔物がいないってこと?それとも雑魚だから表示してない?」


「どちらでもあるかと。例外もありますが、魔物は強い個体程大きくなります。その分発見されやすくなり、魔物がいない=強い魔物がいない、気づかない程小さな魔物、が成り立ちます。」


「なるほど、じゃあ護衛は後回しでいいのか。そうなると…、ハチの迎撃準備を進めるか。」


「はい、残りの9000DPで出来るだけ構築しましょう。」


 身に迫る危険は無いことが分かったので、最初の撃破目標のハチ系魔物の迎撃態勢を整えることにした。

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