虚ろな街

 猫のミーがいなくなったので、その日私は町に探しに出た。


 ミーは、私が小学校を卒業した日、どこからか「ミーミー」と鳴く声が聞こえ、探したところ桜の木の下のダンボールに捨てられていたところを拾ってからずっと一緒だ。


 ミーは、この変わりゆく世界の中で、いつも私に寄り添ってくれた。


 また、ミーは私が不安や心細い状況に置かれていたら、手や胸、鼻や口などあらゆるところへ接吻をしてくれる。それは私にとても安心感を与えてくれるのだ。


 ミーがいないと、それはそれは息苦しくなるので、ミーの行きそうなところへ直ぐ向かった。


 道路に出たが、電柱は倒れ、近所の外壁も崩れ、遠くに見えていたビルももう見えなくなっていた。


 頭上からはヘリが旋回しているのか、「バババババ」という不快な音が絶えず聞こえる。


 心臓が張り裂けそうな気持で、私は愛猫を探した。


 近所の人はすでに一人もおらず皆避難したらしい、ゴーストタウンと化した様にまた胸が苦しくなる。


 病気のミーを連れてこの町を脱出することは、難しいと思い家に留まったがそれは私のエゴだったのだろうか。


 なかば半狂乱になりながら町を駆けずり回る。


「ミーミー」


 そのとき、どこからかあの甘えた声が聞こえた気がした。


 ふと目をやると、丘の上にあの桜の木が見えた。


 急いで駆け上がり、木の根元を探し回るがミーはいなかった。


 丘の上から町を見下ろすと、ところどころから煙が上がりとても人の住める場所とは思えなかった。


 頭上からは、また不快な音が聞こえてきたので、私は逃げるようにその場を離れた。

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