第22話 新しい結界

 クベーラはハリーについて、セザールが助けた少年ということ以外は、何も知らない事実に今さらのように気がついた。


 シヴァ神は、この宇宙の終焉を避けるために存在し、この宇宙の破壊と創造を、終わりと始まりをもたらす存在なのだが、その美しい舞からは想像もできないような重責を負わされていた。

 才能があればどのような生まれであろうと、問われず、門戸は誰にでも開かれていた。しかし、その任務は失敗を許されないものだった。失敗して死ぬのなら、まだ良い。最悪の場合は、前シヴァ神セザールのような過酷な運命が待っていた。


 セザールほど完璧なシヴァ神はいなかった。

 だからセザールは、シヴァ神のジンクスを破るだろうと言われていた。シヴァ神に負わされていた過酷な運命を乗り越え、変えるだろうと思われていた。しかし運命はセザールに最も過酷な最期を与えた。それもこの少年を助けるために、自ら犠牲になったのだ。それがクベーラには、理解できなかった。


 ルドラ将軍は、新しい結界はこの少年の中に築かれた、と言っていた。

 セザールは任務に失敗してなどいないと、ルドラ将軍は言っていた。

 ならばなぜ、セザールは失敗したように振る舞い、過酷な運命を自ら受け入れたのか・・・。

 クベーラはその答えを見つけ出さねばならないと思った。


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