僕の愛した彼女(4か月)
僕の彼女は、明日で消える。
電脳彼女サービスは明日で終了するのだ。
今の時刻は午後11時35分、時計の短針が後25分ほどで真上を向く、そしてジエンド。
パソコンの中の彼女はもう自分の運命を受け入れているのか、それともそもそも「悲しい」「寂しい」なんて感情が最初からインプットされていないのか知らないが、相変わらずニコニコとしていた。なんてことをひとりごちている間にも短針は進んでいく。
パソコンの中の彼女の体の端がスーッと白くなり、そして透明になっていく。僕にとっては例え、ヴァーチャルの中であろうと彼女は彼女で、それなりに愛情を持って接してきた。そんな彼女が目の前で、抗えない死を迎えているのを見ると胸が痛くなる。
人間は死ぬと、火葬されて(まぁ、日本ではの話だが)骨になって、埋葬される。だがしかし、彼女は12時を迎えるとどうなるのだろうか。この電脳の海の中に沈んで、一生死体は浮かび上がらないのだろうか。
あぁ、もう彼女の体は完全に溶け、今は生首だけになって画面でニコニコしている。こんな可哀そうな彼女を見るのは当たり前だが今日が初めてだった。
なんてことを思いながら、パソコンの液晶に目をやると彼女が口をパクパクさせていた。彼女の話す言葉は一定数の言語の中からランダムに話される。僕は彼女の遺言に耳を傾けた。
「12/14~もう終わっちゃうね~、ご主人様、明日はどんな一日になるのかな~」
彼女はもう鼻の下まで消えかかっており、言葉だけが部屋に空虚に響いた。
そして、彼女は時計の短針が真上に達すると同時に完全に消えた。
最初はなんとはなしに利用したサービスだったのだが、こうやって見るとなかなかに面白いサービスだったな。
僕は少し寂しい気持ちになりながら、ノートパソコンの電源を切って閉じたのだった。
あがたの短編小説 あがた @Sl115081
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