第8話 状況の報告
4日8日14:15
『あんた、釈放されたって今どこにいるの?保険とか裁判とかどうなってるの?会社から連絡があったけど、会社に連絡はしたの?』
(おぉ、出てくる出てくる…いやまぁしょうがないか…。母さん達は巻き込まれただけだもんな。)
「それよりさ…迷惑かけてごめん。店だって休むことになって、
『それはいいのよ、私達だって最近あんまり休み取れて無かったし、美智瑠は昨日の夜からずっとケラケラ笑って動画見てるくらいだし。』
(…まぁ美智瑠は切り替え早いし、すぐに楽しむ方に流れるからそこまで心配はしてなかったけど…)
「友達からなんか言われたりとかしてねぇの?復帰してから孤立しないか?」
『さぁねぇ…昨日の夜車でホテル向かってる時に誰かと電話してたけど、いつも通りにケラケラ話してるだけだったわよ。』
(どんだけケラケラしてるんだよ…まぁ分かるけどね、いっつもリビング、トイレ、洗面所、風呂、自分の部屋のどこでもケラケラ笑ってるもんね。場所が変わっただけでいつものことか。)
「それならいいんだけど…爺さん婆さんは?別の部屋取ってんの?」
『うん。ツインの部屋で私達はトリプルだから別の階ね。』
『あんた、こっちのことより自分の心配しなさい。保険とかはどうなったの?警察の方から連絡はあったけど、あんまり詳しくは聞いてないの。』
(そうだよな…まずは、釈放された理由から話すか…。)
「保険とかの前に事故の経緯からね。昨日の21時くらいに〜………」
昨夜からの一連の流れを電話口で、時系列に沿って説明した。
***
4月8日14:50
「〜……だからこの後やることは、会社に連絡と、向こうの弁護士とのやり取りくらいだよ。保険は向こうの弁護士が請求も交渉もやるみたいだから、こっちは電話に出ればいいだけ。」
途中で無料通話に切り替えたりしつつ、これまでの流れを説明し終えた。
『そう、ならもう待ってればいいだけなのね?刑務所にも入らなくていいのね?』
「あぁ、大丈夫。裁判もまだまだ1ヶ月以上先だし、しばらくは連絡待ってるだけ。」
『良かった、ならあんたも少し身体を休めなさい。今回のこれはあんたが悪いとは思わない。どう考えたっておかしい話だし、今後のことは家に帰ってから家族会議ね。…ちょっと待って、美智瑠が代われって、』
『あーもしもし圭人?圭人のタブレット借りてるからー。そんじゃ。』
(…は?俺のタブレット?コイツどうやってパスワード突破した⁉︎)
「おい、待て!お前どうやってパスワード抜けたんだ!」
「えぇー?圭人が寝落ちしてる時に指紋登録していつでも使えるようにしておいただけだよぉー?」
(くっ、ウゼぇ…!たまに不自然にバッテリー減ってたのコイツのせいかよ!)
「じゃあ、ワタクシは海外ドラマを一気見するので、この辺りで失礼します。じゃ!」
ツー、ツー、と通話が一方的に切られた。
(……まぁいいか、家に置いてても月額料金無駄になるだけだし、どっちにしろ俺は取りに戻れなかったんだし。)
とりあえずは、家族と連絡が取れたことでよしとする。
(次は会社か…もうかなり迷惑かけてるから電話するのも気が重いよ…)
入社時に教えられた、営業所の番号に恐る恐る電話をかけた。
***
4月8日15:05
『はい、お疲れ様です。○○○○株式会社東京営業所です。』
「お疲れ様です。私、東京営業所所属の西木圭人と申します。今回の私の事故に関して、報告と相談したいことがあるのですが…対応出来る方はいらっしゃいますか?」
(こんな感じでいいのかな?初日だったからなぁ…研修してくれた人はいたけど、上司とかそういう感じじゃなかったし。)
『あ、西木さん?今担当の者に繋ぎますので少々お待ちください。』
と全く驚かれず、スムーズに取り次ぎされた。
『もしもし、電話代わりました、事故担当の原田です。西木さん怪我とか大丈夫ですか?首とかどうです?』
「今回は大変なご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。怪我については特にありません。首もムチ打ちも無く普段と変わりありません。」
『そうですか、怪我が無くて良かったです。それと今回の件は…今までにうちでも何件かは事故もありましたけど、今回ほど不自然な事故は無かったし、仕方ないですよ。』
「はい、ありがとうございます。そう言っていただけると、救われます。」
『それで報告と相談とのことでしたが、報告とは?事故に関しては現場にも行きましたし、警察に協力もしてるので大体知っていますよ?』
(あっ、そうか…じゃあ情報はいらんか。あとは…釈放されましたってくらい?)
「報告は、無罪で釈放されたことと、民事は警察の見解だと起こされないかもということです。」
『民事が起こされない?それならそれでいいですけど…。相談と言うのは?』
「それはその…今回の件でトラックに乗るのが、少し怖くなってしまいまして…、事故も起こしてしまったので、退職したいと考えてます。」
(続けたいって言ってもどうせ無理だろうし、揉める前にさっさと辞めた方が楽でしょ。)
(まぁ実際は、どうでもよくなってきたってのが1番なんだけどね。)
『あー、そう…ですよね。そりゃ仕方ないか。分かりました。退職の方向で進めておきます。西木さんはうちに来る前は派遣で1年やってたと聞いてるので、失業保険の手続きもおすすめしておきます。』
「お手数お掛けして申し訳ありませんが、よろしくお願いします。」
『退職手続きはこちらでやっておきますんで、1週間くらいで自宅…に諸々の書類は送っておきます。家に帰れたらでいいので確認して下さい。』
「はい、本当に短い間でしたが、大変お世話になりました。それでは失礼致します。」
『はい、はい、身体に気を付けて、失礼致します。』
電話を切って、一息ついた。
(ふぅー、これでこちらからやらないといけないことは終わったか…あとは全部連絡が来るのを待つだけだ。)
ベッドにスマホを投げ出し、ボフッと身体も倒れこんだ。今日もまた朝から濃い出来事ばかりで、疲れていたのか気絶するように眠りについた。
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