この爪が食い込むほど
シリアルキラーが生まれる要因って何だと思いますか。
頭の中で、もう一人の自分がそういう。
私はすかさず、「幼少期の性的虐待などの、家庭環境。脳へのダメージ。あとは生まれ持っての破壊衝動、とか?」と返事した。
もう一人の私は「そう、特に幼いころのトラウマや虐待は人間の人格形成にとてつもない影響を及ぼします。そして君(私)は、小さいころに嫌な体験をしているね?」
その言葉に私は思わず眉をひそめた。
「昔のことは思い出したくないな・・・」
目の前の私が構わず続ける。
「思うに、人格形成には家庭環境がもっとも大事な要因だと思う。汚い言葉を使うなら、親ガチャかな。僕はね、ガンジーやマザー・テレサでも、ヘンリー・リー・ルーカスやアーサー・シャウクロスのような家庭環境や境遇で育てられたなら、なんのためらいも無く人を殺して見せると思うんだよ」
こいつはなんてことを言うのだ。私は思わず鼻白んだ。私の呆れた表情を無視して私はそのまま続ける。
「まぁ、だからな、僕の言いたいことは、こういうことだ。君はゴミダメのような家庭環境と、クソのような境遇に塗れて生きてきた。だから君がこうなったのも君のせいじゃない」
まわりくどい言い方にだんだん私はイライラし、「何が言いたいんだ」と声を荒げた。
「とどのつまり」
「とどのつまり?」
鸚鵡返しをする。
「君は悪くない」
そうだ、私は悪くない。すべては環境のせいだ。
私は女の上にのしかかり、首を絞めている手の力を強めながらそう言った。
薄暗い部屋の中、雑音を放っていたテレビから私を報道するニュースが流れ始めたので、舌打ちをしテレビを消した。
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