第17話第三章 超古代兵器(アヴァター)の目覚め ~僕(しもべ)を探すのも、なかなかどうして楽じゃないという話~ その3 探索
マツリ先輩は、少し離れた木陰に行って、スマホで誰かに連絡を始めた。
それから、30分弱。
なんと、三人分の新しいセキュリティーカードと白衣が手に入った!
いったい、何をどうしたんだろう?
「お姉さま、仕方ないこととは言っても、『
「この服やカードがあれば、正式にあの研究棟へ入れます。マリちゃんが気にすることは、ございませんわ。研究棟には高レベルの呪術対策まで施されていますから、準備もなしに忍び込むことはかなり難しいでしょう。『
「えぇ、お姉さまの言う通りです。あの『
二人して、意味ありげに俺の方をチラリと見るので、なんとなく不安になってくる。
会話の内容から察するに、要するに、問題のある相手に相談して白衣やセキュリティーカードなんかを借り出したってことか?
「さて、少し時間を取られましたけど、用意はできましたわね。ここで余計な時間をかけて警備の方に怪しまれなどしたら、いろいろと面倒ですわ。早く中に入ってしまいますわよ!」
なんだか、いいようにまとめられてしまった気がするけど、ここは言うとおりにするしかない!
「お姉さま、行きましょう!」
……マリちゃん、俺のことをワザと無視してないか?
セキュリティーカードをかざし、これまたどうやって手に入れたのか分からないパスワードを入力する。
拍子抜けするぐらい簡単に、研究棟のロックが解除された。
ピーン、と明るい音を立てて、自動扉が開く。
マツリ先輩もマリちゃんも、何食わぬ顔で中に入っていく。
俺も、慌てて二人に続いた。
あの二人にひっぱられている形になってしまったけど、元をただせば俺自身の能力を調べるための行動だ。
何処となく後ろめたい気がするけれど……、ここまで来てしまったら、俺も覚悟を決めないといけない!
研究棟の中は、よく空調が効いてひんやりしていてた。
とりあえず、ロビーを抜けて奥に続く廊下に向かう。
まっすぐに奥に続く廊下の両側に、等間隔に部屋が並んでいる。ガラス張りになった部屋の中には、何に使うか分からない
思わずキョロキョロと左右を見る俺に、マツリ先輩が小声で話しかけてきた。
「堂々としていてくだされば、大丈夫ですわ。あまりに外見が若いと怪しまれそうですので、
「橘先輩、オドオドしないでください!」
「あ、すみません。ところで、先輩。建物の中には入れましたが、これからどうしましょうか?」
「そうですわね。先ほど、何人もの研究者らしき人が、この建物に駆け込んでいくのが見えましたわ。何か大きなことが起こっているのは、間違いありませんわね。差し当たり、人の出入りの多いところに行ってみるのは、いかがかしら?」
「そうですね。どこかにこの建物の案内図でもないですか? 何か重要なものを研究するとしたら、地下の部屋とかでしょうか?」
テレビなんかだと、悪の秘密結社が大切なものを隠すのは、秘密の地下室なんかだと決まっている!
もちろん、俺の独断と偏見だけど。
その時、俺たちの後ろで靴音がした。
「すみません。ちょっと、宜しいですか?」
思わぬタイミングで、声をかけられた。
「あッ! は、はい!?」
あわてて振り返ると、ビシッとした制服に身を包んだ警備員がいた。
「すみませんが、カードの確認をさせて頂いて宜しいでしょうか?」
しまった。やはり俺がキョドって怪しく見えたのか?
でも、今持っているカードは、誰かから借り出したとはいえ正規のもののハズ。
とにかく、急いでカードを差し出す。
「あぁ、
うわァ!
この警備員、仕事熱心にもほどがある!
思わず、掌が汗ばんできた。
警備員の横でマツリ先輩とマリちゃんが、素早くと視線をかわすのが見えた。
……まさか、警備員さんを呪術で眠らせたり操ったりするのか?
俺は、どうする?
研究棟に入って早々に、とんでもない事になってきた!
「すみませんが、お名前と所属を教えてください」
「えっと、
準備してきた嘘の名前と所属、緊張したら話し方がぎこちなくなった!
何度も繰り返したハズなのに!
まずい!
思わず、汗のにじむ掌を握りしめる。
その時だった。
「あぁ、その方たちなら、大丈夫ですよ。私の関係者ですから」
俺の後ろから声がした。
聞き慣れない声だった。
あわてて振り返ると、いつの間に来ていたのか、一人の青年が立っていた。
ニコニコと感じの良い笑顔だけど、どことなく頼りない印象だ。
それよりもなによりも、白衣が絶望的に似合っていない。
どこからどう見ても、理系の研究者と言うよりは文系の学者という雰囲気、図書館なんかがすごく似合いそうだ。
「あ!
警備員が、青年を前にして明らかに緊張している。
この青年見かけに反してかなりのVIPみたいだ。だけど、……いったい、何者なんだ?
「いえいえ、お仕事ご苦労様です。ここから先は、私が案内しますので、警備にお戻りください」
警備員がいなくなるのを確認して、青年が俺たちの方を向き直る。
そして、思いがけないことを口にした!
「噂に名高い『
それを聞いて、もともと警戒していたマツリ先輩とミサキがさっと距離をとろうとする。
俺にもわかるぐらい、一瞬で緊張した空気になった!
「いえいえいえいえ!」
青年は、パタパタと手を振って、少し慌てた様子を見せた。
……でも、実際には全く
事を荒立てるつもりは、全くありませんよ! そうだ、これをどうぞ」
そう言って、俺に何かを手渡した。
「お探しの物は、地下の三階ですよ。では、また機会があれば」
そう言って、お辞儀をしながら立ち去って行った。
「なんだったんだ?」
主もかけない形で警備員の質問をくぐりぬけた。
急に緊張が解けて、大きなため息が出た。
「あの男の人、どなたでしょうか? なんだか、あからさまにアヤシイ人でしたけど……。お姉さまは、知りませんか?」
「いえ、
先輩たちの知り合いが助けてくれた、ってワケでもなさそうだ。
「そう言えば、これ、何ですかね?」
思い出したように、謎の青年から渡されたものを見る。
掌の上に置かれていたものは、――小さな折り紙だった。
「まぁ!」
「まさか!」
それを見た瞬間、マツリ先輩とマリちゃんも思わず声を上げた。
「その折り紙は、先ほどマリちゃんが施設の人の声を聞くために仕掛けたもの。音声をひろうための
あのマツリ先輩が珍しく明らかに驚いていた。
「
「でも、お姉さま。もしそうなら、何故こんなところに?」
二人には、思い当たる人がいるらしい。
でも、俺には誰のことか、まったく見当もつかない。
「先輩! それって、誰のことです?」
「……いえ、失礼いたしました。あれこれ考えても、今は確認しようがありませんわね。それよりも、言われた所に参りましょうか。……何かの罠かもしれませんが。いずれにせよ、敵地と思って備えた方が良さそうですわね」
あからさまに怪しい男性からのアドバイスだったけれども……。
まずは、行くしかない!
地下の三階!
そこには、衝撃の出会いが待っていた!
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