第26話 ヘルメスはサンに似た青年のことが頭から離れず・・・

 ヘルメスはロビーで、サンに似た青年を見かけて以来、その青年のことが気にかかって仕方がなかった。

 仕事も手につかないほどだった。

 しかし青年には、その後なかなか会えなかった。

 彼は何者なのか?

 フィルビーは何かを隠している。それはもはや確信だった。

 そのようなヘルメスを見て、セーヤは心配した。

 ヘルメスはいつもの平常心を失い、混乱しているように見えた。


 時間は刻々と進んでゆく。しかしヘルメスは、ホテルから一歩も外へ出ようとはせず、玄関前のロビーから離れようとしなかった。そしてなぜかフィルビーもまた、まったくロビーにすがたを見せなくなっていた。


 丸一日、セーヤは黙ってことの成り行きを見まもっていたが、これ以上は待てないと判断し、ヘルメスに言った。

「ヘルメスさま、昨日一日、まるまる無駄にしました。今日はもう捜査を開始しなければ・・・」


 ヘルメスもそのことはわかっていた。急を要する案件なのだ。

 目の前にいるセーヤの運命もかかっている。この星の運命もかかっている。しかし・・・




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