1章現代 地球編
第1話 留置場
留置場に入ることになった俺は、持っていた財布とスマホを預けた後、貸出の服に着替えさせられ、誰も入っていない房に入れられた。基本は複数人の部屋らしいけど、消灯時刻を過ぎてるから1人部屋に入れるらしい。留置所の規則なんて知らないけれど、少しの間でも1人になれるのは有難かった。
とりあえずの規則として、消灯時刻は21時で、起床は7時らしい。消灯時刻をもう過ぎているから早く眠るように指示された。
案内の警察官がいなくなっても、事故直後で気持ちが落ち着かなくてすぐに眠れるはずもなく、悶々と今後のことを考え続けていた。
(今更だけど、積荷はどうなってんだろう…保険に入ってるって聞いたけど、保険降りるのかな…逮捕された後ってどうなるんだ…ドラマでよく見る取り調べ受けたり、弁護士を頼むんだろうけど…)
そこまで考えたところで、家族の誰にも連絡をしていないことに気付いた。
(うわぁ!最悪や!スマホ預ける前に電話かけさせて貰えばよかった!誰も知らなきゃ弁護士だって探してくれねぇじゃん!)
会社か警察から家族の元に連絡が行くことを祈りながら、今後の取り調べや裁判のことやら色々と考えている内に、いつの間にか眠りについていた。
*****
4月8日?時?分
翌日の朝、ふと目を覚ますと昨夜と同じ明るさの寝るには少し明るいくらいの照明が目に入った。気分が昂っていてもやはり疲れがあったらしく、いつ頃寝たのか覚えていない。
寝起きの頭でまた色々考え始めた時、電気が明るくなったので、今がちょうど起床時刻らしい。とりあえず布団を畳んで待っていると、警察官が2人やってきて規則を口頭で説明された。朝は7時起床で8〜9時に朝食9〜12時に取り調べがあり、12〜13時に昼食、13〜18時までまた取り調べがあり、18〜19時に夕食だそうだ。その後は20時30分まで自由時間があって、30分で就寝準備をして21時に消灯らしい。この取り調べの時間は、実況見分に呼ばれることで多少変動したり、調書を取り終われば、待機の時間になるらしい。
その他風呂は4日に1回だったり日用品の購入だったりで少しお金がかかるといったことも説明された。そのお金は預けてある財布から引かれていくらしい。食事は近隣の弁当屋の仕出し弁当を頼んでいて、自腹なら追加で頼めるらしい。
ひとまずは保留にしておいて、先に家族に連絡する事と、弁護士を付けて貰えるようにお願いした。
その後は朝食まで何もすることが無かったので、少し筋トレをして時間まで待っていた。
やっと8時になり渡された弁当は、派遣の仕事先でよく見た400円くらいの仕出し弁当によく似ていた。地域の付き合いで仕方なく取っているとその会社の人は笑っていたが、これはなんだか美味しそうに見える。不思議に思っていると、お腹が鳴り出して、そういえば昨日は夕食をまともに食べていなかったことを思い出した。
空腹と早食い気質が合わさって、ものの5分程で食べ終わった俺は、物足りなさを感じつつ、紙コップに入れられたお茶を飲んでいた。
食後にゆっくりしていると、2人の30代くらいの警察官を引き連れて、見るからに偉そうな50代くらいの男性警察官がやって来た。その男性は髪が白髪混じりになっていて老けて見えるけれど、身体は横の30代くらいの警察官より日本人離れした体格の軍人のような人だった。
隣の30代くらいの警察官の方から「食事はもう終わりましたか?」と声をかけてきたので、
「はい、もう食べ終わりました。」と答えた。
すると軍人風警察官が、どこからかバインダーを取り出して話しかけてきた。
「あなたが
「はい、西木圭人です。」
「本来であれば9時まで朝食の時間ということになっているのですが、出来るだけ早急に確認したいことがありましてね。まだ8時半過ぎなんですけど、今から聴取を始めてもよろしいですかね?」と腕時計をチラッと見ながら問いかけてきた。
(こういうのって出来るだけ協力的な方が良いんだよな…反省してる感じを出した方が絶対受ける印象も変わるはず…!)と一瞬で計算した俺は、
「はい、今からで問題ありません。」と返した。
それに対して、「良かった、では早速取り調べ室に向かいましょう。」「では、私は先に行って待っている。」と言うとサッサと歩いて行ってしまった。
(えぇ…一緒に行くんじゃないんだ…)と驚いていると、
先程声をかけてきた方じゃないもう1人から「41番、早く出てこい。」と指示された。
41番というのは俺のサンダルに振られた番号で、これがこの留置場内での俺の呼び名らしい。流石に少しムッとしたので返事をしないで出ていったのに、2人共何とも思ってなさそうな顔をしていた。
何も言わずに、前後で俺を挟むと歩き出したので、それに付いていく。
(なるほどね、返事は返ってこないのが普通ってことか〜流石は留置場って感じ。)
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