第38話 全てが終わって
「我が神器よ。動いてくれ!」
ソロモン帝国の大賢者が叫んで、神器に魔力を注ぎ込んだ。反応を示さない神器、さすがに、それに絶望しかけた時、五星の印を刻み込んだ円形の、手のひらに乗るくらいの神器は輝き始めた。直ぐに、大いなる力を周囲から感じることができた。
「こ、これは…かつて伝説にあった、世界に散った108の豪傑の精霊、悪による危機が迫ったとき、救いに現れると…。おお、これは神の八部衆の波動、悪が世界を覆い尽くそうとした時、これを全滅する力を与えると記されていた…。伝説が現実に…。ああ、この神器を稼働させる正義の者とは私の役割だったのか、我々の勝ちだ!もう、お前に助けは来ないぞ。そこで、断末魔となって、それを見届けろ!」
「は?え~と?」
彼と彼をまもる兵士達他、さらに空から現れた数人の男女を前にして、ジャックは、突入した王宮の中を駆け巡っているうちにたどりついた、最奥の大広間で、唖然としていた。
「新手?お姉ちゃん達、大丈夫だろうか?結局、俺自身ではお姉ちゃん達や妹達を守れない…。いや、ここで頑張れば、少しでもお姉ちゃん達を助けられる?」
と彼が自分を取り戻しかける前に、彼の後ろに控えていた女、3人、は、
「い、今こそ、ジャック様のお役にたてることができる?」
「わ、私は、ジャック様とともに、ここで死んでも悔いはないわ。」
「ジャック様を救えるのは、今、私だけ…なのよね?」
3人は、向かってくる敵に、素早く立ち塞がった。
あの日の大勝利で、次々に加わる者が現れ、周辺地域でさらなる勝利を重ねることができた。が、相手方が本腰を入れてくると、明らかに不利な状態であることを実感することになった。
だが、ジャックが頭を抱えていた、その時、
「ジャックく~ん!」
「ジャックー!」
「お待たせ~、ジャック君!」
「ジャック君、寂しかったよ~!」
と現れたのは、真の勇者マリア達だった。
「ジャック様~!」
妹達だった。続いて次々と…。
マリア達が、距離を無効にしてしまう門を作りあげたのである。試行錯誤をし、膨大な魔力を使った挙げ句、作りあげたのである。他方で、ジャックの位置の把握、そして通信、意思疎通を試みていた。次第にはっきり、彼女達からの呼びかけの声、頭の中に響く声が聞き取れるようになり、少し前に会話もできるようになっていた。だから、彼の周囲にいる6人のことも、今、彼らが置かれている状況も分かっていた。
「後でゆ~くりと話しましょ~うね!」
「ま、まあ…とりあえず、戦おう、一緒に。」
「だから…将来のことは、その後ということにするから。」
「ちゃ~んと、ゆっくり話し合いましょうね、私達とジャック君のことを、後で!」
背筋が冷たくなったが、とりあえずホットしたジャックだった。そして、
「ジャックのためなら。」
という面々、さらにカント王子達も加わった。
マリア達を先頭に、形勢逆転、あっという間に、敵側の帝都に突入したところだった。
“お、お姉ちゃん達たす…な、何言っているんだ。ぼ、僕が何時かお姉ちゃん達を助けられる男になるんだと思ってきたんじゃないか!こんな体たらくなことでいいのか?”と自分を叱咤したジャックだっただったが、“でも、何をしたら?”と途惑った。が、直ぐに“あの8人の男女が八部衆?なんの力?念じている?力を~とか言って…もしかして、外の連中に力を与えていたりして…こいつらを消耗させれば、お姉ちゃん達の援護に…。”
「みんな!あの8人をいたぶり尽くす!そして、勇者マリア様達の援護をするぞ!僕に、命を預けてくれ!」
倒すとは言わない、いたぶると言っているのは、真面にやったら勝てないと言っているわけだが。
「はい!ジャック様!」
「もちろんです。ジャック様!」
「わかっています、ジャック様!
その姿は、マリア達の他全員が見て、聞いていた。
「お前たちを操る邪神の化身は、もう絶対絶命だ。そのあわれな姿を見るがいい!」
と大賢者が空に映し出していたからだ。まあ、マリア達は彼と意思は通じていたから、分かっていたが。
「ジャック君が、私達のために頑張ってくれている!」
「このちんちくりんの奴らを蹴散らして助けに行くぞ!」
「もう~、さすがは~ジャック君だわ!」
「ジャック君の頑張りにこたえて、1,000%の力で蹴散らして、殲滅するわよ!」
と言うマリア達。それが次々に感染して、カント王子達のところがまでくると、
「ジャック殿が、敵を追い詰めているぞ!遅れをとるな!ジャック殿を見殺しにしては末代までの恥 だぞ!」
「ジャックを犬死にさせるな!」
と戦意は否応なくヒートアップしていくばかりだった。
「クソっそー!」
「力をみんなに送るぞ!」
「こんな奴らを気にしないで!」
「そうよ、防御結界を破れるはずは、ないんだから!」
「お前ら、早くこいつら殺してしまえ!」
ジャックは、必死に襲いかかってくる兵士達の攻撃を防ぎながら、あらゆる方法で八部衆の防御結界を攻撃した。ほとんと効果はなかった。が、イライラさせる程度には、あったのだ。3人の、元ジャックと戦って、捕縛され、彼に、悪く言えば寝返った女騎士達はジャックを護って戦っていた。
「うわー!」
「ジャック様!」
何度目か分からなくなっていた。壁に壁に叩きつけられるジャック、それを見て、悲痛な叫びをあげる女騎士達。
「僕は、大丈夫です!」
と彼は起ち上がる。
外では、はっきりマリア達が優位に立っていた。彼が壁に叩きつけられ、炎に、冷気に包まれ、血を流すたびにその優位は高まっていた。が、マリア達以外は押されたりしている者達、崩れかける部隊もいるため、マリア達はそちらを助けたりせざるを得ない。だから、激戦は続き、まだ勝敗の様相は完全には分からなかった。
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