SG戦争

奈良 敦

第1話 SG戦争

 1日の終わりに読書をしている鈴山拓也は何か台所から何か小さい音がするのを聞いた。

今なにか音がしたが、まあ気にせずに最近ハマっている池波正太郎の「映画を見ると得をする」を読んでいた。


 同じ姿勢で読んでいたため、本を閉じて首をゆっくりと首を周す。もう寝ようかと思っていた。

 すると、下を向いた時に何か黒いものが一瞬猛スピードで動いたのが見えた。

 何か見えたなと思っていると、こっちに向かってきた。結構大きなゴキブリだった。

 鈴山は驚き、その場から動く事ができなかった。だが頭の中にすぐに退治しないといけないという考えが浮かんだ。

 ゴキブリを殺すスプレーなどもってはいない。だが、直接触って窓の外に逃すのも抵抗がある。

 部屋にウォーターサーバー用のプラスチック製のコップがあった。よし、コップを逆さまににしてそのままゴキブリを閉じ込めよう。そしてそのまま放置していれば、餓死するだろう。そう考えた結果、右手にプラスチック製の紙コップを持ったままゴキブリを探す。

 鈴山は自分の大切な時間を邪魔してきたゴキブリを決して許せない、これは自分に対する攻撃だと決めつけ必ず殺してやると決めた。

 だが、鈴山は大の虫嫌いでゴキブリが自分の手や足や顔に飛んでくるんじゃないか。そんなことを考えていると、少し体に汗をかいてきた。

 後方の壁でなにか音がした。見てみると壁にゴキブリがついている。いざその姿を見るとどうすればいいのかわからない。床の場合、コップを逆さまにしてそのまま降ろせばいいのだが。どうするか考えていると、ゴキブリが壁を猛スピードで走る。よくこんな速いスピードで走れるなと感心しているとゴキブリはダンボール箱の裏に行ってしまった。

 鈴山の部屋にはダンボール箱が3箱部屋の隅にまとめて置いてあり、3箱に今まで読んだ本が入っていた。

 ダンボールを動かすのは体力的にキツイしここはやつが姿を現すのを待とう。

 そうしているうちに午前1時になってしまった。今日も仕事で6時に起きないといけないのに寝られない。

 もうゴキブリはどこかに行ってしまったのか、姿を表さず鈴山もだんだん眠くなってきていた。

 「くそ、早く寝ないといけないのにどこに行ったんだあの野郎。」

 イライラしながら独り言をつぶやいていた。

 だが、ゴキブリはそのまま姿を現す事なく、仕事の事もあり鈴山は布団に入った。

 翌日、部屋中を見渡す。ゴキブリはいない。

  朝からあいつを見たくないし、早く家を出よう。そう思いながら鈴山は急いでスーツに着替え、会社に向かった。


 仕事終わり、マツモトキヨシでゴキブリを

殺すスプレーを買った。

 狭い隙間などにも使えるノズル付きだ。

 家に着くとすぐにノズルをつける。

 「よし、どっからでも来い。」

 1人でつぶやくと、前方の本棚の横にゴキブリがピタッとくっついていた。早速スプレーを噴射する。ゴキブリは本棚と壁の間に落ちていった。トドメの一撃とばかりに細い隙間にスプレーを5秒間噴射する。

 換気のため窓を開け、スマホのライトで

隙間を照らす。そこにはゴキブリが仰向けで横たわっていた。

 これで鈴山とゴキブリの戦いが終わった。

 鈴山は土日に部屋を掃除しようと決めた。

 

          完

 

 

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