①上手さって何ですか?

■さてさて、文章の上手さと一口に申しましても、 千差万別でございます。そもそも文章には、小説以外にもいろいろございますから。物書きや小説家ごとに一家言あり、文章読本は多くの小説家が出しておりますね。それぞれの考える上手さはあるでしょうけれど、少なくとも以下の種類の上手さはあると、篁は考えます。


 ・広告文的な、人々の印象に残ったり想像を刺激する上手さ

 ・説明書的な、情報を誤解なく精確に読み手に伝える上手さ

 ・詩文的な、視覚的イメージや経験・記憶を刺激する上手さ

 ・詞文的な、リズムや口に心地よい語呂の良さを選ぶ上手さ

 ・落語的な、セリフの選択と各キャラ性を演じ分ける上手さ

 ・論文的な、ロジックの厳密さや記述ルールに沿った上手さ

 ・檄文的な、感情を揺さぶり読んだ人間の行動を促す上手さ

 ・小説的な、作品世界に引き込む語り口や人物描写の上手さ

 ・脚本的な、小説的な要素を時間軸に沿って構成する上手さ

 ・散文的な、上記の要素を過不足なく持った総合的な上手さ


アイデアの斬新さやユニークな視点は、文章の上手さとはまた違う概念ですので、除外します。これらは相互に、重なる部分も大きいです。例えば落語なら、情景が目に浮かぶ上手さは詩文的ですし、檄文は論文的なロジックの厳密さやキャッチコピー的な印象に残る上手さもないとダメでしょう。詩文や広告のキャッチコピーなどの要素など、雑多に含みますが。散文の上手さはさらに、以下の巧拙に分類できそうです。


 ・描写力

 ・解説力(理解力とセット)

 ・イメージ喚起力

 ・レトリック

 ・文体(識別記号)

 ・構成力(主観表現・時間表現)

 ・展開力(語り口)


描写力というと、正確な描写が正しいと思いこむ人がいます。はたしてそうでしょうか? 例えば唐の時代の詩人・李白の「白髪はくはつ三千丈 憂いによりてかくの如し長し」という、現実には絶対にありえない誇張された表現があります。三千丈は現代なら約9キロメートルだそうです。ギネスブックの世界記録でも、髪の毛の長さは8メートル弱だとか。しかしこのような誇張した表現のほうが、人の心に届くことはあります。四字熟語の「一日千秋(中国では一日三秋)」とかも、そうですね。絵画やイラストでも、写実的な方が難しいとか高級だとか、思い込んでる人が多いですが、そうではありません。ここら辺は個別に解説やってると切りがないので、割愛いたしますが。

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