第10話 明かされたセーヤの正体と運命
ヘルメスとセーヤは階上の、下を見下ろせるレストランで、食事をしながら打ち合わせをしていた。
「それで、今、テラはどんな状況にあるんだ?」
とヘルメスは今回の仕事の助手であるセーヤに尋ねた。
「ソラリスではこの状況をどのように判断している」
その答えをセーヤは言いよどんだ。
その時、後ろから、
「私が答えよう」と言う声と共に、フィルビーが2人の間に割り込んできた。
セーヤはフィルビーの顔を見て驚き、イヤそうな顔をして、両手を握りしめた。
明らかにセーヤは怯え、震えていた。
今までセーヤは自分の正体を隠していたが、ソラリスの高級官吏であるフィルビーは、セーヤの正体を初めから知っていた。そして、
「お前、この子がどういう素性か知っているんだろうな?」
と、ヘルメスに冷たく笑って言った。
「この子は、シヴァ隊に所属していて、それも次のシヴァ神候補だ」
ヘルメルは驚いてセーヤを見た。シヴァ隊の隊員であることは知っていたが、次のシヴァ神候補であることは、全く知らなかった。
シヴァ神は惑星が最後を迎えるとき、姿を現し、破壊と創造の舞を踊るとされている。
「この宿が満杯なのは、滅多に見ることが出来ない惑星の終焉、または新シヴァ神誕生の瞬間を、必ず見れるからだ」と、ツアー客で満杯のフロアを、上から見下ろしながらフィルビーは言った。
「ソラリスのグランドマスターで、この子を気に入ってしまった困ったグランドマスターがいてね。そのグランドマスターが仕掛けた茶番劇なんだ。その子を自分のものにするために」
「それはどういうことだ?」
「この星の運命は、この子しだいだと言うことさ。彼が破壊と創造の舞を完璧に踊ったならば、異次元の扉が開かれ、災いは異次元の亜空間へ吸い込まれ消えてゆく。そして扉は再びしまり、次の千年紀が始まる。しかし失敗した場合は、この星は3度目の核戦争で宇宙の塵となる。そして彼は任務を果たせず、一つの星を破壊した罪で有罪となり罪人となる。そしてソラリスの獄舎に幽閉されるのだが、最終的にはグランドマスターの恩赦をうけ、推薦したグランドマスターのもとで罪を償う余生を送ることになる。言い換えるなら、グランドマスターの持ち物となり、一生仕えるということだ」
「何だと! セーヤを何だと思っているんだ!」
「この子は、ミュータントだ。特殊な能力を持って生まれたから、特別に宇宙市民の恩恵を受けたが、本来は上級市民に仕えるために生産された、娯楽のための個体に過ぎない。だから本来の姿にもどるだけだ。この子はあまりに愛らしく、美しく生まれすぎた。それがこの子の、不幸だ」
そしてフィルビーは付け加えた。
「推薦したグランドマスターは初めからこの子が失敗すると思っている。そういうことだ。そしてツアー客は、成功しても失敗しても、滅多に見れないシヴァの舞が見れるので、あの手この手を使って、この星へのツアーを無理矢理セッテイングし、切符を手に入れた連中だ」
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