第29話 勇者様がいい様?

「フン。勇者様がいい様なさだな。こうなって見ると。単なる発育のいい女だな。」

 全裸の上、恥ずかしい格好で縛られ、猿轡、目隠しまでされた4人の女達が、ベットの上で股を広げられ、男達の視線に晒される状態で置かれていた。

「このままでも、じきに死ぬが、とどめを刺してやろうか?」

「おいおい、もったいないじゃないか、いい女だぜ。その前にいい思いをさせてやろうじゃないか?魔力も、力も、もうないんだろ?」

「何言ってる?あんなジャックなんかに、弄ばれた女なんか、汚らしいじゃないか?」

「まあ、やりたい奴はやっていいさ。その間、こいつらに罪状も伝えてやろう。」

 男達は、6人。結局、全員下半身を裸にして、女達のところに近付いた。

「転生した異世界の勇者の力を封じて、死に至らしめるクリプトンをつけたんだ。もう諦めることだ、しょせんは売女の、勇者マリア様達。いい気になっていた罰さ。」

 男達は、身動きのできない“勇者達”の体を弄び始めた。

 腰を動かしながら、彼女らの罪状を語っていた男の耳に、

「酷いわね。私達、被害者だったのよ。無理やりやられて…。それが、私達が誘って?私達が売春婦ですって?事実歪曲よ!」

「目の前に死にかけている人を見たら助けるでしょう?助けたら、秩序を乱した、助けていなかったから悪党?選択の余地もないじゃないの!」

「奴隷制って、私達が作ったわけじゃないでしょう?この世界の秩序を尊重して、奴隷の保護やら定めたんじゃない、ジャック君が!ジャック君がやったこと、悪いことなんかなかったわよ!秩序といったり、変えないからと言っては非難するのは矛盾してるよね?」

「あの山賊や野盗まがいの貴族や屑勇者を殺して何が悪いのよ?第一、注意したら、襲ってきたから、返り討ちにしただけで、正当防衛よ!」

「贅沢、搾取…?何時も、辞退者することの方が多かったわよ。あのくらいで、そんなこと言われたら、霞でも食っていろと言うことよ。あんた、やってみなさいよ!」

と女達の声が聞こえていた。

 ようやく振り返った男の目に、4人の美女が並んでいるのが映った。

「え?真の…勇者マリア様…達…。て?ここにいるのは?」

 猿轡と目隠しなどを慌てて取ると、視線は、定かになく、涎を流して、気も確かでない女の顔があった。

「え?どうしてお前が?」

 男達は、慌てた。弄んで、陵辱していたのは、自分の恋人だったり、仲間の女だったからだ。

「全く、こんな部数と間違われるなんて迷惑だよ。」

「何を見てたのかな?」

「早く、その豚女達を、満足させてあげなさいな。」

「ああ、このクリプトンね、何時の勇者の時の話しか分からないけどね、少なくとも私達には無効だから…。」

「ジャック君に注意されて対策は、取っていたけどね。」

「拍子抜けだったわ。」

「終わるまで待っててやるから、早くすませろよ。」

 男達が、半殺し以上になって、床に転がるのは、しばらく時間がかかった。

「やっぱりね。」

「クソ野郎!」

「ジャック君の言うとおり!」

「全くね。」

 ショクの陣営では、シュウが、使者から勇者マリア達のことりを、使者から報告を聞いたのは、その数日後だった。

「マリア達は、“助けてくれる者がいたから、助かった”といったのだな。」

 大きく頷いた使者を満足的に見つめた彼は、“ということはクリプトンが効いたわけなのだな。今後もつかえるということか?”

「マリア達は、ジャックの悪行については信じなかったのか?全く、女というものは。」

 典型的人間型上位魔族であり、人間としても、金髪の聡明そうな美丈夫としか見えない彼の表情は、苦悩の色が浮かんでいた。周囲は、それを心配そうに見つめていた。彼の聡明な頭脳は、主の功績を奪ったジャックという、つまらない屑男のことが、喉に突き刺さる刺のようになっていた。人間・亜人界、魔界での工作の多くは、上手くいった。多くの諸国、部族がショクの版図に事実上入った。だが、つまらない連合と勇者達は顕在だった。ジャックのせいである。何所までも邪魔をする虫けら、と彼は憎々しげに思っていた。彼の生死は不明だが、惨めに命乞いをする屑を、もう死なせてくれと言うまで嬲り、凄惨な処刑ができなかったことが我慢できなかった。それでも、大事の前の小事、彼は割り切ろうとした。

「やはり、私自身自ら、勇者マリア達や連合の主要な王侯帰属意識達、魔族の裏切り者どもと話をしに行なければならないな。今は、一時、膝を屈してでも。」

と彼は周囲に聞こえるように言った。誰もが、彼に底までさせることになった、自分の力不足を心から嘆いていた。

 ただ、一部、それも心の中の一部にだけだが、

「?」

と感じている者達がいた。シュウは、それを見逃してはいなかったが、敢えて何も追及しなかった。

 上位魔族達との戦いの後での新しい国家、連合国家の枠組みとその皇帝を決める諸帝国王国王侯貴族各都市代表者等が集まる大会議がトウキで行われた。その時、革命軍が都市トウキに乱入、

「民衆の声を聴くことなく、皇帝を決めるのは許されない!」

と乱入して、排除された。その翌々日、革命軍はモウを皇帝に推薦した。再三誇示したモウは押される形を、あくまでも取って皇帝への即位を受け入れた。

 その当日に、その革命軍が、単にショクの人間達により形成されている団体という告発が、幹部の4人の男女からあった。それに対する動揺は、99.9%なかったが、つまり0.1%はあったというわけだが。

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