第7話 大会戦前夜 ②
「ちょっと、いいの?」
武装の勇者だったが、他のマリア達も不満顔だった。
「仕方がないでしょう?要請を断るわけにはいかないでしょ?ジャック君のためなのよ。」
賢者のマリアが忌々しそうに言った。武装のマリアは、ふくれた顔をして見せたが、それ以上は言わなかった。
「でも、今回は守ってやれないかもしれませんよ。」
聖女のマリアが心配そうな顔で言った。
「ジャックは、大丈夫じゃないかい?でも、さすがに、今回は危ないかもしれないな。」
格闘技のマリアが、腕組みをして、難しい顔をしていた。
「たしかに、彼らを守って、ジャック君を危なくしてしまっては、元も子もないけど…。」
賢者のマリアが口ごもった。
「何よ?」
武装のマリアが、続きを促した。
「ジャック君の頼りになることを、はっきり認識してくれるかも…そうすれば彼へのいじめも終わるかと…。」
二人は頷いたが、聖女のマリアが、
「ちょっと待ってよ。もしかして、女達が『ジャック君。ありがとう。』とか、『頼りになる、ジャック君!』とかなんかになったら!」
と叫んで立ち上がった。
「え~!」
3人も立ち上がって絶叫した。
「だ、大丈夫よ…。そんなことにはならないって…。ジャック君が、頼りになって…、優しくて…、気配りがあって…、誠実で…、勇敢で、可愛くて、素敵で、理知的で、…それから…それから…いいところがいっぱいだけどお…大丈夫…うん大丈夫よ。」
真っ赤になって、3人のマリアからジト目で見られながら、賢者のマリアは主張した。
「全然、大丈夫じゃない!」
は武装のマリア。
「ジャック君の素敵な所が分かったら…絶対、悪い虫がつくわよ!」
は聖女のマリア。
「いっそのこと、女達は皆殺しにしようか?」
の格闘のマリア。
「それは流石に、勇者として失格行為じゃない?」
聖女のマリアが、したり顔で反対した。
「じゃあ…、見殺しに…、まあ、そこまでしなくても、助けないで…それで死んでもらおうか?」
格闘のマリアは、あくまでもこだわったが、さすがに、
「良心が痛むわ。」
と聖女のマリア。
「とるに足りないとは言っても、少しでも戦力は必要だし、それを…というのは問題じゃない?」
と武装のマリアは賢者のマリアを方に視線を向けた。
「僕達の力だけでは無理だからね。小さな力でも、加わってくれるだけでも、全体の力が2倍にも、3倍にもなるからね。」
格闘のマリアが、急に妥当なことを言ったので、聖女のマリアは、言葉を失ったが、何とか、
「その通りね。彼女らも、彼らもちゃんと大切にしないとね。でも、そうなると話は元に戻るわね。」
もうどうしたらいいのよ、という顔になっていた。武装のマリアは、賢者のマリアに助けをこおうとした。が、彼女は、
「ジャック君に助けられて…そうでなくても、戦いぶりを見て…其処まで行かなくとも…共に戦ううちに友情が芽生えて…それが愛に変わって…これは何の感情なの、恋愛なんかじゃない、とかいいながら、そのうち気がついて…もじもじして、ジャック君に告白して…そうなったら…。」
無限のシミュレーションに陥っていた。
「あ~!その女ったら、ジャック君と肩を並べて戦って、助けてなんか言っていない、とツンデレしながら、もじもじしながら、真っ赤になって下を向きながら小さな声で、ありがとうとか言うんだ~!そ、そ、それに、ジャック君は顔を赤らめて…馬鹿~!そんな女の誘惑に乗ったらだめだよー!そ、そして、私たちの中から誰を選ぶの?私よね、私と言って!とか言って服を脱ぎだして、ジャック君の服を…流されるな!なんでなされるままに裸に…。ああ、もうだめよー!私、ジャック君を助けに…痛い、何するのよ?」
聖女のマリアが、賢者のマリアの頭を手刀で叩いた。その彼女の顔も上気していたし、息も荒くなっていた。
「いい加減、妄想はよしてよ。目の前のことを考えるべきでしょう?」
諭すように、自らも落ち着こうとするように、息を整えながら言った。
「そうだね…とは言っても、目の前のこと…まずは魔族を何とかする、勝つこと、世界を救うことだね。」
格闘のマリア。
「そうよね。世界を救わないと、ジャック君も死んじゃう訳だから、最優先事項よね。」
は武装のマリア。彼女はしんみりとした表情で言った。賢者のマリアがため息をつきながら、
「そうよね。私達がしっかりしないとね。まずは、この戦いの勝利のために、事前の情報収集、明日からの偵察をしっかりしないとね。」
他の3人のマリアは頷いた。聖女のマリアは、
「まあ、でも、ジャック君に手伝ってもらわないとね…。今までになく危険だけど…やむを得ないし…。礼なんて言わないわよとか、一応さ仲間を組んだんだからさとか、だから一応お礼したいから付き合いなさいよとか言ってー!この淫乱女ー!」
聖女のマリアが、ワナワナと震えて、目が血走り始めた。
「今度は、お前かよ。」
「だめよ、戻ってきなさい!」
「過激なことは考えちゃ駄目よ~!」
マリア達は、自分達の妄想に暴走していた。
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