第21話 最終決戦
「勇者様!食事です。」
彼が差し出す、ハムや野菜を挟んだパンと回復薬の入ったハーブティーの水筒を、マリア達は争って手に取り、食べ、飲んだ。
「魔軍の状態は?」
武器のマリアが、パンを貪りながら尋ねる。
「目の前の敵は、総崩れです。後詰めの部隊はまだ健在です。」
「よし、逃げるぞ。ジャック、皆に退却を指示しなさい!」
彼の言葉に、賢者のマリアが命じる。
ディドロとモンテスキューを中心とした人間・亜人の軍、魔王キェルケゴールとその親衛隊、ショウペンハウエル、ニーチェ、ヤスパースのチームの混合軍は、一斉に撤退を開始する。マリア達が殿をしながら、混合軍は一斉に撤退する。
「ジャック様!~。来てくれたんですね!」
「え?」
“し、しまった~!”
「け、剣聖様。は、早く。さあ、肩を!」
と魔軍から、少数ながら追いすがってきた騎馬隊に囲まれ、ピンチに陥った女騎士、剣聖、を一応助けに飛び出してしまった。
何とか、手傷を負わせ、衝撃魔法攻撃を乱発して、何とか崩し、退路ができると、彼女の肩を抱いて駆け出した。
「すみません。あなたを守ると言いながら、このざまで…。私は捨てて、お一人で逃げてください!」
“はい、そうします…と言いたいよお~!”
「何を言うのですか?ともに逃げて、また、戦うのです!」
と何とか追っ手と戦いながら、彼女も剣を振るった、逃げ回った。“も、もうダメだ。この女、すてようかな?”
「ここは、私が!」
「諦めてはダメです!」
何とか堪えていると、
「ジャック様~!」
とショウペンハウエルとニーチェが駆け付けてきた。何とか、相手を倒してもらい助かることができた。
「お前は…。」
と責められかける女騎士をかばうジャック。
その後、マリア達や魔族の妹達に、散々文句を言われたが。そんなことを繰り返しながら、ヒット・エンド・ランを続けた。
魔族軍は、度重なる勇者達の後方での襲撃による甚大な被害に慌てて、じりじりとほんの少しずつ浸食されている前線のことは後回しにして、後方の守りを、真魔王達が陣頭指揮に立って固めた。
「皆。万一に備えて、魚鱗の陣で勇者様達を守って、いや、しばし楯になってくれ!」
とはジャックの叫び声。
「行くわよ!」
賢者のマリアの特大の高熱弾、電撃弾、光子弾がいくつも、魔族軍の前線部に飛んでいった。それを、防ぐ術は魔族軍にはなかった。“さすがに賢者のマリア様の魔法攻撃は、一番強力かつ遠距離に飛んでいく。”とジャックは感心した。もちろん、4人の中での比較である。
「私達もやるよ!」
「どうだ~!」
「私は、広く、近くね?」
3人は、より近い、それぞれもまた異なる方向、範囲での魔法攻撃を行った。最前線のすぐ後方、本陣近く、増援部隊全体にと。これで、さらに魔族軍の前線がかなり後退し、連合軍の陣地がかなり前進した。
じりじりと包囲網ができつつあり、魔族軍を不利な態勢においこんでいった。それがほぼ完成した日、ジャックは“助けてくれ~!これ放り捨てていいよね?”と思いながら、ハイエルフの弓聖を、何故かお姫様抱っこで逃げ回りながら、戦っていた。魔法を放ち、蹴り、ぶちかましで、両手が使えないので。
「腰にある袋から手裏剣を取って投げて…へ、変な所握らないでくれないか?」
「え?この硬い、熱い奴では…て、何握らせて…キャー!」
「だ、だから、離して…、握らないでー!」
別の悲鳴を上げなければならなくなったジャックだった。
それは、マリア達と共に、敵陣への偵察におもむいた時のことだった。上位魔族側も察知して、かなりの将兵を配置していたのである。それで戦闘になった。偵察の目的を完遂したが、殿となって戦うマリア達を助け、引き上げる部隊を援護していたジャックは孤立しているグループをめざとく見つけ救出したものの、その一人が足を負傷していて歩いて逃げられない状態になっていたため、抱きかかえて駆け出したのである。マリア達が援護してくれたので、何とかなった。が、かなりたっても、失禁までした恐怖からか、そのエルフ女は彼に抱きついたまま、なかなか離れようとしなかった。痛い、死ぬほどの視線が貫かれて、困ってしまったジャックだった。“あ、後がこ、怖いよ~。”
だが、後で責められることはなかった。
「分かっているのよ、ジャッジ君。」
マリア達は、全裸で彼を迎えた。皆眩しいくらいに美しかった。
「い、今は…。」
慌てるジャックに、
「分かっているわ。今は、これだけ。」
武装のマリアがギュッと抱きしめた。
「臭いも嗅ぐぞ!」
と格闘のマリアが、抱きしめる。
「ジャック君エキスを補充するの!」
と聖女のマリアがぎゅっと抱きしめる。
「明日から、本当の最終決戦。あいつらも罠をしかけているだろうから、どうなるか分からない。だから、こうやって必勝の力を得るんだよ。」
と賢者のマリアが、優しく抱きしめた。“お姉ちゃん達の体…みんな気持ちいいな…。”とうっとりするジャックだったが、やはりうっとりしていたが、ハッとしたように真面目な表情に戻ったマリア達から、
「絶対勝って、ジャック君のお嫁さんになるからね!」
と4人がハーモニーして、“宣言”したのに、ジャックも気を取り直して、
「絶対僕は、死なないから、マリア様達を助けるから、必ず勝って下さい!」
と叫ぶように言った。その後、また力いっぱい抱きしめられた、
勇者マリア達から解放されて、自室に戻ろうとしたジャックは、キェルケゴール達に捕まって、似たようなやり取りをすることになった。
「絶対お兄ちゃんを死なせないから!」
「一緒に勝って、帰ろう。」
その後、本当に自室に戻ったジャックは、明日からの決戦、その後のことに思いを飛ばしていた。そして、最後に、
「どうしたら、生きて帰れるかな?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます