第20話 サン D-2とフィルビー

 フィルビーを訪ねて来た青年は、フィルビーがオーダーしたAIドールだった。

 ラボには資金に糸目をつけないので、最新の技術を駆使した、フィルビーが望む通りのペット・ドールを作成するようにオーダーし、完成したドールだった。

 サンD-2は、フィルビーが恋したサンの設計記録を基に、フィルビーの希望通りの記憶を埋め込み、さらに最新技術を取り入れたスーパードールだった。そしてD-2はフィルビーにも隠していたが、ミュータントだった。

 完成したサン D-2と初めて対面したとき、フィルビーはあのサンが戻ってきたようで涙が止まらなかった。しかしどんなに似ていようとも、サンと同じ記憶を持っているはずなのに、やはりD-2はフィルビーが恋したサンとは微妙に違っていた。そしてそのことが、いつもフィルビーを苛立たせた。しかしフィルビーは、サン D-2と共に暮らす時間が増えるにつれ、忠実で献身的なD-2に心を奪われてゆく自分を感じずにはいられなかった。そしてそのことがまたフィルビーを苛立たせた。

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