第30話 プロメテウス編~Strange Love 天才科学者テラーの愛

 惑星プロメテウスにはこの宇宙で最高と言われるAI ドールの生産施設と研究所があった。

 ノーマン・テラーは優秀な科学者だったが、名門の出身ではなく、平民の出身だった。それゆえ、誰よりも優秀だったが、宇宙連合の高級官吏にはなれなかった。

 惑星プロメテウスに赴任した時、若きテラーには、それほど野心があったわけではなかった。しかし赴任した研究所で、偶然、失敗作と言われて捨てられようとしていたドールのなかに、知性を宿した新たな生命体を発見し、ノーマンは驚いた。


「なぜ、このドールは失敗作なのですか?」

とノーマンは同僚に尋ねた。


「このドールは、設計以上の能力をなぜか持って生まれた。

 そのことが問題なんだ」

と同僚は答えた。


 美しいドールだった。

 今まで見たこともない美しさだった。


「このまま、処分するのですか?」


「ほしかったら、持って言っても良いぞ。

ペットとして飼うのはかまわない」

と、先輩の同僚は言った。


「俺たちは給料は安いが、失敗作であれば、高額なドールもえり好み自由で、手に入るんだ」

と事も無げに言った。

「特にこのドールは、大金持ちが金に糸目をつけないので、誰もがうらやむ、この宇宙で最高のドールがほしい、との注文だったのだが、途中で突然変異を起こした実験体なんだ。処分するには、もったいないのだが、ラボの職員はみな、もう愛するペットがいるので、引き取れない」

と言った。


「ここで生産されるドールは、特注品なので、ほとんど宇宙市民と変わらない。

 一緒に暮らすと、家族と変わらなくなる。

 どんなに素晴らしいドールであろうと、家族同様のドールと比べると、やはり欠陥品にしか見えない」


 そのようにして、ノーマンはサンの原型である、イヴと出会った。

 イヴは最高のドールで、ノーマンに最高の幸せをもたらしたのだが、同時に最高の不幸ももたらした。ドールの限界を超え、知性と自我を手に入れたイヴは、ノーマン以外の科学者と恋をし、ノーマンを裏切ったのだ。

 イヴは宇宙市民ではなく、ノーマンのペットに過ぎなかったので、ノーマンが望めば、いつでも処分することができた。

 ノーマンは迷うことなく、新しい命を宿したイヴを処分した。

 しかしイヴが宿した新しい命は、実験体として残した。

 そして誕生したドールが、サンなのだった。







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「星の言葉のひとかけら」惑星テラ ファイナル・カウントダウン  来夢来人 @yumeoribitoginga

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