第24話 拉致されました
準伯爵正騎士、それがジャックに与えられた称号だった。それに、庶民なら家族で一生生活できる額の褒賞金と領地が与えられた。ただ、こちらは、前者は取りあえず一部が、後者は後日ということだったが。
「準正騎士で十分過ぎるくらいです…。」
というジャックに、
「君には、連合の枠組み作りに働いてもらわなければならないのだよ。」
「そのためには、それなりの肩書きが必要なのですよ。」
「王侯貴族の前で説明、説教して、陣頭指揮もしてもらうんだから、騎士風情では貫禄が足りないだろうが?」
「あなたの構想ですよ?責任をとって下さいな?」
カント王子達は、ニヤニヤしながら窘め、拒否した。
マリア達その他は、
「せめて公爵くらい…。」
と本心は不満だったが、口には出さなかった。
ジャックは、カント王子達の意志どおり、連合、人間・亜人・魔族が共存し、各国・各部族・都市が平和に、経済でも結ばれた連合構築のため、東奔西走した、一カ月近くの間。一段落した頃、彼の領地として予定されている土地の確認も兼ねての地方視察をすることになった。往復数日間はかかる行程だった。目的地についた当日の夜、“宿の粗末なベッドに…までは記憶にあるんだけど…。”目を覚ますと、全裸の恥ずかしい、屈辱的な姿で縛り付けられていた。
“しかし、何で直ぐに殺さないのだろう?”その疑問はしばらくして分かった、本当かどうかは別として。
「真の勇者様達や魔王達に魅了の魔法をかけていたんだろう?分かっているんだよ。本当は、どこもチンケなくせによ。今頃は、勇者様達への魔法も解けて、お前のことを怒り狂っているさ。それによ、お前のことは、ゆっくりとなぶり殺しにしたいそうだから…もっと遠くにな。」
“ふ~ん。魅了の魔法って、有効距離ってものがあるのか?常時かけてないといけないのか~?”変なことに感心してしまったジャックだったが、
「こいつの貧弱なミミズを切り取ってやるか?」
「血が流れるから止せよ。潰した方がいいだろう?」
「尻の穴をめちゃくちゃに、してやるのが良いんじゃないか?」
との男達の言葉に戦慄した。“や、止めてくれ~!”
「止しなよ。万が一、こいつが、死んだらどやされるわよ。いや、万全の状態じゃないと復讐が十分できないと文句な言われるかもしれないし。」
“あ、ありがとう!天使様、女神様!て…このエルフ、どこかで?”小柄なハイエルフが、彼の視線に入った。見覚えがあるようなと思っているうちに、
「そう言いながら、助けてもらって、惚れているんじゃないか?」
「こいつの魅了の魔法にかかっているんじゃないか?」
男達が冗談半分、疑い半分、揶揄い半分に言い立てた。
「何言っているのよ。」
女エルフは、いかにもつまらないことを、と言う感じの表情で、
「あれはこいつを見張っていたのよ。触られて虫唾が走ったわよ。このハイエルフの私のためにがこんなチンケな奴に好意なんか保つはずないでしょう!あんた、私に魅了したと思っている?そんなもになんかにかからないわよ!」
“ああ、あの時助けた、漏らしていたハイエルフか。”と思ったと次の瞬間、
「何?その目は!こんなもの!」
「ぎゃー!」
急所を思いっきり蹴られたジャックは、痛みと“やっぱり追放されてたらよかった、ずっと前に…。”と思いながら、気を失った。
それからどのくらいたったか分からないが、
「ジャック様、だ、大丈夫ですか?」
「あなたが、あんなことするからですよ!」
「ジャック様が、このまま目を覚まさなかった、どうするつもりなの?」
「し、しかたがなかったのよ!あの時はああでもしなかったら、もっと酷いことを連中がしてたわよ!私だって好きでやったんじゃないのよ!」
との頭上を交錯する声に、“あれ、目を覚ました方がいい?”と目を開けた。すると見覚えのある女達の顔があった。
「ジャック様!大丈夫ですか?」
目を覚ました彼に気が付いて、彼女らは喜色一面で叫んだ。
「とりあえず、この状態を何とかしてくれないかな?」
彼は、まだ全裸で恥ずかしい格好で縛りつけられた状態だった。
「す、すみません!」
彼女らは、慌てて鎖を外し始めた。
「あの~、血だらけで、ゲス野郎が来てた、趣味の悪い、安物ですけど、ないよりましですから…どうでしょう?」
と鎖を外す作業から外れてしまった聖女が衣服を抱えてきた。
「あ、ありがとう。助かるよ、痛い!」
「馬鹿、何やってるのよ!」
「すみません、ジャック様ー。慌ててしまって…。」
「いいから、慌てないで。ついででいいから状況を教えてくれませんか?」
エルフを除く3人が、下級とはいえ、立派な貴族で、本来なら彼より良かなり身分が高い女性であることに気が付いて、言葉使いを慎重にしたジャックだった。
まずは、今馬車の中であり、それは彼を拉致して、山奥のある場所に連れていこうとしていた馬車であり、それをジャックごと奪い取ったのである。当然、彼を拉致した男女の大半を殺した上でのことである。
「私のところに誘いが会ったのです、じゃツ様の拉致、殺害の仕事の勧誘が。どういう訳か、私が、ジャック様に助けられたことが、無理やり…という話になっていて…だから、喜んで加わると思われたようなんです、ハイエルフの貴族の私でも。」
ジャックを救うため、ハイエルフのサルトルは、恋敵?ではあるが、知り合いであるカフカに協力を依頼したのがきっかけで、芋蔓式にこのグループになったということである。ちなみに、ハーフオーガとハーフドアーフの女2人が、馬車を操っていて、彼の目の前にはいなかった。彼女らの共通点は、ジャックに助けられたということだけだった。後は、上位魔族との戦いに参加し、かなりの実力者ということだった。
「それで、僕を拉致したのは…やはり…。」
確信はあったが、一応確認しようとした、ジャックは。
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