第25話 ルドラ将軍を訪ねたクベーラは・・・
当時、セザールとクベーラは、互いに顔は知っていたが、まだ話したこともなく、それほど相手のことを知っていたわけではなかった。しかしクベーラは、セザールに降りかかろうとしている災難とも言える不幸を黙って見過ごすことは、なぜか出来なかった。
その日、悩んだ末、クベーラはルドラ将軍を訪ねた。
しかしルドラ将軍の屋敷には、思いもかけない先客がいた。
ソラリスでは有名な武人であった龍神リーンと新米のシヴァ隊員セザールだった。
「まったく無茶な計画です。この私の弟子に、暗黒王ユリウスという狂犬と、丸腰で戦えというのですから。それでは暗殺など、出来るわけがない」
と龍神リーンは怒っていた。
「セザールがフォースを操れることに、気づいたのではないのか?」
と、ルドラ将軍は龍神リーンに言った。
「いいえ、そんなことは無いはずです」
セザールはシヴァ隊員であったが、龍神リーンの弟子でもあった。
クベーラが踊りの舞台以外でセザールに出会い、その姿を間近に見たのは、その時が初めってだった。女神と見間違うほど、美しい青年だった。その美しさに、クベーラは息をのんだ。
話して見ると、セザールは驚くほど博学だった。その知性は、選び抜かれたものしか住めないこのソラリスでも、一握りのエリートしか持ち合わせないレベルのものだった。
「私は政治犯だけが送り込まれる、辺境の星で生まれたミュータントなのです」
セザールはくったくなく笑い、そう言った。
神々しい女神のようにしか見えない青年は、あまりに美しく、その背負った運命の闇を思うと、クベーラの心は痛んだ。
クベーラは翌日の元老院の議会において、暗殺計画がいかに無謀であるかを指摘し、不可能であることを説いた。そして3人組以外のグランドマスターを説き伏せることに成功した。
「総統ユリウスの暗殺を成功させたいのならば、新米隊員セザールではなく、シバ隊の隊長であるシヴァ神を送るべきです。しかしシヴァ神でも失敗すると私は確信しています。こんな無謀な計画は、止めるべきなのです」
当然、元老院を牛耳っていたグランドマスターは、暗殺計画をあきらめようとはしなかった。しかし、他のグランドマスターの支持もあり、クベーラはセザールを暗殺計画から外すことには成功した。
暗殺計画は紆余曲折を経た後、結局、実行にうつされた。そしてシバ隊の隊長であるシヴァ神がマルデクに送り込まれた。クベーラの言ったとおり、暗殺計画は失敗し、刺客の正体を知らない総統ユリウスは、迷うことなく平然とシヴァ神を罪人として処刑した。
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