第23話 ハリーの本当の両親は・・・

 ハリーは美しい少年だったが、それだけの少年のようにも思えた。 

 伝説の神で、この宇宙の未来を形作る重要な役目を担うシヴァ神として、果たしてこの少年は適任なのだろうか?

 フォースは使えるが、フォースの使い手というだけでは、シヴァ神は務まらない。   

 美しいだけではもっと危うい。ソラリスの悪しき伝統の餌食になり、ソラリス市民の欲望を満たすためだけの生け贄にされてしまう。

 目の前のあまりに無邪気で無防備な少年を見て、クベーラは複雑な気持ちになっていた。そして迷ってさえいた。しかしセザールは、どんなときでも正しい判断が出来る、希有な存在だった。セザールが判断を誤るとは思えなかった。

 クベーラは少年の過去を知る必要があった。

 なぜに敵が支配する、マルデクからは遠く離れたこの未開の惑星へ、この少年はやった来たのか?


「マルデクは帝国側の星だったが、なぜこの星へ? 

 ここは宇宙連合同盟が支配する星だ」


「僕の友だちを探しに来たんだ」


「友だちを探しに?

君の両親はよく許したな」


「本当の両親は、早くに死んだので、全く記憶に無い。

女王さまは、僕がずっと探していた息子だと言ったけれど、僕を育ててくれたお父様は、違うと言った。そしてこの星へ、逃げろと言ったんだ」


「女王って? マルデクの女王?」


「うん」


クベーラはビックリしてハリーの顔を見た。


「それで君は本当の親は、誰だと思っているんだい?」


「オスカーお父さまが言うには、母親は女王さまではなく、前の総統の妻エルフィン王妃だって・・・」


その言葉にクベーラは驚きを通り越し、ハリーの顔をただただ黙って見つめるしかなかった。


「それでは君の父親は、まさか、前マルデク王ユリウスなのか?」


「お父様はそう言っていた」


「それでは君の育ての親の名前は?」


「オスカー・フォン・ブラウン」


「マルデクの情報省長官だったオスカー・フォン・ブラウンなのか?」


「うん、そうだよ」


 オスカー・フォン・ブラウンは“帝国軍の頭脳”と呼ばれていたほどの切れ者で、その男らしく美しい容貌もあり、敵である宇宙連合でも崇拝者が多い帝国軍将校だった。

 オスカー・フォン・ブラウンに子どもがいるという噂は、聞いたことがあった。

 しかし帝国軍総統ユリウスに子どもがいたとは、噂でも聞いたことがなかった。

 帝国軍総統ユリウスの女性嫌いは有名な話で、彼の愛人になった美しい若者はスピード出世をすることでも有名だった。だから野心があり美しい若者は、マルデクを目指した。

 かつて宇宙連合軍がユリウスの暗殺を企てたことがあったのだが、そのときセザールの前のシバ神が刺客として送り込まれ、暗殺に失敗しユリウスに殺されていた。


 クベーラはあの時のことを、思い出していた。




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