屍はただ動く
俺は、どうやら死んだらしい。
実感は全く湧かないが、死因はそこに転がっている死体(誰だっけ?こいつ)に殴られて、その衝撃で頭部が粉砕。
その衝撃は脳天まで達したらしい。....こいつ、モブキャラだと思ったらやばい奴だった。
では、何故今、俺という肉体は死を経験してもなお、生きているのかと言えば。
「お前、意外と運がいいんじゃないか?」
能天気に話している“実態のないお前の中のお前”という名前らしい。
「どう考えても、これピー(規制音)がピー(規制音+重要なネタバレ)からピー(規制音最大出力)したんだと思うんだが」
「.....やっぱり、ピー(規制音)に関しての事を言ったらダメな奴みたいだな」
「なぁ、お前の名前なんだっけ?」
(。´・ω・)ん?みたいな顔が目に浮かぶ。.....顔無いし実態も無いのに。
「あぁ、俺の名前か?普通にお前と同じ名前じy——」
「—却下」
「....だと思ったよ」
「よし!決めた。お前の名前は凍夜(とうや)だ」
「....悪くない」
お気に召したようで...何回も「凍夜」を連呼している。
して、重要なことを忘れていたが、あいつ(モブキャラ)以外の死体が無いのと、そして、あいつの取り巻きが居ないことにようやく焦点が向くようになった。
「なぁ、そういえばあの取り巻き達は何処に行ったんだ?」
「あいつらなら—」
何か言いかけたところでドアが開いた。
来たのは原田 正孝(はらだ まさたか)、見ると彼の服はボロボロになっていた。
「...終わったか」
ボロボロの服など気にしてないようで、俺についさっきまで何をしていたのかを話した。
聞けば、取り巻きたちと一緒に避難していて、揉めたらしい。
揉めた理由は分かっていたが俺の事だった。
しかし、連中は元々、この死体、前はなんかの偉いやつだったみたいだが、そいつの事を酷く嫌っていた。
だが、上下関係の都合上、どんなに嫌いな相手でも、命令されれば逆らうことが出来ないため、仕方なく発砲、そして、数名の命が亡くなったことで、すこし苛立っていたんだろう。彼が一番みじめだと思った。本人の前では言わないが、彼は、私情を捨てれないその甘さから、今回の惨状を招き、同僚や、自分の立場の信用を無くした哀れな刑事だと思った。
「—お前、こいつに殴られても死なないとは....大したもんだ」
こいつとは、ここに転がっている死体のことだ。
「.....こいつはな、逆らう相手には容赦なく殴って、多くの若ぇもんを病院送りにしてきた。......だけど、上の連中はそれを知っていて見逃すクソみてぇな連中だからよ。立場が弱い新人はどんどん生きづらくなるんよ」
TVでは教えない後ろ暗い部分を知って、俺は驚くことはなかった。
....ただ、俺は自分の信念を曲げるつもりはない。
死してもなお、この身体が動くのなら、有効に使ってやるよ。そう固く心の中で決めた。
彼は「ちょっと服を変えてくるよ」と言って出て行った。
「—ようやく、また一人になったか」
今まで黙っていた凍夜が急に話しかけてくる。
「なぁ、凍夜?」
(。´・ω・)ん?とまたそんな顔が浮かぶ。顔も実態も無いが。
俺は、彼に聞きたいことがあった。というよりも、今出てきた。
「俺は死んでいるのに、なんで生きているんだ?」
当たり前に話せるし、どこも痛くない。何故、死んだ人間が生き返ったのか、そして、凍夜の正体は一体なんなのか?と疑問を挙げれば数えきれない程出てきた。
「....そうだなぁ....。....こう言えばわかるかもな」
少し間が空いた後、彼はこう言った。
「—簡単に言うと、お前は不死身になったってことだ」
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